(ライヴ評はネタばれになります。これからライヴをごらんになる方は、あなたのリスクにおいてお読みください(笑)=Read It At Your Own Risk)
適材適所。
僕はやはりこのレイラの声が何よりも好きだ。低くて、落ち着いていて、しかもこねくりまわさずに非常にシンプルに歌う。日本のなんちゃってジャズシンガーに手本にしてもらいたいような歌いっぷりだ。その意味でレイラは本当に正統派、基本に忠実な、直球のシンガーである。
彼女のライヴに僕が行く時、この声の歌手、この声の歌唱を聴きに行くという真摯な姿勢(笑)は持ち合わせているので、基本的にはダニーの娘ということは、気にしていない。そして、もうひとつ、彼女の歌を聴きに行くので、そのバックバンドが多少難あれど目をつぶる。
しかし、やはりこの組合せはスペシャルだ。今夜、ダニーの娘ということを意識しないことはできない。しかも、キーボードに我らがフランク・マッコムが座っているのだ。
いつもどおり裸足でステージに歩いてきたレイラは、自分の持ち歌を2曲(「スマイル」と「ワン・デイ・アイル・フライ・アウエイ」)歌い終えると曲目を紹介してこう言った。「(ワン・デイ・・・」は)ジョー・サンプルのアルバム『ソング・リヴズ・オン』からの作品。もう6年も前になるのかしら。信じられる? (註、録音は98年だが、発売は99年) 私、20かそこらだったわけね。(笑) (註、書くのはヤボですが、ちょっとサバを読んでるのね) 誰か先週ジョー・サンプル・トリオをごらんになった方は? (客席から『ヤー』の声) 空港で彼に会ったわ。みなさんに、『ありがとう』って伝えてくれって。OK・・・」
フランクにキューを送った。フランクはローズを弾きだした。その瞬間、「おおおっ」の声が客席から漏れてきた。レイラが「We’re flying high on a velvet sky…」と歌い出す。そう、曲は「フライング・イージー」だ。ダニーの作品。こうきたか! もちろん男の声と女の声ということで違うのだが、しかし、こういう風に歌われると父の面影が浮かび上がる。
歌い終え、レイラが「サンキュー」という。拍手が続く中、まもなく再びフランクがキーボードを弾く。その瞬間、再び歓声。みなイントロで曲を知っている。そして、ゆったりとしたスローに変身したその曲は、なんと「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」! レイラが歌う。「When you down and trouble…」 そして、続く「Close your eyes…」から今度はフランクが入ってくるのだ。 しかも、「You just call my out my name…」のコーラスの部分は二人のハーモニー! まいりました。ダニー・ヴァージョンより、さらにテンポを落して、しかもピアノ一本で、二人のデュエットにして。これまでにない「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」である。もちろん、まだ荒削りだが、これはすごい。もっと歌いこんで欲しい。
ダニーを彷彿とさせるフランクとレイラ。重なるハーモニーは、あたかもそこに二人のダニー・ハザウェイがいるかの如くだ。これは泣ける。ここまでやるなら、バックのスクリーンにダニーの写真でも映し出したらどうだ? (笑) ベタだが一般受けはする。
2曲のダニーの後、フランクのヒット「キューピッドズ・アロウ」が披露された。この3曲の流れは見事。座って、静かに聴いているのに、体の芯から熱くなっていくのを感じた。
その後ベースソロから「サマータイム」に入るのだが、このベースソロがいただけない。それまで熱くなったものが、徐々にテンションが下がり、冷めてしまった。しかし、後半スキャットなどレイラのヴォーカリストとしての技を見せられ再び熱くなった。その後のアコースティック・ピアノ一本でレイラが歌う「ホエン・ユア・ライフ・ウォズ・ロウ」は、彼女のヴァーサタイルな(多様性のある)シンガーとしての顔を存分に見せて、二重丸をあげたい。冒頭で直球のシンガーと書いたが、このあたりは、様々な変化球も投げられる歌手である。
それにしても、レイラの声に、フランクのローズの音ははまる。これはまさに適材適所だ。ショウの後、フランクもレイラも、CDを買った人にサインをしていた。
Setlist (second set)
show started 21:37
1. Smile (From Album “Lalah Hathaway” – 1990)
2. One Day I’ll Fly Away (From Joe Sample/Lalah Hathaway Album “The Song Lives On” – 1999)
3. Flying Easy (From Donny Hathaway’s Album “Extension Of A Man” – 1973)
4. You’ve Got A Friend (From Donny Hathaway’s Album “Live” – 1971))(Lalah & Frank)
5. Cupid’s Arrow (From Frank McComb’s Album “Truth” – 2003)(Frank)
6. Summertime (standard)
7. When Your Life Was Low (From Joe Sample/Lalah Hathaway Album “The Song Lives On” – 1999)
8. Somethin’ (From Album “Lalah Hathaway” – 1990)
9. Fever (From Joe Sample/Lalah Hathaway Album “The Song Lives On” – 1999)
Encore. Street Life (From Joe Sample/Lalah Hathaway Album “The Song Lives On” – 1999)
show ended 22:52
(2004年5月10日月曜セカンド・ブルーノート東京=レイラ・ハザウェイ・ライヴ、ゲスト・フランク・マッコム)
関連記事。
1999年6月8日、ジョー・サンプル&レイラ・ハザウエイ・ライヴ評。『魔術師の指』
https://www.soulsearchin.com/entertainment/music/live/sample19990608.html
2003年2月15日付け日記。レイラ・ライヴ評。Barefoot Diva:Lalah Hathaway
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/soul-diary-200302.html
2003年2月14日、レイラ・ライヴ評。新聞用とオルタナティヴ・ヴァージョン。
https://www.soulsearchin.com/entertainment/music/live/lalah20030214.html
2003年4月30日付け日記。レイラのウェッブ。Knocking on Father’s Door (レイラが父ダニーの作品をどう思っているかなどについて。お勧めです)
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200304/diary20030430.html
2003年8月19日付け日記。レイラ、マーカス、テイク6らのライヴ評。
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200308/diary20030819.html
ブルーノート・ウェッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20040510.html
レイラ・ハザウェイ・オフィシャル・サイト
http://www.bluenote.co.jp/art/20040510.html
>ENT>MUISC>LIVE>Hathaway, Lalah / McComb, Frank