特権。
ライヴの興奮もまだ冷めやらず、一体何から訊くか。とはいうものの、7人がレコード会社の会議室に勢ぞろいするとさすがに圧巻だ。1対7というのは、ひょっとしたら、初めてのことかもしれない。テイク6だって、相手は6人だし。(笑) それぞれに名前とパートを言ってもらい、話は始まったナチュラリー7のインタヴュー。
ライヴで一番驚いたのが、レコードの針を乗せて音が出るまでのしばらくチリチリいう音。これをやるのがロッド・エルドリッジ。一体どうやってあんなことができるようになったのか。「これは偶然できちゃったんだよ。針をのっける音とかやってるうちにね。誰かがこれ(チリチリ音)は絶対にできないな、とか言ってたんだよ。それで、逆にやってみた」と説明して、口でそのままチリチリ音をやってくれた。ライヴでやったときよりも、少し長く。おおおおっ。あたかもそこにターンテーブルがあるみたいだ。すご~~い。
そして、リーダー格のロジャー・トーマスが、「(弟の)ウォーレンは、ディストーション(歪のかかった)・ギターもやるんだよ」と指差す。ウォーレンが、なんのてらいもなく、ギターを「弾く」。そ、そ、それがディストーションがかかった音ででてくるのだ!
ウォーレン・トーマスが説明する。「もちろん、僕も少しギターを弾く。それでディストーションをかけたみたり、ワウワウの音を実際にだしてみたりして、それをよ~く聴くんだ」
「CDでは、ディストーションとかディレイとかそういう若干の電気的な技術を使っているかと思ったのですが」とふると、ロジャーが答えた。「基本的には全部口でやっている。ただ、最終的なミックスの時に、若干の作業は加えることがある。でも、ライヴで見られるように、基本的にはみんな口だよ」 ライヴではディストーションなどはかけていないようだ。またまたため息。
これだけありとあらゆる楽器ができると、できない楽器などないのではないかと思ってしまう。何か、まだ口でできない楽器はありますか、と尋ねた。ロジャー。「う~~ん、そうだなあ・・・。ああ、ピアノとギター、アコースティックのものができないな。アコースティックのピアノ・・・。人間の口が温かすぎるんだと思う。アタックのある音がむずかしい。アコースティックのギターもまだできない。でも、チャレンジするよ」
ウォーレンのディストーション・ギターも、最初は普通のギターだったという。それが徐々に今のように変化してきて、今の形になるまで約4年かかっている、という。
ロジャーが言う。「最初、僕たちはバンド付きのヴォーカル・グループだった。だが、徐々にバンドが必要なくなった。最初はラスト・アピールという名前で活動していた。最初は3-4人で始めて、徐々にひとりずつ増えていった。そして、98年に7人になったころ、『7』というグループ名で活動を始めた。そうしたら、まもなく、同じ『7』という名のグループがいることがわかってね。彼らは3人組なんだけどね。(笑) で、僕たちはとても自然に(ナチュラリー)ヴォーカルを聞かせるということで、ナチュラリー7という名前にしたんだ。ナチュラリー7としてスタートしたのは、99年の8月か9月くらいだったと思う。そして、ファーストアルバム『ノン・フィクション』を自分たちで作ってインディで出した。ライヴで売ったりしてね。それでも2万枚くらい売れたんじゃないかな。その後、2003年1月から9月にかけて、この『ホワット・イズ・イット』を作ってリリースした」
ロッドが加える。「このアルバムには16-7曲はいっているが、僕たちは30曲以上録音した。一曲に一週間くらいかかることもある。一日8時間はスタジオにいてね。それはそれは、疲れるよ(笑)」 ロジャーが言う。「とにかくいろいろやってみる。最初デモテープを作る時は、若干の本物の楽器を使う。人前でできるほどの腕前ではないが、曲作りをする程度でキーボードやギターを使う。僕たちにとって、一番重要なことは、楽曲だ。いかにいい楽曲を作ることができるか」 ウォーレンがはいる。「そして、メッセージね。どれだけのメッセージを込められるか」
7人の中でもっともよくしゃべるのが、ロジャー・トーマス。彼がリーダーでスポークスパーソンだ。次がロッド・エルドリッジ。見た目の印象では、一番背が高いジャマール(最年少)はシャイな人物のように見受けられた。
全員が教会でゴスペルを歌ってきた。99年にア・カペラ・コンテストで優勝して以来、ライヴの数が徐々に増え、最近では年間200本くらいやっている、という。ニューヨークだけでなく、全米、ヨーロッパなどだ。200本もやれば、進化する。
アルバムのタイトルは、『ホワット・イズ・イット』。いってみれば、「これは、なんだ?」というニュアンス。彼らにナチュラリー7って、何? と尋ねてみた。ロジャーが「僕たちはヴォーカル・バンドだよ」ときっぱり。つまり、ヴォーカルだけでできるバンドですね。わかりやすい!
最後に、『ソウルブレンズ』用にいわゆるIDをもらった。全員がやってくれた。7人全員で簡単な文章を読むのだが、それでもカウントをいれて、あうようにやってくれたので、ちょっと感動した。次回来日時にはぜひ番組に来てもらいましょう。
インタヴューが終わり、片付けて外にでると、マーカスが何か探してる風に道を歩いていた。「どうしたの?」と訊くと「ATMを探してるんだ。近くにないか?」というので、「ワンブロック先に銀行があるよ。乗ってく?」と言うと「サンキュー」。無事、お金をおろしホテルに戻るわずかな時間にちょっとした会話。「今日は仕事は終わり?」 「ああ、終わりだよ。まあ、あとで軽くリハーサルでもやるのかな」 「へえ、どこで? スタジオでも行くの?」 「いや、ホテルの誰かの部屋に集まるだけだよ」 「ああ、そうかあ、あなたたちは、いつでも、どこでも、ただ集まるだけでリハーサルできるもんね」 「ああ、そうだよ(笑)」
ア・カペラ・グループは、手ぶらで人々を感動させることができる特権をもっている。いつでも、どこでも。
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