ジャムセッション。
ブルーノートでロイ・エアーズのライヴが終わると、ボビーとロイがワインセラーの前にでてきてCDを持っている人へサインを始めた。ボビーは、実に明るいキャラクターで誰とでもすぐに友達になれそうな雰囲気をもった人物。一緒に写真をとってもいいか、というとすぐに二つ返事「OK,OK」。
さてこの後、ライヴに飛び入りしたトク(TOKU)を始め、ロイを見に来ていたゴスペラーズの北山氏、日本在住のR&Bシンガー、エボニー・フェイ、ロイ・エアーズ・バンドのドラマー、デニス・デイヴィス、日本在住のドラマー、トミー・キャンベルなどが、代官山の某店に行くというので、移動した。
ちょうど、その日はソニーのジャズセクションが独立するというので、若干のお披露目パーティーのようなものが行われていた。その店は10坪少々という感じの店でアップライトピアノとドラムセットなどが置かれていて、サックス、アコースティックベースなどもある。店に入るときには、すでにジャムセッションが行われていた。ソニージャズ所属のグループ、アーブ(urb)や小沼ようすけさんなどが演奏していた。
それぞれのミュージシャンが、好き勝手にはいったりでたりして、思い思いにプレイする。本当に自分たちがやりたいからそこでジャムセッションをするという感じだ。適当にその場でやる曲を決めて、その曲なら僕が、私が歌える、というのりでやる。
いつのまにか、デニスがドラムスのところに座って軽妙なドラムを叩いている。聞き覚えのあるメロディーが…。おっと、ダニー・ハザウェイの「ゲットー」ではないか! 小沼さんのギターがけっこう黒くなってる。サックスは、ロイ・エアーズ・バンドのレイ・ガスキンスだ。いすに座りながら、吹いてる。いいね、いいね、こんなところで、こんな「ゲットー」が聞けるなんて! ファンキーなソウルがあるかと思えば、ソニー・ジャズのチーフ、渡辺こうぞうさんらのサックスによるストレートジャズも。しかし、うまいですねえ。玄人はだし、っていうか、ある意味玄人か…。(笑) ピアノもいれかわり立ち代りでしたが、そのうちの一人はクリヤ・マコトさんでした。生を見るのは初めてでしたが、お名前はよく見ていました。これからもよろしく。
夜中の2時を過ぎたら、なんと、ケイリブがエボニーから聞いたということで登場。びっくりした。さらに、その後、BNからボビー・ハンフリーまで登場。さすがに彼女は楽器を持っていなかったが。そこにいたシャンティさん、作詞作曲、それに歌などもやる人ですが彼女が「ミスティー」や、アレサでおなじみの「ユー・メイク・ミー・フィール・ナチュラル・ウーマン」を歌った。いいなあ、すぐにぱっとピアニストの人と、コードは何で、とか言って一曲歌えるなんて。
なんと、ケイリブとデニスはニューヨーク時代からの知り合いだった。お互いこんなところで、何年ぶりかで出会って両方ともびっくりしてる。ケイが言う。「彼とは、ニューヨークのめちゃくちゃアフターアワーズのクラブでよくあったんだよ。そこは夜中の2時から始まって、朝の10時くらいまでやってるんだ。あそこではサングラスはかっこをつけるためにつけるんじゃないんだ。外に出たとき、(まぶしいから)目を守るために、絶対に必要なんだよ(笑)」
ケイリブがいつのまにかピアノを弾き始めていたので、その後ろの椅子に座って聴いた。ケイはブライアンが弾けるので、話してみると、残念ながら北山さん得意の「6,8,12」は弾けないという。だがRケリーの「アイ・ビリーヴ・アイ・キャン・フライ」が弾けるというので、その伴奏で北山さんが歌うことに。後半は横に座っていたレイが歌で参加。う~む、レイもいい声してるな。まあ、言ってみれば超ぜいたくなカラオケ、というか、バンド演奏に歌という感じか。そして、ケイに「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」をリクエストした。先のシャンティが歌えるので、シャンティの歌、ケイのピアノで始まり、途中からケイもトクも北山さんなどもはいってきた。けっこう、やはりこの曲は知っていて、みんなの合唱になった。ダニーハザウェイのライヴほどではないにしろ、プチあんな感じ。
しかし、こんなことが定期的に起こっていたら、日本の音楽シーンも絶対に変わりますね。小沼さんのギターも黒人のドラム、ピアノ、あるいは、サックスなどに囲まれると間違いなく黒くなる。これぞ、ミュージシャン同士に起こる化学反応、そしてミュージシャンシップだ。トクさんが帰り際に言った。「絶対こういう場所がないといけないんだよね。今、あまりないからなあ」
その昔、ロスの何人かのミュージシャンが毎週火曜の夜ライヴハウスに集まって、ビールを飲み、ジャムセッションをし、ときに曲を作ったりしていた。そこから発展してできたのが、シェリル・クロウのアルバム『チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ』だ。自然発生的にミュージシャンたちが集まり、ミュージシャンの輪が広まって何かが生まれたら、これはすばらしいことだ。
この日、代官山のジャズバーでの自由なミュージシャンたちのジャムセッションを見ていると、チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブのようなものが月一でも始まれば、いいなあと思った。「ダイカンヤマ・ミュージック・クラブ」か? (笑) しかし、日本一のファンキードラマー、トミー・キャンベルのあのでかいドラムスの音は、近所からクレイムはこないのだろうか。(笑)
(2004年3月10日水曜=ジャムセッション)
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