資料的価値。
なるほど。ラリー・レヴァンが果たした功績というのは、計り知れないものがあるんですね。ニューヨークで80年代に大きな話題を集めたディスコ、パラダイス・ガレージのDJ,ラリー・レヴァンは、ハウス・ミュージックのブレイクに大きく寄与した人物。しかし、典型的なジャンキーで、つねにハイだった。彼は92年11月8日、38歳で亡くなる。38歳だったのか。ラリーを知る人たちの様々な証言が次々とでてくる。映画『マエストロ』だ。渋谷のシネマ・ソサエティーで毎日9時半から上映している。
このニューヨークのクラブカルチャーというのは、なかなかおもしろい。ひとりのDJが毎週末3000人の観客を躍らせ続けるというのだから、そのパワーは半端ではない。
80年代初期、正体不明の病気が流行り始めた。誰かがステージに立って、安全なセックスを訴えた。だが、誰もその話を聞いていなかった。仲間たちがどんどん死んでいく。「毎日会っていたような自分の友達が60人も死んでみろよ。どうなるか、って」とDJのひとりが言う。活況を呈していたクラブシーンにくさびを打ち込んだのが、エイズだったということが改めて浮き彫りになった。
映像の中には、キース・へリングが踊っているシーンがある。アップになってキースが映っているが、そのカメラが引いていくと、壁面にヘリングが描いた絵が映し出された。へリングも30代でエイズで死んでいる。
それぞれのコメントがヴィヴィッドで、当時のクラブシーンのことがなんとなく、そうだったのか、というふうにわかる。さすがに、当時のディスコの映像は少ないのだろう。それでも、ここではずいぶんと貴重な映像がはいっていた。
ドキュメンタリー作品としては、厳しいものがあるが、資料としては充分価値のあるものだ。なにしろ、現場の一次情報がふんだんに収められているのだ。こういう資料的価値があるものは、どんどんと紹介されるといい。
映画の前のドクターコヤマの、ラリーが来日したときの裏話などもおもしろかった。
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