NO.867 |
2004/12/14 (Tue) |
Brother Ray Found Soul Mate |
---|
『ブラザー・レイ』は、42章分のうち、31章を終了。31章のタイトルは、「発展と成長(Wising Up)」。「ワイジング・アップ」の直訳は、「気がつく」とか、「気付かせる」といったもの。レイ・チャールズは、自分が知らないことをひとつひとつ、勉強していきます。税金のことは人に言われていて、お金をその分用意していた。レコード会社からの印税はいざという時のために手をつけずにいた。自分の生活はロードからの収入でまかなっていた。とてもしっかりしています。彼にとっては日々、勉強というか、学ぶことが多いのですね。気付くというのは、そういうことです。考え方の違いから追徴金を取られたこともありますが、それで腐ったりはしません。以後帳簿付けをしっかりするように心がけました。 彼は別にいわゆるセレブ、有名人とあまり交流しません。そういうのがめんどうくさいのでしょう。でも、たまたま知り合ったある人物とソウルメイトになります。そのくだりをちょっとだけご紹介しましょう。 +++++ 『ブラザー・レイ〜レイ・チャールズ自伝』(レイ・チャールズ、デイヴィッド・リッツ著)『31章〜発展と成長'Wising Up)』の一部から。 私はレッド・アイ・スペシャル(訳注、深夜便。夜遅くに西海岸を出発すると時差の関係で東海岸へ早朝に着く。みな寝不足で目が赤くなることから、こうした便がレッド・アイ・スペシャルと呼ばれる)でロスからニューヨークへ飛んだ。私の隣に女性が座っていた。私は窓側で彼女は通路側だった。その女性はいかに私の音楽を知っているか、どの曲が好きか、どれほどの長きに渡って私に興味を持っていたか話し始めたのである。彼女はしゃべり続けた。 一時間半程経過したころ、私は彼女の話を遮った。 「ねえ、君は私のことばかりしゃべり続けている、君についてはどうなんだい?まだ君の名前さえ知らないよ」 「えーと、私の名はジュディー・ガーランドよ」 「ちょっと、冗談はやめてくれ、君。正直に言わないと、悪魔に襲われるぞ」 「本当よ、レイ。私はジュディー・ガーランドよ」 私たちは残りのフライト中、全米を横断する間、夜通し話を続けた。彼女はとても繊細な女性だ。彼女は打ち解け、心底本音で語ってくれた。そして時折、押さえきれなくなり泣き伏せた。彼女の泣き声を聞きつけ、スチュワーデスが私が彼女に何をしたのか聞きにきたこともあった。 いずれにせよ、ジュディーは数回、ニューヨークにある彼女の住まいに泊めてくれた。彼女は私を信頼できる話し相手と思っていた。彼女と話したことを、私が決して口外しないことを知っていたのだ。彼女はデリケートで、心の振幅が激しい女性だ。彼女が泣く時、その涙は本物だ。彼女は長い間、心の奥に多くのものを秘めて生きてきたのだ。 私も同じだった。私も何も人に語らず、秘密を胸にしまい、様々な人生の街角を歩んでいくことだろう。しかし、そうした心の重荷があまりに負担になったら、私はその重荷を切り捨てる。そうしなければ生きていけない。 ++++++ この出会いは、62−3年ころだと思われますが、ブラザー・レイはずっと孤独でした。そして、自分が陥った不幸に関して、誰にも心を打ち明けることはできませんでした。それはきっとエンタテイナーの世界で悩んでいたジュディーも同じだったのでしょう。 ジュディーは1969年6月22日、わずか47歳で死去します。睡眠薬を誤って多く飲んでしまっての死亡でした。レイ・チャールズはその時、38歳でした。 ジュディーの代表曲を一曲だけあげるとすれば、それは「オーヴァー・ザ・レインボウ(虹のかなたに)」です。その「オーヴァー・ザ・レインボウ」は、ブラザー・レイの葬儀で、彼を送り出す時に使われました。『ジーニアス・ラヴズ・カンパニー』に収録されているジョニー・マティスとレイ・チャールズとのデュエット・ヴァージョンです。 ジュディーとレイの運命的なつながりです。 ジーニアス・ラヴ ~永遠の愛 |
Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA |