NO.337
2003/07/30 (Wed)
Samuel L Jackson: He's Got Rhythm, Soul and Aaaaaction
アクション。

NHK-BS『アクターズ・スタジオ』(29日午後11時10分から)にサミュエル・L・ジャクソンがでていたので、思わず見てしまった。ブラック俳優でも大好きなひとり。出てる映画もいいし、それぞれの役どころもみんないい。

彼はしゃべるし、思った通りおもしろかった。彼が明かしたスパイク・リー監督、クエンティン・タランティーノ監督のエピソードなど最高だ。タランティーノは、いろいろな映画を引用して説明するという話、カメラの向こうで撮影中笑いを堪えているシーンなんか、ジャクソンがタランティーノを真似するところもおもしろい。いかにも、タランティーノって感じだった。

彼が出た『ジャングル・フィーヴァー』(スパイク・リー監督)ではドラッグ中毒の役をやっていたが、その10日ほど前まで彼は本当の中毒だったという。リハビリテーションを受け、そこからでてきてまもなくこの撮影に入った。あの迫真の演技。なるほど。ジャクソンは言った。「(ドラッグについては)まあ、たくさんリサーチしたからな(笑)」  そして、その映画の中で薬中のジャクソンは父親に撃たれて死ぬのだが、その点を「あの時に、オレのドラッグとの関係には終止符を打たれたんだ」ときっぱり言い切った。

今、改めてあのシーンを見て、ふとマーヴィン・ゲイの父親が息子を撃ったというシーンが頭に浮かんだ。もちろんその現場を見たわけではないが。初めて『ジャングル・フィーヴァー』を見たときは、思いつかなかったんだが。厳格な父親とドラッグ中毒の息子。金をせびる息子を見て、何度同じことを繰り返しているのか、もう愛想が尽きた父親。そして、実の息子に銃弾を打ち込む。父が息子を銃で撃つというシーン。ひょっとして、スパイク・リーは、マーヴィンのことを考えていたのだろうか。たまたま偶然か。

実際の元ドラッグ中毒が、ドラッグ中毒役を迫真の演技で演じる。しかし、「オレがドラッグをやめて、頭をクリアにしていたから、できたと思うな」とジャクソンは冷静に振り返る。つまり、リハビリが完了していなければ、あそこまでの演技はできなかったのだろう。

ところで、この番組、いろいろな俳優たちが登場してきて話も面白く大好きなのだが、どうしても司会者リプトンの進行が好きになれない。彼は事前に質問をかなり綿密に用意している。そして、それを何がなんでも聞こうとする。というか、用意した質問はすべてきっちり出すぞ、という感じなのだ。そこで、ゲストが何かおもしろい話をしても、その話から生まれる質問というのがなく、いったん話が途切れて、次の話題(質問)に移ってしまうのである。だから、かなり聞き足りない、ストレスがたまるのだ。

ゲストが最初の質問に答える。そこから、「それは、なに?」とか「どうやってそうなった」とか質問の中から生まれる疑問とか、広がりが必ずあるのだが、そういうのをばっさり切る。だから言ってみれば質問のオムニバスを見ているようなのだ。もちろん、短い時間に多くの質問と答えを詰め込みたいというのはわかるが、「流れ」というものが考えられておらず、ゲストが持っている「ストーリー」が分断されている。

ひとつのストーリーが出てきて、そこから面白い話が展開すれば、それはそれでいいと思う。自然な感じの話が転がれば、それでいいのに。僕が司会者だったら、ある程度の方向性は筋道をつけるが、あそこまで厳格に質問用紙にはこだわらないなあ。まあ、テレビという特性もあるのかもしれないが。それともかなり編集されているのかな。

サミュエル・ジャクソンのような優れた俳優を見ていると、その演技が優れたジャズミュージシャンが演奏するプレイを見ているかのように思えるときがある。アドリブやインプロヴィゼーションがあり、遊びがあり、人々を感動させたり、笑わせたり、泣かせたりするフレーズがあるのだ。そして何より、彼にはリズムがある。

サミュエル・L・ジャクソン、1948年12月21日ワシントンDC生まれ。昭和23年生まれ、ネズミ年です。じっくり話を聞きたい人物のひとりだ。もちろん、彼も聞き応えのあるソウル・サーチン・ストーリーを持っている男にちがいない。


PEOPLE>JACKSON, SAMUEL L.
Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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