A Ticket Bind Between Today & 18 Years Ago

(ライヴ評、若干ネタばれになります。これからごらんになる方はあなたのリスクにおいてお読みください)

チケット。

1986年6月27日、鈴木雅之はこの渋谷公会堂でソロとしての第一歩を踏み出した。そのことを忘れまいと、彼は自分で1枚だけその日のチケットを自分のために買ってずっと大事にしまっていた。

まさにそれから18年後の2004年6月27日。彼は再び渋谷公会堂のステージに立っていた。ラッツのメンバーとしてもこの場に立った。以後もソロとしても立った。歴史が18年かけて一回転した。

その彼が自分のために買ったチケットが、スクリーンに映し出された。今日、その席と同じ席に座っている人。席番号が呼び出され、そこに座っていた人が、歓喜の声をあげ、ステージにあげられた。そして、鈴木はその彼女にスペシャルなプレゼントを贈った。18年前、アーティストである自分が自分の記念のために買った同じ席に、18年後に座ったひとりの観客。同じ席の上で18年の歳月が点から線になって結びついた瞬間だった。

渋谷公会堂は、老朽化が進んでおり、来年あたり内装工事がはいるという話がある。そうなると、席番号は変わってしまう。おそらく、タイムマシンにじっくりと保存されていた未来へのメッセージを受け取る日は、2004年の今日、6月27日しかなかったのかもしれない。18年前、まさかそのチケットに書かれた席の人に会ってプレゼントを渡すことなど夢にも思わなかったであろう。彼の想いが込められた未来のファンへのプレゼントになった。

実は、18年前の同じ日に渋谷公会堂に立っていたということに気付いたのはほんの昨日のことだったらしい。スタッフがあわてて東急ハンズに「今日の主役」のタスキを買いに行ったという。なんという運命のめぐり合わせだろうか。

アンコールの一曲目は、ブリリアント・ヴォイス、ミスター・ケイ・グラントの司会にメンバーが導かれ、歌うは「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」だ。う~~~む、やられた。(笑) もちろん、『永遠のモータウン』のエンディングを彷彿とさせるアレンジだ。

この日は、特別に飛び入りでコーラスグループ、アジの5人、さらに、「ランナウェイ」でクワマンさんが登場。ひとしきり感動的なやりとりがあって、最後にマーチンはクワマンに言った。「来年、お前と同じステージにいるかもしれないな」 クワマンは直立不動になって答えた。「酒の量を控えます!」 「同じステージ・・・」。それは予告か。

そして、「18年と言わず、これからもずっと歌い続けます」と宣言してアンコールの最後の最後に歌われたのが、「君の未来、僕の想い」だった。アルバムでも最後に収録されている妹尾武・作の名曲だ。そのメッセージは、今日渋谷公会堂に来ていた多くのファンの未来へむけての、彼のメッセージだったのかもしれない。

マーチンは、今日の渋谷公会堂のチケットは買っていただろうか。

(2004年6月27日日曜、渋谷公会堂=鈴木雅之ライヴ)

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