NO.295
2003/06/21 (Sat)
Dance With My Father: Complete Japanese Translate Version
号泣。

たった4分19秒の間に、これだけの起承転結をつけるんですから、まいります。こういう物語なんですね。部分訳は以前だしましたが、これで完全版。どうぞ、ゆっくりルーサーの世界を堪能してください。しかし、これを聴いた世の母親は、いや、父親もみんな涙するんじゃないか。お涙頂戴もここまで行けば、脱帽です。7歳くらいまでの記憶だけで、これだけの物語を書くのですから、ルーサー、恐るべきストーリー・テラーです。こんな曲、一生に一曲でも書ければ、ソングライター冥利につきます。

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「ダンス・ウィズ・マイ・ファーザー」 訳詞完全版

「それは、僕が子供だった頃、人生がすべての純真さを失う前のことだった。父は僕を高く持ち上げてくれた。父は母や僕と一緒にダンスを踊ってくれた。父は寝付くまで、僕をあやしてくれ、そして2階の寝室に連れてってくれた。そんな時確信したものだ。僕は父に愛されている、って。

もう一度チャンスがあるなら、一緒に父と散歩をしたり、踊ってみたい。僕は決して終わることがない歌をかけよう。どれほど、僕が父ともう一度踊ってみたいと思っていることか。

母の言い付けに僕が納得できない時、僕は父のところに助けを求めに走ったものだ。父は僕を笑わせ、慰め、でも、結局母の言い付けたことを僕にやらせてしまった。

そんな夜遅く僕が寝ていると、父は枕もとにそっと1ドル札を忍ばせてくれた。そんな父がいなくなるなんて、夢にも思わなかった。

最後にもう一度父をどこからかそっと見ることができるなら、最後のダンスを一緒に踊れるなら、僕は決して終わることがない歌をかけよう。なぜって、僕はもう一度、どうしても父と一緒にダンスを踊りたいから。

ときどき、母がドアの向こうで父を思い出してすすり泣いているのを聴いた。僕はそんな母のために、祈った。

僕は無理なお祈りをしたかもしれない。『彼女が唯一愛した人をもう一度生き返らせて』っていうお祈りだからね。もちろん、神様、あなたはそんなことは普通してくれないってわかってる。でも、母はものすごくもう一度父とダンスを踊りたいんだ。

僕が寝るとき、これこそが僕が夢見る夢なんだ。」


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いやあ、いい歌詞だ。いい物語です。特に気に入ったラインは、

If I could steal one final glance
One final step, one final dance with him

というところ。glance は「ちらりと見る; ざっと見る 」という意味。父の姿をたくさん見るのではなく、ちらっとでいいから、見たい、ということになる。しかも、steal one final glance。
これは、どこからか覗き見するニュアンス。きっとルーサーが天国にいる父親をちらっとでもいいから、見たい、最後の一度でいいから、っていうニュアンスですね。see とかwatchではなく、steal〜glanceっていうところが繊細なルーサーらしい。

しかも、その後に、One final step, one final danceとone finalでつなげる。これはもう、作詞の技術ですね。職人芸。脱帽です。

そして、最後にちゃんとオチがある。

Every night I fall asleep
And this is all I ever dream

母親をもう一度、父に会わせたい、父親とダンスを踊らせたい、というルーサーの夢。それが、いつも自分が寝るときの夢なわけです。ルーサーのママ、メアリー・ヴァンドロスさんがこれを聴かされて泣かないわけはありません。号泣する姿、目に浮かびます。

ルーサーのキャリア・ソング、堂々ここにあり。

Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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