Taxi Driver In Okinawa Talks: There's No Longer A-Sign Bar

象徴。

「『Aサイン・バー』というのは、もうないんですか」 タクシーの運転手さんに尋ねると、彼はまくしたてた。「ああ、今はもうないよ。あれは、昔のものだからね」 沖縄の郷土料理を食べた後、若干飛行機の出発時刻まで時間があったので、市内をタクシーで回ってもらうことになった。沖縄・国際通りを走らせながら、運転手さんは沖縄の話を続けた。

「あれは、アメリカ軍の兵隊たち用のものだからね。昔は円が安かったろう。(1ドルが)300円時代は賑わってたよ。兵隊たちも街にでて遊べたんだけどさ。(1ドルが)200円を切ったあたりから、だんだん来なくなったよね。もう今は、120円かい、だめだよ。だから、そういうバーはみんな店をたたんだか、日本人向けに変えたりしてね。兵隊目当ての女とかもいてね。そういう怪しげな店もあったさ」

「Aサイン・バー」という言葉を知ったのは、武蔵小山のソウルバー「ゲッコー」でのこと。看板のないその店の唯一のサインが、Aと書かれた裸電球だ。マスターに尋ねたら、沖縄の「Aサイン・バー」のことを教えてくれた。簡単に言えば、アメリカ兵用のバー、ということ。そこで、タクシードライヴァーにそのことを訊いたのだ。

タクシーの窓は閉めきってクーラーが効いているが、外気はむっとした湿度と温度で、完璧なアジアそのものだ。「野球の〇〇ね(実際は実名)、あれはアメリカの兵隊とこっちの人間との間に生まれた子なんだよ。奴はお父さんに会いたくてメジャーリーグ行ったんだ。むこうに行って有名になれば、父親が会いに来るんじゃないかって考えたんだ。で、2年目かなんかに、会いに来たらしいじゃないか。アメリカの兵隊が父親で、母親がこっちのそういう店で働いてたっていう話はたくさんあるよ」 へええ、それはまったく知りませんでした。

国際通りの店の雰囲気はどこか、タイとかシンガポールとか、アジアちっくな感じとアメリカ的雰囲気が交差する。ところどころ、英語の文字が躍る看板などもあるせいか。「この辺は、観光客向けの店ばっかりだよ。地元の人は、ここら辺じゃ買わないね」 地元に根付いたタクシー・ドライヴァーの話は、いつもおもしろい。ちょっと古めの店の並びに、ぽっかりとスターバックスがあった。これもまた、アメリカの現代の象徴。

瞬間の沖縄体験、それは、七夕の強行日帰りの一幕だった。

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