集結終結。
ゴスペル、ジャズ、ソウル、クラシック、ブルーズ・・・。あらゆる音楽がここに集結する。それにしても、ここで歌うシンガーたちみなが、レイのような雰囲気で歌うというのは、やはり影響だろう。
いよいよレイ・チャールズの遺作『ジーニアス・ラヴ~永遠の愛(原題、Genius Loves Company)』が8月18日に日本発売される。結果的にこの作品は遺作となってしまった。アイデアとしてはまったく新しいものではないが、レイがやるという点でなかなかの企画ものだと思う。これだけのデュエット相手を集めたのは、さすがにレイ・チャールズならではだ。
ノラ・ジョーンズは言う。「私はレイ・チャールズのすべてが大好き。彼はなんだって歌えるし、何を歌っても彼の歌になってしまうところが不思議。私の歌を聴いてもらえればわかると思うけど、彼から受けた影響はとても大きい。そんな彼と歌えたなんて、信じられないほど光栄なこと」
ナタリー・コールが言う。「私はレイの音楽を聴いて育ったの。彼は本物のソウルマンだと思う。私の父、ナット・キング・コールが生粋のジャズマンだったように」
ノラが「here we go again~」と歌い、そこにレイの声がかぶさる「ヒア・ウィ・ゴー・アゲイン」からアルバムは始まる。以後、ジェームス・テイラー、ダイアナ・クラール、ナタリー・コール、BBキング、グラディス・ナイト、ジョニー・マティスなどケイ12アーティストとの共演。さらに、隠しトラックにテイク6と歌う「アンチェイン・マイ・ハート」が収録される。アメリカの音楽業界のまさにフーズフーにふさわしい歌手たちがせいぞろいした。おそらくこういうプロジェクトだったら、アメリカのシンガーなら、いや世界中のシンガー、誰もがここに参画したいと思っただろう。それはこのアルバムがヒットするしないにかかわらず、そうしたアーティストが「あの」レイ・チャールズと一緒に歌を歌ったという経験だけで、充分後世に自慢できることだからだ。
レイの葬儀で流された「虹の彼方に(オーヴァー・ザ・レインボウ)」はジョニー・マティスとのデュエット。その意味でも今改めて聴くと、葬儀の模様が、その場に行っていないにもかかわらず、思い浮かぶ。ライナーに書かれたジョニー・マティスの言葉がすべてのアーティストの声を代弁している。
「多くの人が(このアルバムを)大切なものとして、そばにおいておきたくなるだろう。私が得た大切なものは、レイと同じスタジオでレコーディングしたという経験だ。それは私の人生のハイライトになった」
多くのシンガーたちにハイライトを与えたレイ・チャールズの人生は、このアルバムを最後に終結した。