2011年02月01日(火) 00時01分00秒
soulsearchinの投稿
★△プラネットC(癌惑星)を歩いて ナイル・ロジャーズ著 第14回~第15回
テーマ:Walking On Planet C
★△プラネットC(癌惑星)を歩いて ナイル・ロジャーズ著 第14回~第15回
【Walking on Planet C by Nile Rodgers 】
『プラネットC(癌惑星)を歩いて』 ナイル・ロジャーズ著
闘病記。
ナイル・ロジャーズの癌闘病記、1月29日から30日までの2日分、写真・キャプション付き。ナイルの音楽趣向の幅広さには驚く。訓練歌からカーティス・メイフィールドまで。存分にお楽しみください。
(写真に関しては、ソウル・サーチンのメインサイト http://ameblo.jp/soulsearchin/ をごらんください)
【Walking on Planet C by Nile Rodgers 】
第14回 Below The Belt ベルト下 (注、ベルトより下=痛いところを尽いた、ひきょうなことをする、ルール違反の=ボクシングなどからきている)
Written on Tuesday, 29 January 2011 05:00 by Nile Rodgers
(Japan Standard Time, 29 January 2011 19:00)
http://nilerodgers.com/blog/planet-c-blog-roll/239-walking-on-planet-c-below-the-belt
今日、地元テレビの朝のニュースで、ニュースキャスターが言った。「一部曇り、気温は30度(華氏)、ほぼ氷点下です」 彼が「just below(ほんの少し下)」と言ったとき、ひらめいた。前立腺癌がアメリカの男性を襲う確率はかなり高い。だが、そのことを誰も語らない。それは「下半身(below the waist)」の話はタブーだからだ。確かに、股間周辺の模型を医師の診断室で見たときは、気分のよいものではなかった。
股間周辺の模型
僕の中に巣食っていた寄生虫のことを考えながら、朝のウォーキングにでかけた。フランク・シナトラの「アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン」(直訳=君を僕の皮膚の下に手に入れた)が脳裏に浮かんだ。子供の頃、僕はヴァンナイス空港(注1)で、シナトラさんのリアジェット「クリスティーナ2世」を何度か掃除したことがある。
若き日のフランク・シナトラ
「何々より下~(below)」という言葉が、一日中僕についてまわった。そこで、自然にカーティス・メイフィールドの「イフ・ゼアリズ・ア・ヘル・ビロー」(もし、地獄より下があるなら)を口ずさみ始めた。2番の歌詞は "Hurry - people runnin' from their worries"(急げ、人々は心配事から逃げている)で始まる。だが、これを歌ってみると、ずいぶんと皮肉に感じた。なぜならこの歌詞は自身が持つ恐怖と面と向かうなと歌っているからだ。そして、ロイ・エヤーズの「ランニング・アウェイ」(逃げる)が僕の脳内ターンテーブルで回り始めた。ある夜、僕とリック・ジェームスはエンパイアー・ホテルのスイートルームでやっていたパーティーでこの曲を何度も何度も繰り返して聴いていた。
If There’s A Hell Below / Curtis Mayfield
カーティス・メイフィールド・アルバム・ジャケット
http://www.youtube.com/watch?v=l2cTc7DofrA
リック・ジェームスと僕 Bustin’ Out / Rick James
Running Away / Roy Ayers
僕は、ドラッグが彼の命を奪うまではパンク・ファンクの王者がどれほどかっこよかったかに思いを馳せた。リック・ジェームスの作品「バスティン・アウト」を歌い始めた。というのも、僕の医師が「癌というのは、転移しようとするものだ(カプセルから飛び出そうとするものだ)」と言ったからだ。これを聞いて僕は、リドリー・スコットの映画『エイリアン』で男たちの胸から小さな生物が飛び出してくる様子を思い浮かべた。リドリー・スコットとは、映画『テルマ・アンド・ルイーズ』で一緒に仕事をした。ルイーズはレイプされそうになった男の下半身を撃ち、はるばるメキシコまで逃亡した。テキサスでの忌まわしい過去と向き合いたくなかったからだ。
Thelma & Louise
映画『テルマ・アンド・ルイーズ』
僕は逃げようとは思わない。僕は真正面から癌と向き合いたい。僕は強くあろうとしている。だが、そうしようと思っても、連続する痛みが僕の気を張り詰め、弱気にさせてしまう。それはあたかも僕が下半身を、ルールも関係なく激しく打たれたからのようだ。
ベルトの下を打たれた
(注1) ヴァンナイス空港は、カリフォルニア州ヴァンナイスにあるプライヴェート飛行機用の空港。一般の飛行機は使用していない。
+++++
【Walking on Planet C by Nile Rodgers 】
第15回 Weekend Warrior 予備役兵
Written on Tuesday, 30 January 2011 05:00 by Nile Rodgers
(Japan Standard Time, 30 January 2011 19:00)
http://nilerodgers.com/blog/planet-c-blog-roll/240-walking-on-planet-c-weekend-warrior
今朝起きると外の天気は、僕同様、暗く憂鬱な感じだった。昨夜眠りにつく前、僕はとても落ち込んでいた。手術後の症状が僕に重くのしかかり始めていたのだ。再び僕は自分自身を不憫に思い、なんとか前向きになる必要があった。再度、前立腺癌手術前、手術後の心得(注1)を読み返した。癌の根治手術後にもっともベストな結果を得るためにどうしたらいいか、そのひじょうに厳格なガイドが示されていた。そうだ、基本に戻るときがやってきた。やはりウォーキングだ。
前立腺癌手術前、手術後の心得
僕は決して(ウォークマン、アイパッドなどの)ミュージックプレイヤーは持って歩かない。というのは、頭の中に膨大な量のプレイリストがあるからだ。僕はいつでも、曲も、曲のテンポも瞬時に変えられる。実は脳内の小さな声が鬼軍曹のようにしゃべりかけてくるのだ。(本当に驚いているかな?) 「ロジャーズ兵卒!」と鬼軍曹の声がする。僕は答える。「イエス・サー、イエス・サー」 そして、僕はデュラン・デュランのサイモン・ルボンからのツイートに返事を書いて、街に出た。
左・ニューワールドライジングの名前入りのポスター、ここでは結局ライヴはやらなかった 右・デュラン・デュラン
デュラン・デュランに初めて会ったのは1980年代初頭のことだ。彼らがブロンディーとツアーをしており、ブロンディーのマネージャーが高校からの友人トビー・マミズという人物だった。彼は、僕がプログレシヴ・フュージョン・ブルーズ・ロック・バンド「ニュー・ワールド・ライジング」をやっていた頃、僕のマネージャーだったのだ。
僕たちは西70丁目の「ウンガノズ」というクラブで演奏することになっていた。だが、そのクラブ・オウナーは僕たちがただそこでプレイするだけなのに、バンド自体のマネージメント契約を結びたがった。僕たちは機材を全てもって地下鉄に逃げ込んだ。そのウンガノの代わりに、我々は「マクセズ・カンザス・シティー」というクラブでプレイするようになった。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドが長期間ハウス・バンドとしてやった直後のことだ。この仕事を取れたのはトビーのおかげだ。
左・マクセズ・カンザス・シティー 右・ウンガノスがかつてあったところ ウンガノスから逃げてマクセズで仕事を得た
マネジャーのトビー(一番左)とジョン・レノン、オノ・ヨーコ
今日、僕は膨大な量の雪が解けてできた大きな水溜りを歩いた。軍の訓練歌は、いつも僕のお気に入りだ。ブロンディーのリード・シンガー、デビー・ハリー(マクセズ・カンザス・シティーの元ウェイトレス)は、『クー・クー』というソロ・アルバム(ナイルのプロデュース)を出したが、このアルバムで、駈け足行進のような「ミリタリー・ラップ」という曲を一緒に作った。訓練歌を元に作った曲は他にもある。シックの「シック・チアー」だ。シックと言えば、ちょうどメンバーのアルファ・アンダーソンからフェイスブックにメッセージを受け取ったところだ。
Military Rap / Debbie Harry
デビュー・ハリー「ミリタリー・ラップ」とアルバム『クークー』
Chic Cheer / Chic (Live At Budoukan)
「シック・チアー」
あれからもう何年も経っているが、僕は依然予備役兵にすぎないようだ。足を出して、はじめ~~っ
ナイル・ロジャーズ予備役兵
(注1)Prostate Bootcamp: A-Ten-Hut =前立腺癌の特訓・研修 A-Ten-Hut は軍隊用語でAttention! 「気をつけ!」あるいは、「注意喚起」「注目!」といったニュアンス。癌に対する心得集。
Walking On Planet C>14, 15
【Walking on Planet C by Nile Rodgers 】
『プラネットC(癌惑星)を歩いて』 ナイル・ロジャーズ著
闘病記。
ナイル・ロジャーズの癌闘病記、1月29日から30日までの2日分、写真・キャプション付き。ナイルの音楽趣向の幅広さには驚く。訓練歌からカーティス・メイフィールドまで。存分にお楽しみください。
(写真に関しては、ソウル・サーチンのメインサイト http://ameblo.jp/soulsearchin/ をごらんください)
【Walking on Planet C by Nile Rodgers 】
第14回 Below The Belt ベルト下 (注、ベルトより下=痛いところを尽いた、ひきょうなことをする、ルール違反の=ボクシングなどからきている)
Written on Tuesday, 29 January 2011 05:00 by Nile Rodgers
(Japan Standard Time, 29 January 2011 19:00)
http://nilerodgers.com/blog/planet-c-blog-roll/239-walking-on-planet-c-below-the-belt
今日、地元テレビの朝のニュースで、ニュースキャスターが言った。「一部曇り、気温は30度(華氏)、ほぼ氷点下です」 彼が「just below(ほんの少し下)」と言ったとき、ひらめいた。前立腺癌がアメリカの男性を襲う確率はかなり高い。だが、そのことを誰も語らない。それは「下半身(below the waist)」の話はタブーだからだ。確かに、股間周辺の模型を医師の診断室で見たときは、気分のよいものではなかった。
股間周辺の模型
僕の中に巣食っていた寄生虫のことを考えながら、朝のウォーキングにでかけた。フランク・シナトラの「アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン」(直訳=君を僕の皮膚の下に手に入れた)が脳裏に浮かんだ。子供の頃、僕はヴァンナイス空港(注1)で、シナトラさんのリアジェット「クリスティーナ2世」を何度か掃除したことがある。
若き日のフランク・シナトラ
「何々より下~(below)」という言葉が、一日中僕についてまわった。そこで、自然にカーティス・メイフィールドの「イフ・ゼアリズ・ア・ヘル・ビロー」(もし、地獄より下があるなら)を口ずさみ始めた。2番の歌詞は "Hurry - people runnin' from their worries"(急げ、人々は心配事から逃げている)で始まる。だが、これを歌ってみると、ずいぶんと皮肉に感じた。なぜならこの歌詞は自身が持つ恐怖と面と向かうなと歌っているからだ。そして、ロイ・エヤーズの「ランニング・アウェイ」(逃げる)が僕の脳内ターンテーブルで回り始めた。ある夜、僕とリック・ジェームスはエンパイアー・ホテルのスイートルームでやっていたパーティーでこの曲を何度も何度も繰り返して聴いていた。
If There’s A Hell Below / Curtis Mayfield
カーティス・メイフィールド・アルバム・ジャケット
http://www.youtube.com/watch?v=l2cTc7DofrA
リック・ジェームスと僕 Bustin’ Out / Rick James
Running Away / Roy Ayers
僕は、ドラッグが彼の命を奪うまではパンク・ファンクの王者がどれほどかっこよかったかに思いを馳せた。リック・ジェームスの作品「バスティン・アウト」を歌い始めた。というのも、僕の医師が「癌というのは、転移しようとするものだ(カプセルから飛び出そうとするものだ)」と言ったからだ。これを聞いて僕は、リドリー・スコットの映画『エイリアン』で男たちの胸から小さな生物が飛び出してくる様子を思い浮かべた。リドリー・スコットとは、映画『テルマ・アンド・ルイーズ』で一緒に仕事をした。ルイーズはレイプされそうになった男の下半身を撃ち、はるばるメキシコまで逃亡した。テキサスでの忌まわしい過去と向き合いたくなかったからだ。
Thelma & Louise
映画『テルマ・アンド・ルイーズ』
僕は逃げようとは思わない。僕は真正面から癌と向き合いたい。僕は強くあろうとしている。だが、そうしようと思っても、連続する痛みが僕の気を張り詰め、弱気にさせてしまう。それはあたかも僕が下半身を、ルールも関係なく激しく打たれたからのようだ。
ベルトの下を打たれた
(注1) ヴァンナイス空港は、カリフォルニア州ヴァンナイスにあるプライヴェート飛行機用の空港。一般の飛行機は使用していない。
+++++
【Walking on Planet C by Nile Rodgers 】
第15回 Weekend Warrior 予備役兵
Written on Tuesday, 30 January 2011 05:00 by Nile Rodgers
(Japan Standard Time, 30 January 2011 19:00)
http://nilerodgers.com/blog/planet-c-blog-roll/240-walking-on-planet-c-weekend-warrior
今朝起きると外の天気は、僕同様、暗く憂鬱な感じだった。昨夜眠りにつく前、僕はとても落ち込んでいた。手術後の症状が僕に重くのしかかり始めていたのだ。再び僕は自分自身を不憫に思い、なんとか前向きになる必要があった。再度、前立腺癌手術前、手術後の心得(注1)を読み返した。癌の根治手術後にもっともベストな結果を得るためにどうしたらいいか、そのひじょうに厳格なガイドが示されていた。そうだ、基本に戻るときがやってきた。やはりウォーキングだ。
前立腺癌手術前、手術後の心得
僕は決して(ウォークマン、アイパッドなどの)ミュージックプレイヤーは持って歩かない。というのは、頭の中に膨大な量のプレイリストがあるからだ。僕はいつでも、曲も、曲のテンポも瞬時に変えられる。実は脳内の小さな声が鬼軍曹のようにしゃべりかけてくるのだ。(本当に驚いているかな?) 「ロジャーズ兵卒!」と鬼軍曹の声がする。僕は答える。「イエス・サー、イエス・サー」 そして、僕はデュラン・デュランのサイモン・ルボンからのツイートに返事を書いて、街に出た。
左・ニューワールドライジングの名前入りのポスター、ここでは結局ライヴはやらなかった 右・デュラン・デュラン
デュラン・デュランに初めて会ったのは1980年代初頭のことだ。彼らがブロンディーとツアーをしており、ブロンディーのマネージャーが高校からの友人トビー・マミズという人物だった。彼は、僕がプログレシヴ・フュージョン・ブルーズ・ロック・バンド「ニュー・ワールド・ライジング」をやっていた頃、僕のマネージャーだったのだ。
僕たちは西70丁目の「ウンガノズ」というクラブで演奏することになっていた。だが、そのクラブ・オウナーは僕たちがただそこでプレイするだけなのに、バンド自体のマネージメント契約を結びたがった。僕たちは機材を全てもって地下鉄に逃げ込んだ。そのウンガノの代わりに、我々は「マクセズ・カンザス・シティー」というクラブでプレイするようになった。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドが長期間ハウス・バンドとしてやった直後のことだ。この仕事を取れたのはトビーのおかげだ。
左・マクセズ・カンザス・シティー 右・ウンガノスがかつてあったところ ウンガノスから逃げてマクセズで仕事を得た
マネジャーのトビー(一番左)とジョン・レノン、オノ・ヨーコ
今日、僕は膨大な量の雪が解けてできた大きな水溜りを歩いた。軍の訓練歌は、いつも僕のお気に入りだ。ブロンディーのリード・シンガー、デビー・ハリー(マクセズ・カンザス・シティーの元ウェイトレス)は、『クー・クー』というソロ・アルバム(ナイルのプロデュース)を出したが、このアルバムで、駈け足行進のような「ミリタリー・ラップ」という曲を一緒に作った。訓練歌を元に作った曲は他にもある。シックの「シック・チアー」だ。シックと言えば、ちょうどメンバーのアルファ・アンダーソンからフェイスブックにメッセージを受け取ったところだ。
Military Rap / Debbie Harry
デビュー・ハリー「ミリタリー・ラップ」とアルバム『クークー』
Chic Cheer / Chic (Live At Budoukan)
「シック・チアー」
あれからもう何年も経っているが、僕は依然予備役兵にすぎないようだ。足を出して、はじめ~~っ
ナイル・ロジャーズ予備役兵
(注1)Prostate Bootcamp: A-Ten-Hut =前立腺癌の特訓・研修 A-Ten-Hut は軍隊用語でAttention! 「気をつけ!」あるいは、「注意喚起」「注目!」といったニュアンス。癌に対する心得集。
Walking On Planet C>14, 15