グルーヴ感。
友人H氏に誘われ津軽三味線のライヴへ。場所は代官山のレストラン、アソー(ASO)。ちらっと聞いていたのは、イタ飯を食べながら、三味線のライヴを見る、という話だったが、それは違って、イタリアンレストランのイヴェントができる広い部屋でライヴを見るというもの。中庭でシャンパーンが振舞われ、その後、ライヴ。津軽三味線を見せたのは、佐藤道弘(さとうみちひろ)・佐藤通芳(さとうみちよし)の親子。さらに、タブラというインドのパーカッションを演奏する吉見征樹(よしみまさき)、尺八の田辺頌山(たなべしょうざん)が加わり4人でのパフォーマンスを見せる。
僕は個人的に、日本の楽器でいかにグルーヴ感を出せるか、というのをひとつのテーマというか、そういう視点で見ているのだが、この三味線というのはまえからちょっとおもしろいな、とは思っていた。というのは、この日も佐藤親子がデュオで激しく演奏する時など、演奏方法などは、ベース奏者のチョッパー奏法とけっこう似ているからだ。こういうチョッパー風の三味線を見ると、なんとか黒いグルーヴ感とうまく融合できないだろうかと思う。
だが、一方でどうしても三味線という楽器の性質上、さらに音質上の問題で、なかなかボトム(低音)が効かないために、ファンキーな味わいがだしにくいというのも事実。でも、あれだけ激しく演奏ができるのだから、きっと何らかの道があると思う。
しばらく前に、ボビー・マクファーリンと三味線のコラボレーションがあったが、あれはなかなかマッチしていなかったと感じた。https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200402/diary20040204.html
たぶん、演奏者がファンキーな感覚とか、グルーヴの感覚というのを体で知ると、ひょっとしてそういう雰囲気が醸し出せるのかもしれない。一度、三味線奏者の人とグルーヴ感についてゆっくりお話してみたい。三味線のグルーヴ化というテーマで。(笑)
さて、三味線の佐藤氏、尺八の田辺氏は、自らの楽器について簡単に説明をし、どうするとどういう音が出るなどのレクチャーもされた。こういうのは、カルチャー講座っぽくて好き。僕自身、楽器は何でも好きで、それらがどうやって音を出すかということにすごく興味があるので、そういうことを教えてくれるのは嬉しい。
時代劇などで、ふ~~と吹くのを「むらいき」というそうで、それを現実に再現されると、やはりそこに髷(まげ)のサムライが刀を刺して立っているような感覚になる。また、「浮る」と書いて「かる」と読み、「沈る」と書いて「める」と読むそうだ。これはそれぞれ、あごをあげる仕草、あごを下げる仕草のことらしい。その上げ下げができないと一人前にはなれない、という。確かに尺八奏者の人は、上手に頭を上下に振っている。
佐藤氏はニューヨークなどにもいたそうで、その時代に書いた曲も披露した。「ニューヨーク時代にジョンさんという人がいまして、その人はとても日本人の女性が大好きだったんですね。あるとき、彼が女性に振られて落ち込んでるときがありまして。その彼のために書いた曲です。そこでタイトルが、『ジョン、空元気』」 会場が爆笑した。
また非常に興味深かったのが、タブラという楽器。吉見氏はすでに20年近くこれを演奏しているそうで、途中自身のスキャットとのかけあいがなかなかおもしろかった。これはかなりグルーヴ感がでる楽器だ。またパーカッションながら、うまく音階を披露していた。
(2004年4月20日火曜=代官山ASO=佐藤道弘、佐藤通芳、田辺頌山、吉見征樹ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Sato Michihiro, Sato Michiyoshi, Tanabe Shouzan, Yoshimi Masaki