はしご。
A社編集者T氏、音楽評論家T氏と下北沢のソウルおでん店「しずおか屋」https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200304/diary20030403-1.htmlにて会食することになった。ここは元エクセロというソウルバーだったところ。以前書いたが、音楽はそのままソウル、ブルーズを中心に小さな音で流している。
評論家T氏とは初対面。大阪出身のヴェテランの方で、名前は以前から存じ上げていた。話題が豊富で、この時は、東京の川を歩く、という話をされた。東京には正式には70いくつ川があるそうだ。10かそこらかと思っていたので、びっくり。目黒川の横なども歩かれたという。
さて、ずっとマスターがアナログ・ディスクをCDに焼いた作品をかけていたのだが、一息ついたところでなんとアル・グリーンの新譜からの曲がかかった。それが、な、な、なんと僕の今週のへヴィーローテーションでもある「ミリオン・トゥ・ワン」。(2003年12月12日付け=https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200312/diary20031212-1.html)ちょうど、これがかかったとき、「7曲目、7曲目ですよね! これ、これ! このアルバムからはこれでしょう!」と思わず立ち上がってしまった。
そして、しばしトータス松本氏が登場したテレビ番組の話に。マスターはたまたま見逃してしまった、という。僕が見たことをいくつか紹介する。
それからおでんにいきつつ、僕は僕で何枚か持ってきたCDから、マスターが好きそうなものをみつくろって、Rケリーの「イフ・アイ・クド・ターン・バック・ザ・ハンズ・オブ・タイム」をかけてもらおう、とそれを手渡した。「え~と、13曲目です」 すると、なんと、ちょうどその時、「いやあ、僕も今この曲かけようと思ったんですよ」というではないか。なんという奇遇というか偶然というか。これはサム・クックの影響の強い実にいい曲。その時、聴きたいと思う空気というのは伝染するのか。これもシンクロニシティー(同時性・共時性)だろうか。(笑)
いろいろなソウルの名曲がかかるが、ふと懐かしい曲がかかる。パースゥエーダーズの74年作品「ベスト・シング・ザット・エヴァー・ハプン・トゥ・ミー」だ。元々グラディス・ナイト&ピップスのヒットとして知られるクラシック曲。いやあ、パースゥエーダーズのもいいですねえ、あいかわらず。これはCD化されてません。
この「しずおか屋」さんの壁には、これでもかこれでもかというほど、昔のコンサートのチケットやら、ポスターやら、レコードのジャケットなどが飾られている。例えば、1965年1月14日(木曜)、「リサイタル・ダンス・パーティー」がリキ・スポーツ・パレスで行われ、そのチケットがある。このリキ・スポーツ・パレスは、かつて渋谷にあったプロレス場なのだという。力道山がやっていたので、リキ・スポーツ。もちろん僕は行ったことはない。そこでリングを取り払って、若干のステージを作り、ライヴアーティストを招聘しダンス・パーティーのようなものをやり、そのチケットを売った、というわけだ。入場料は500円らしい。ただ小さく「500」と数字が書かれているだけ。で、演奏は誰か? なんと、ヴェンチャーズ!
他にもヴェンチャーズは同年7月にやってきて、この時のチケット価格は1000円。この頃から日本びいきだったのね。ファッツ・ドミノは74年2月18日で1500円。すごいのは、68年2月12日に行われたモータウン・レヴューとしての来日告知チラシ。今で言えばフライヤーか。(笑) スティーヴィー・ワンダー(もちろんこの時が初来日です)、マーサ&ヴァンデラス、ダイアナ・ロス&シュープリームス、テンプテーションズの写真がレイアウトされている。そのキャッチコピーがすごい。
「黒い旋風! 一行28名」 「一行」ってねえ。(笑) まあ、確かに一行様ですが。今のドームなんかでやるライヴだったら、「黒い旋風! 一行120名」とかになるのか。この時は、テンプテーションズが来日しなかったために、入場料を無料にした、という。この時のテンプスはデイヴィッド・ラッフィンがリードの頃。次のテンプスの来日時には既にデニス・エドワーズになっていたので、デイヴィッドを見る機会はここでしかなかった、ということになる。仮に来ればの話だが。
話は尽きないが、「しずおか屋」を後に、正面の「リトル・ソウル・カフェ」へ移動。こちらもあいかわらずとろけるようなスイートソウルが惜しげもなくかかる。まもなく、そこでアル・グリーンの「フル・オブ・ファイアー」が流れた。「アル・グリーンだ!」 この「フル・オブ・ファイアー」と、さっきの「ミリオン・トゥ・ワン」にはどこか通じるところがあった。僕の中では「ミリオン・トゥ・ワン」は、「フル・オブ・ファイアー」を少しテンポを遅くしたものというイメージがあった。マスターに尋ねた。「CDは、こちらはかけなかったんでしたっけ」 「えー、アナログだけで」 「アル・グリーンの新譜いいですよ」 「いいらしいですねえ」 新譜『アイ・キャント・ストップ』、アナログででるといいですね。
まもなくすると暗い店内にまた聴いたことがある曲が流れ始めた。パースゥエーダーズの「ベスト・シング・・・」だった。さっき、しずおか屋さんで聴いたばかりの同じ曲だ! ほんの2時間程度の間に違う店でこんな珍しい曲、しかも名曲を2度も聴けるとは。思わずソファからまた立ち上がってしまった。「ソウルバーで流れてる曲のリストが、2チャンネルかなんかのネットででまわってるんじゃないの?(笑)」 これもまたソウル・サーチンしていると遭遇するシンクロニシティーか。それほど、はまった夜だった。
ENT>SOULBARS>Shizuoka-ya, Little Soul Cafe