The Sound Of An Indian-Ink Drawing: Casandra Wilson Live At BN

水墨画。

本当に独特の時間軸を持ったシンガーだ。しかもその軸はぶれることがない。軸がぶれない、しっかりしたアーティストは、何が起ころうともサヴァイヴしていく。浮ついたところがなく、地に足がしっかり着いているアーティストだ。

彼女の歌から広がる世界は、まさにモノトーンの水墨画のような世界。原色が何色も色塗られるという雰囲気ではない。白と黒、そして、あるとすれば白と黒の間のグレイ。そうした色彩で、物語が彩られる。これはなかなかできることではない。

ドラムス、ギター、ベース、ピアノ、そしてハーモニカにカサンドラという組合せ。この日は最終日ということからか、セカンドが急に満席になった、という。たった一日で100人くらいの予約が入ったそうだ。そのため、立ち見まで出た。

スティングの「フラジャイル」を聴くと、彼女の楽曲の咀嚼度(そしゃくど)が窺(うかが)える。メロディーを、そして、歌詞の単語ひとつひとつを完璧に自分のものにしている。ここまで自分のものに消化すると、その曲がスティングのものではなく、あたかもカサンドラが書いた曲ではないかとさえ錯覚してしまう。

彼女の歌を聴いているとその世界にどんどん吸い込まれるのだが、曲が全部単調で短調なものが多いため、ふと隙を見せると睡魔に襲われることがある。こちらも、体調全快で臨まないと勝負に負けてしまうのだ。(笑) 

カサンドラが途中で舞台をはけるときに彼女の足元が見えた。彼女も裸足で歩いていた。地にしっかり足が着いているのだ。

それにしても、彼女の声は太く、低く、魅力的。音で聴く水墨画、というコンセプトはカサンドラの特許だ。ブルーノートがブラックノートになった夜。

ブルーノート東京のカサンドラのページ
http://www.bluenote.co.jp/art/20040906.html

ブルーノートレコードのカサンドラのページ(英語)
http://www.bluenote.com/artistpage.asp?ArtistID=3273

(2004年9月12日・日曜セカンド・東京ブルーノート=カサンドラ・ウィルソン・ライヴ)

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