◎東京ジャズ(パート2):渡辺香津美~ジャズ・クルセイダーズ・ライヴ
テーマ:ライヴ評・レポート【Watanabe Kazumi, Jazz Crusaders At Tokyo Jazz 2010】
歴史。
3日にわたって行われた東京ジャズ。最終日夜、日本が誇るギタリスト、渡辺香津美とジャズ・クルセイダーズを見た。
前者は、1980年に渡辺香津美が発表した代表作『トチカ』のメンバーを30年ぶりに集め、再現しようというもの。マイク・マイニエリ・プロデュースで、ドラムにオマー・ハキム、ベースにマーカス・ミラーという高校時代からの同級生仲間を配し、ウォーレン・バーンハートという重鎮もいれたセット。30年の間に、みなそれぞれ立派に成長し、スーパー・ミュージシャンに育っているところがすごい。オマーはアルバム・リリース後のツアーに参加している。今から30年前、まだ無名だが、才能あふれる若者をピックアップしたところは、まさに慧眼だ。
ライヴ・パフォーマンスは、もう文句のつけどころがない完成度の高いもの。レコードを聴いているかのような安定感だ。MCで、「マーカスは(『トチカ』を録音するときに)当時、自転車でスタジオにやってきた。その彼がこんなにビッグになって、親としては嬉しい気持ちだ」といったようなことを語ったが、あれから30年を経て、こうして同じステージに立てるのだから素晴らしい。それは、オマー・ハキムも同じこと。(オマー・ハキムとライヴ前に少し話ができたので、そのあたりの様子はまた後ほど。とてもおもしろかった)
東京ジャズ3日間のオオトリを務めたのが、ジョー・サンプルとウェイン・ヘンダーソンを中心にしたジャズ・クルサイダーズ。1974年以来、オフィシャルにはそれぞれ別の道を歩んでいたジョーとウェインだが、今年になってリユニオンを発表。その前に、単発で同じステージに立ったことはあるようだが、今回の東京ジャズが実質的な初ステージになるようだ。ドラムスのモヤース・ルーカスは、ウェイン・ヘンダーソンとライヴをやったことがあり、元々のウェインのドラマーが今回スケジュールがあわずに、誘われたという。今回彼らとステージに立つのは初。ベースはしばらく前からジョーと接点があった。当初の予定では、サックスのウイルトン・フェルダーが参加だったが、病気になり、急遽、ジェラルド・オルブライトが参加。クルセイダーズは彼にとってあこがれの存在だったので、大変光栄だと述べている。
ウェインは車椅子で登場、杖をついていた。足が悪いらしい。ウェインがジョーを指して「ジョーはファンキーな奴だ」というが、どう見てもウェインのほうがファンキーだ。(笑) ウェインによれば、お互いジョーが5歳でウェインが4歳の時から友人。ウェインの母親の姉妹がジョーの家の隣に住んでいたとかで、本当にご近所づきあいだったという。
セットリストは大変興味深いが、「スクラッチ」に関して、これには2ヴァージョンがあり、ゴスペル調のアレンジのものと、ファンキーなものがあり、1967年と1977年のライヴでもやっている、という。この日は、ゴスペル調のアレンジで披露すると言って演奏した。
曲間で、このバンドの音楽ディレクターであるジョーが、盛んにドラマーのほうか、ミュージシャン全体か、「俺を見ろ、俺を見ろ」と合図していたのが印象的だった。目と目で合図をしあい、テンポや曲のニュアンスをやりとりしなければならないのだ。
「ストリート・ライフ」は、ウェインが入って初めて聴いた。これはとても珍しい。ウェインのトロンボーンは、前回、ブルーノートで見たときよりも、若干「骨太」な印象が薄かった。体調のせいもあるのかもしれない。
最後、メンバー紹介をするときに、ウェインは、「俺の子供時代の恋人だ(my childhood sweetheart)」と何度も言ったのだが、ジョーはスルー。あのやりとりがおもしろかった。
ジョーとウェインが1974年に袂を分かったのは、その2人の性格からすると、当然というか自然の成り行きな気がする。それが、30年以上を経て、同じステージに立ったのだから、両者とも大人になったということだろうか。久々に再会しお互い昔話などをしつつ、楽しいひとときを過ごしたようだ。
(この東京ジャズについては、続く)
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■ セットリスト、渡辺香津美@国際フォーラム・A、2010年9月5日(日)
Setlist: Watanabe Kazumi @ Kokusai Forum, Forum A, Sep.5th,2010
show started 19:33
01. Liquid Fingers ~ Cokumo Island
02. Impressions
03. Half Blood
04. Tochika ~ Marcus Solo ~ Sayonara
05. Ensyu Tsumabe Gaeshi
06. Unicorn
Enc. Manhattan Flu Dance
Show ended 20:48
■ メンバー
Watanabe Kazumi (guitar)
Omar Hakim (drums)
Marcus Miller (bass)
Mike Mainieri (vibraphone)
Warren Bernhardt (keyboards)
■ セットリスト ジャズ・クルセイダーズ@国際フォーラム・A、2010年9月5日(日)
Setlist: Jazz Crusaders @ Kokusai Forum, Forum A, Sep.5th,2010
show started 21:04
01. On Broadway
02. Sunset In The Mountains
03. The Thing
04. Scracth
05. Snowflake
06. Street Life
07. Weather Beat
08. Way Back Home
09. New Time Shuffle
Show ended 22:10
■ メンバー
Joe Sample (piano)
Wayne Henderson (trombone)
Gerald Albright (sax)
Moyes Lucus Jr. (drums)
Grady Reginold Sullivan Jr. (bass)
ENT>MUSIC>LIVE> Tokyo Jazz 2010>Watanabe, Kazumi
ENT>MUSIC>LIVE>Tokyo Jazz 2010>Jazz Crusaders
1 ■30年前にライブ見ました!
いつもたのしく読ませていただいています。
私30年前、「トチカ」のライブを見ました。正確な記憶ではありませんが確か日比谷野音だったような気がします。
当時大学生で、まだジャズを聴き始めたばかり。コルトレーンやマイルスのレコードを聴いても全然面白くなく、ブルースやリックの方がいいね、とか思っていたのですが、このライブを見て腰を抜かすほどびっくりして、ジャズのジャンルを超えた奥深さにはまっていったのを覚えています。
今回は本当に残念ながら前日のロバータ・フラックしか行けませんでしたが、吉岡さんのブログを拝見してとてもうれしかったです。
ライブには程遠いでしょうが、きっとBSで放送されますよね。
ありがとうございました。長々と失礼いたしました。