2002/10/22 (Tue)
What's Going On -3-
父。

昨日の「ソウルブレンズ」の同録を聴いていて、ふと、この「ホワッツ・ゴーイング・オン」の歌詞で発見したことがありました。 今まで、僕はこれをもちろん、いわゆる反戦ソングとして受け取っていました。 反戦ソングが狭ければ、反暴力を訴える曲とでも言えばいいでしょうか。

自分で、このアルバムには、様々な確執と戦いが表れていると解説していて、 そして、この曲を聴いたとき、「ファーザー、ファーザー・・・」の歌詞のくだりが妙に僕のソウルに訴えかけてきたのです。

直訳的な意味はこうです。

「父よ、父よ。僕達(の確執を)そんなにエスカレートさせることはない。
わかるでしょう。戦いは、答えではないんだ。
唯一愛だけが、この憎しみを征服できるんだ。わかるでしょう。僕達は、なんらかの愛を導く道を探さなければならない。
デモ隊のピケライン、スローガンを掲げる看板。
僕に暴力を振るって罰を与えるのはやめてくれ。
(体罰を与えないでくれ)
僕に、(心を開いて)話し掛けてくれ。
そうすれば、あなたにもわかるだろう。
今一体何が、僕とあなたの間に起こっているかが。」

この節の頭が、ファーザー、ファーザーと呼びかけて始まります。 曲の冒頭が母よ、母よ、で始まり、さらに、兄弟よ(同朋よ、仲間よ)でつながり、そして、父よ、父よ、になる。 非常にうまく構成されています。

もちろん、第一義的に、戦争は答えではない、戦争をエスカレートさせる必要はない、と解釈できます。 しかし、一方で、マーヴィンと実父には大変な確執がありました。 マーヴィンは、父親から子供の頃に暴力的虐待を受けて、父親のことが大嫌いだった。 父親も、他の兄弟と違って自分の言うことをきかないマーヴィンを嫌った。

そこで、この歌詞の父を「一般的な父」ではなく、彼自身の「実の父親」と考えて読んでみると、 彼自身のパーソナルな叫びが見事にうかびあがるではありませんか。 30年もこの曲を聴いてきて、しかもしたり顔で解説なんかまでしちゃってきているのに、 なんで今まで気が付かなかったんだろう。

「don't punish me with brutality(僕に体罰を与えないでくれ)」この一行だけで、 マーヴィンの実父への強烈な叫びだということがわかります。そして、
「talk to me, so you can see what's going on」となる。 息子と対話をしない父に、もっとはなしかけてくれよ、と言っているわけです。 そうすれば、二人の間にある深い溝が少しは理解できるのではないか、と思うわけです。ここでいうwhat's going onは
父と息子(マーヴィン)の間の状況を指すわけですね。


「ホワッツ・ゴーイング・オン」は、彼の父親へのメッセージでもあったのです。 つまり、曲自体がダブルミーニングを持っていた、ということになるわけです。 反戦、反暴力を訴えながら、自分の父親へ向けて「息子にもっと話しかけてくれ。 体罰を与えないでくれ」と直訴しているわけですから。

マーヴィンは翌72年に「ピース・オブ・クレイ」というやはり父へのメッセージソングを録音します。 しかし、これは結局発売されることなく、お蔵入りしてしまいます。

彼の作品をもっと詳細に研究するともっと、このような曲がでてくるかもしれませんね。

マーヴィンがこのアルバムをして、「戦いがいつ終わるか、僕自身が知りたいくらいだ。 その戦いとは、自分のソウル(魂)の中の戦いだ」と言った意味の一端が垣間見られたような気がします。
Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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