録音風景。
70年代もっとも売れっ子のドラマーのひとりとして頭角を表したハーヴィー・メイソンがトリオを率いてブルーノートに登場。しかも、ピアノに巨匠デイヴ・グルーシンを呼んだ。本当に一時期は出るレコード、出るレコードみんなハーヴィーの名前があったほどの超売れっ子ぶりをみせていたが、僕がこうしたハーヴィー名義のジャズトリオを見るのは初めて。
一言で言うなら、「ハーヴィー・メイソン・トリオ」というより、「デイヴ・グルーシン・トリオ」というような雰囲気さえあった。(笑) 若干のドラムソロはあるが、やはり主旋律をグルーシンが持っていくため、いつのまにか彼のやさしいピアノを聴いてしまう。
3人ともひじょうに上手なので、3人によるスタジオでの録音風景を見学させてもらっている、という感じがした。まさに職人たちの芸術ということだろう。譜面台に置かれた楽譜をちらりと見て、次にそれぞれのミュージシャンの目を見る。息もあい、ひじょうにこぎれいにまとまった安定したセッションだ。
4曲目のおなじみの「キャラヴァン」を終えるとメイソンが立ち上がって「では、しばらくデイヴの演奏を聴いてみようか」と言った。ヴァレンタインがマイクを持った。「演奏する前に、ちょっとコマーシャルタイム・・・。ハーヴィーのアルバムもすでに出ていますが、ちょうど偶然に私のアルバムも出ます。『ナウ・プレイング』というタイトルで、これは、私がこれまでにてがけてきた映画音楽を、再アレンジしてやったものです。例えば、以前にギターのために書いた曲をピアノのために(アレンジを)書き直して、やっているのです。この中から一曲演奏しますが、それは映画『ミラグロ・ビーンフィールド・ウォー(邦題、ミラグロ・奇跡の地)』からの作品です。まあ、この映画はほとんど誰も見てないと思いますが(笑)、私はオスカーを取ることができました。この映画が私にとって思い出深いのは、そのロケーション地がメキシコ北部だったからなんです。実はそのあたりに私は住んでいたことがあってね。メキシコは、400年前スペイン領でした。なので、もしあなたがこの曲にどこかそんなスペイン風のものを感じるとしたら、そのためです。レコードではギターでしたが、ここではみなさんのためにピアノで弾きます」
そして、確かにスペイン風の作品が演奏された。メイソンの新譜『ウィズ・オール・マイ・ハート』からの一曲「ワン・モーニング・イン・メイ」に続いてグルーシンの79年の大ヒット曲「マウンテン・ダンス」が披露された。なんとなく、やはりここでも「デイヴ・グルーシン・トリオ」的なものを感じた。ドラムが好きな人というより、むしろ、ピアノ好きの人にお勧めかもしれない。
Setlist (2nd set)
show started 21:31
1. Foot Prints (Wayne Shorter)
2. Hindsight (From Harvey Mason’s new album “With All My Heart”)
3. Smoke Gets In Your Eyes (From Harvey Mason’s new album “With All My Heart”)
4. Caravan (Duke Ellington)
5. Milagro Beanfield War (From Dabe Grusin’s new album “Now Playing Movie Themes Solo Piano)
6. One Morning In May (Hoagy Carmichael)(Harvey Mason’s new album “With All My Heart”)
7. Mountain Dance (Dave Grusin)
Enc. Swamp Fire (Duke Ellington) (From Harvey Mason’s new album “With All My Heart”)
show ended 23:00
(2004年5月18日火曜セカンド=東京ブルーノート=ハーヴィー・メイソン・トリオ・ウィズ・スペシャル・ゲスト・スター、デイヴ・グルーシン)
ENT>MUSIC>LIVE>Mason, Harvey Trio, Grusin, Dave