NO.777
2004/09/15 (Wed)
For The Record: Tyrone Davis Is Still Alive
誤報。

いかにして誤報は起こるのか。さまざまな原因がある。昨年だったか、ルーサー死亡の誤報などもアメリカのメディアをめぐった。今回のタイロン・デイヴィス死去のニュースを僕が初めて知ったのは、ロストソウルのメーリングリストによって。発信人は、ディーン・ファレルで、12日(日曜)ロンドン時間16時40分発。日本時間では日があけて13日(月曜)の午前1時40分ということになる。このディーンは、アメリカ・コネチカット州のラジオで番組をやっている人物だけに、信憑性はあった。彼のウエッブでも、タイロンの死去を写真入りでアップしていた。

http://www.soulexpressradio.com/
(ただし、時間の経過とともに、誤報を訂正する意味で、このページが削除される可能性はある)

そもそものスタートは、金曜夜(10日)のシカゴのラジオ局の情報らしい。そこで、タイロンが木曜(9日)心臓発作で病院に運ばれたという情報が繰り返し放送されたという。それに死亡という情報がついたらしい。ディーンはおそらくそのシカゴの複数のラジオ局で金曜夜から流された心臓発作で死去という情報をどこからか聞いたのだろう。それが、ネットなどに乗って瞬く間に全米に流れた。

僕は、13日付けの日記はすでに書いていたので、とりあえず速報という形で死去のニュースを流した。月曜日は大阪の日帰り出張だったので、帰ってきてからいろいろ調べようと思った。しかし、出張から戻った後、急遽、ソウルサーチンの打ち合わせをやることになり、戻りは夜中に。とりあえず、訃報記事を書きながら、いろいろシカゴの新聞や音楽ウェッブなどを確認するのだが、どこもタイロン死去のニュースを報じていない。

実は書き上げた後、かなり迷った。たいがい大物アーティストの死亡だとすぐにロイターなどの通信社が報じる。だが、タイロン・デイヴィス・クラスだとロイターなどが情報を流さないのかとも考えた。死亡記事もレイ・チャールス・クラスの大物になれば、配信までにわずか1-2時間ということもあるが、普通のソウルシンガーだと2-3日かかることさえある。実際今までも、ソウル・ミュージック愛好家での情報が一般メディアの情報よりも2-3日はやいことなど何度もあった。となると、デイヴィス死去のニュースも1-2日後に通信社から流れてくる可能性もある。なにより、第一次情報を流したディーン・ファレルにもクレディビリティー(信頼性)がある。

タイロン・デイヴィスの場合、シカゴを本拠とするシンガーなので、シカゴの新聞をかたっぱしからあたった。ところが、13日深夜(日本時間)の時点でどこにもそのニュースがでていない。仮に11日(日本時間12日)までに亡くなったのであれば、なんらかの記事があってもよさそうだ。

ここで、このニュースを停めておけばよかったのだが、結局、時間切れという感じで14日午前5時ごろ、死亡記事をアップしてしまった。もうひとつ考えられる方法は、裏が取れなかったのだから、「ソウル・エキスプレスのディーン・ファレルが電子版で報じたところによると・・・」というクレジットをいれるやりかたがあった。情報の出所をクリアにする方法だ。あるいは、「タイロン・デイヴィスに死去説」などとも書けた。情報が不確かなときに、時々使われる方法だ。悔やまれるところではある。

14日は夕方BBSに誤報かもしれない、という懸念を書いたが、15日になってBBSにtanouxさんの誤報の書き込みがあり、この件が誤報ということがわかった。

http://216.127.80.118/~admin27/adf/messages/2/10906.html?1095217476

このスレッドを見ると、一番上には12日付けでHeikkiさんがデイヴィス死去の確認を求めている。おそらく彼女も、第一報を聞いて、一応確認を取ろうとしたのだろう。ところが、なかなか確認がなされない。そして、結局、これは誤報ではないかということになり、12日(日曜)午後1時46分(日本時間13日月曜午前2時〜5時46分の間=時刻がアメリカのどの時間帯か不明)にdonさんの「訂正」の書き込みがはいった。僕はこのBBSは、今回tanouxさんから聞いて初めて知ったので、これを読んだのはずっと後になってからだった。

いずれにせよ、情報は混乱したが、デイヴィスは亡くなっていない。ただし、心臓は悪いようなので、今後も予断は許さない状況かもしれない。

一報を流したディーンはまだ訂正のメールをポストしていない。たまりかねたのか、つい今しがた(日本時間15日午前3時ころ)別のメンバーがデイヴィスは死んでいないというメールを送っている。

現代はあるひとつのニュースがすぐにインターネットで世界に出回る。それだけに、ニュースの信憑性を確認することは、以前にも増して重要になっている。死亡のニュースに限らず、これからも充分気をつけてやっていこうと思う。

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一時、『タイロン・デイヴィス死去』を報じた9月14日付け、ソウル・サーチン・ダイアリーは事実と違うため、削除しました。同日付日記には別の記事(カサンドラ・ウィルソンのライヴ評)を掲載しました。


Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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