緊張感。
実はライヴに行く前は、白人の軟弱クロスオーヴァーだったら、何も書かないでおこう、と思っていた。ところが、どっこい、えらい奴らだった。このホワイト・キャッツたちは、心底ソウルを知っていた。
まあ、冷静に考えてみれば、このメンツだったら、間違いないわけだ。認識甘かったです。すいません。(って、誰に謝ってるんだか) ギターのジョン・トロペイ(繊細かつ大胆)を中心に、ルー・マリーニ(サックス=ブルース・ブラザース・バンドにいた人だ!)、クリス・パルメーロ(キーボード=先週のタワーに引き続き、ハモンドB-3の渋い音がBNに響き渡る)、アンソニー・ジャクソン(ベース=ファンクの大黒柱。機械のような完璧さ)、スティーブ・ガッド(ドラムス=もう一人のミスター・パーフェクト。ファンクの屋台骨)らの5人編成。
全員が職人、匠。それも超一流の。何も決して新しいことはないが、きっちりと、基本で当たり前のことをやり遂げる連中だ。一々、かっこよく決めるところを決める連中でもある。ミュージシャンとしてのレヴェルが非常に上のクラスの連中同士だけでやっていると、のりとか、その瞬間の空気とか、それが秒単位で上向いてくるのがわかる。曲の始まりより、中盤、さらに、後半とどんどんとテンションが高くなっていく。「オレがこういういいプレイをしたから」「あいつがこんな風にいいプレイで返してきた」「だったら、オレもこんなことをやってやろう」みたいな、会話が成り立つ。
圧巻だったのは、アンコール前のセット最後の曲「(テイク・ミー・バック・トゥ・)ジ・オールド・スクール」。各人のソロが披露され、最後にスティーヴとアンソニーのインタープレイが繰り広げられた。ギターのように弾くベース。チョッパーなどやらずとも、充分にその存在感を見せるアンソニー・ジャクソン。いやあ、誰をサポートしてもかっこいい。前回は上原ひろみだった。https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200312/diary20031201.html 出すぎず、しかし、しっかり「オレはここにいるよ」とベースが語りかけてくる。そして、あの独特のスティーヴ節との掛け合い。ある程度の年季が行った者同士だけができる火花の散らしあいだ。
5人の間に張り詰める緊張感が心地よく観客席に伝わる。それぞれが自分のポジションでベストの仕事を淡々とこなす。各自独立しつつ、しかし、ユニットとしての統一感もある。ふとスティーヴ・ガッドに目をやれば、そこだけに白い光があたり、彼のプレイが浮かび上がり、ふとアンソニーに目をやれば、そこに白い光があたり、ベースの音が体に伝わってくる。ジョン・トロペイに着目すれば、しっかりした繊細かつ大胆なギターの音色が耳から直接脳に入り込んでくる。舞台左クリスのハモンドオルガンを見つめれば、オルガンのグルーヴが飛び込んでくる。そして、ルーに目をやればやはりそこに白いスポットライトがあたり、サックスが炸裂してくる。それぞれ目線を変えた瞬間、そのミュージシャンの音がくっきりと輪郭を持って浮かび上がる。
やはり、アンソニーのベースとスティーヴのドラムスが大黒柱となって支える家はファンクな家として聳(そび)え立つ。今日の一言はこれで決まりだ。「あなたたち、ソウルがありますね(I know you got soul)、わかってるよ」。
(2004年1月26日月曜=ブルーノート東京セカンド=ジョン・トロペイ・バンド・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Tropea, John Band