2009年12月06日(日) 00時01分00秒 soulsearchinの投稿

◎ノラ・ジョーンズの新作ジャケットにはなぜ犬が映っているのか

テーマ:アーティスト関連
◎ノラの新作ジャケットにはなぜ犬が映っているのか

【Why Does Norah Jones' New Album Carry Photo With Dog?】

ワン!

ノラ・ジョーンズの最新作『フォール』の最初のシングル「チェイシング・パイレーツ」の訳詞について書いた。2009年11月16日付けブログ。

http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10389476870.html

ここで、よくわからないと書いたのだが、その後、この歌詞訳詞について何人かの英語の達人と意見をかわした。その中で、翻訳家の五十嵐正さんから、「pirates」自体に俗語で「女たらし」という意味があることを教わった。その一言ですべてが氷解する。パイレーツが目的語になる場合、ノラが海賊(すなわち、女たらしの男)を追いかけることになる。女たらしのこの男のことを好きなって、困っている主人公ということだ。

プロモ・ビデオ↓
http://www.youtube.com/watch?v=5f3M2UnA-4k

この曲のプロモーション・ビデオは、ノラが海賊風になっていて、マンハッタンの街中をマンション自体が帆船となって進んでいく。海賊(女たらしの男)を、海賊のように追い詰めたいと思っているそんなダブル・ミーニングもあるのかもしれない。

この新作(ノラの4作目)での最大のポイントは、それまで3作をともに作り上げてきたベース奏者で、個人的にもボーイフレンドだったリー・アレキサンダーと別れたことだ。リーとの別れから生まれた曲がここには何曲か存在し、その歌詞のトーンは、明らかに過去3作とまったく違うものになっている。もちろん、サウンドもリーが離れ、別のプロデューサー、ミュージシャンが参加したことで変化した。ノラにとって最大のターニング・ポイントとなった作品だ。

といった背景を予備知識としてもって、このアルバムの最後に収録されている「マン・オブ・ザ・アワー(Man Of The Hour)=邦題、ひとときの恋人」という曲を聴く。(日本盤には別にボーナス・トラックが入っているが、それはあくまでボーナスなので、本編での最後の曲は「Man Of The Hour」) 五十嵐さんは、この曲がリーとの別れを綴った一連の作品の中で、オチ的な作品となっていて、それを最後に持ってきた、と指摘する。

この曲の英詞・訳詞は次の通りだ。例によってCDについている訳詞ではわからないので、ソウル・サーチャーがやり直した。

Man Of The Hour
(Written by Norah Jones)

It’s him or me
That’s what he said
But I can’t choose
Between a vegan and a pot head
So I chose you, because you’re sweet and
you give me lots of lovin’ and you eat meat
And that’s how you became
My only man of the hour

「奴を選ぶのか、俺を選ぶのか」 そう彼は言った
でも、菜食主義か、マリファナ中毒を選ぶなんてことはできない
だから、私はあなたを選んだの
あなたはとても優しくて、たくさんの愛を私にくれ、
しかもあなたは、肉も食べるわ
だから、あなたは私の唯一の「ひとときのカレ(恋人)」になったのよ

You never lie
And you don’t cheat
And you don’t have any baggage tied to your four feet
Do I deserve, to be the one, who will feed you breakfast, lunch, and dinner and take you to the park at dawn
Will you really be
My only man of the hour

あなたは決して嘘をつかない、
決して裏切らない(浮気をしない)、
あなたはその四足(よつあし)になんにも荷物なんかくくりつけてないし
(あなたはなんら情緒的問題もかかえてないし=baggage=荷物=とのダブル・ミーニング)
私が、あなたに朝ごはん、昼ごはん、夜ごはんを食べさせ、夜明けに公園にお散歩に行く相手になってもいいかしら
ねえ、ほんとうにあなた、わたしの「ひとときのカレ(恋人)」になってくれる?

I know you’ll never bring me flowers
Flowers, they will only die
And though we’ll never take a shower together
I know you’ll never make me cry

You never argue
You don’t even talk
And I like the way you let me lead you when we go outside and walk

あなたが決して花をプレゼントしてくれないこともわかってる
まあ、花なんて必ず枯れてしまうしね
それに一緒にシャワーも浴びないけれど
でも私はあなたが私のことを決して泣かさないってこともわかってる

あなたは、決して議論をしてこないし
っていうか、話しかけてこないし
そして何より、外にお散歩に行く時、あなたを(リードを持って)引っ張っていくのがお気に入りなの

Will you really be
My only man of the hour?
My only man of the hour.
My only man of the hour.
(ruff!)

ねえ、ほんとうにあなた、わたしの「ひとときのカレ(恋人)」になってくれる?ねえ、ほんとうにあなた、わたしの「ひとときのカレ(恋人)」になってくれる?ねえ、ほんとうにあなた、わたしの「ひとときのカレ(恋人)」になってくれる?
(ワン!)

(訳詞・ソウル・サーチャー)

++++

僕は最初、冒頭の「チェイシング・パイレーツ」で主人公が追いかけた彼がここに最後に登場したのか、と思った。「チェイシング…」の主人公と、「マン・オブ…」の主人公は同じなのかとも推測したが、ところがどっこい、全然ちがった。五十嵐さんが、これはノラの飼い犬のことだ、と教えてくれた。な~~るほど、そうだったか。CDについている訳詞では全然わからないのだが、上記の訳詞はそれを前提に直した。犬であれば、すべて納得がいく。そして、最後にCDでは、「ワン」と犬の鳴き声が入っているのだ。

歌詞の中で「四足」(これがCDでは訳されていない)「食事を与え」「散歩に引っ張っていく」あたりが、犬を示唆しているのだが、訳詞をした人物は、これが犬のことを歌っていることを理解していないので、そういう風に訳されていない。僕も最初この訳詞を読んでしまったので、それに引きずられ、真の意味が理解できなかった。

実生活でどのようなことがあって彼(ベース奏者=リー・アレキサンダー)と別れたのかはわからない。しかし、恋人と別れ、しばし決して裏切らない相手として、飼い犬を「ひとときのカレ」として選んだノラ。「決して裏切らない」「一緒にシャワーには入らない」など、ノラの普通の女の子的な姿が垣間見られるかわいい1曲ではないか。アルバム最後にこの曲を持ってきたというのも、まさに最高のパンチライン(オチ)だ。アルバムの構成としても実にうまい。

他の歌詞はまだ精査していないのだが、もっともっと奥深いストーリーがありそうだ。こういうシンガー・ソングライターの訳詞は、わけのわからない「メディア総合研究所」などというところではなく、ぜひ五十嵐正さんのようなわかっている人にやっていただきたい。

やっぱり、こういう類の作品って、誰かにちゃんと解説してもらわないと、ただ聴いただけではわからないなあ。

ノラが2009年11月16日アメリカのテレビ番組『グッド・モーニング・アメリカ』に生出演して、この曲を歌ったときの映像。(映像は悪いですが、雰囲気はつかめます)(最後の「ワン」がはいってないようだが・・・)

http://www.youtube.com/watch?v=Z_F5xyP6cuE



そして、改めて、ノラのそのアルバム・ジャケットを見る。

ザ・フォール
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ノラ・ジョーンズ
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ノラとワンちゃんが、しっかり映っているではないか。そういうわけで、「ひとときのカレ」がこのワンちゃんを示唆している。CDの歌詞カードの裏には、ノラが10匹ちかくの犬に囲まれた写真もはいっている。ワン、ワン!

ENT>ARTIST>Jones, Norah

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