昇華。
アリシア・キーズが12月3日待望の第二作アルバムをリリースします。タイトルは、『ザ・ダイアリー・オブ・アリシア・キーズ』。「アリシア・キーズの日記」ということですね。2001年9月にリリースされたデビュー作は、瞬く間に大ヒット。アリシアは翌年2002年春のグラミー賞の話題を独占しました。
なんと言っても、しっかりした歌唱、楽曲、20歳という若さと美貌という文字通り才色兼備なシンガー・ソングライターだったことから大ブレイクしたわけです。
僕がアリシアのCDを聞いて驚いたのは、なんと言ってもほとんど全曲自作していたことです。もちろん、曲によって共作者もいましたが。しかも、シングルヒットした「フォーリン」は、ジェームス・ブラウンの曲でもサンプリングしたかとも思えるほどの重厚な70年代風ソウルのマナーを自分のものに消化、昇華していました。
2002年5月の初来日も、衝撃でした。CDがこれだけ売れた彼女のライヴ・アーティストとしての力は未知数でしたが、これも強烈でした。ふと、アレサやグラディスのような70年代のレディー・ソウルたちが降臨しているかのようでした。基礎のあるソウル・シンガーは、いつの時代に登場しても同じだな、という基本的なことを確認したものでした。
さて、新作も相変わらず、マイペースのいい出来です。話題としては、トニ・トニ・トニをフィーチャーしたり、NAS&ラキームなどをゲストに迎えたりとR&Bとヒップホップの要素を巧みにミックスしています。しかし、なんと言っても彼女の堂々とした歌いっぷりが聴かれる作品が圧倒的に輝きます。
6曲目の「イフ・アイ・エイント・ガット・ユー」や7曲目の「ダイアリー」(フィーチャリング・トニ・トニ・トニ)などの聴かせる歌は独壇場でしょう。そして、4曲目でかつてのグラディス・ナイト&ピップスの大ヒット「イフ・アイ・ワー・ユア・ウーマン」をカヴァーしています。グラディスのヴァージョンはかなりしっとりとしたアレンジですが、アリシアのヴァージョンは最近の打ち込み風の音でまとめています。こういう曲聴くと、本当に70年代のソウルのエッセンスを感じてしまいます。
過去の先達の遺産を完璧に自分の体内で消化し、自らの血液の中に栄養として取り入れ、それを新たな作品として昇華できる稀有な才能をもった人ですね。アリシアは。これでまだ22歳なんて。アリシア・キーズ、1981年1月25日生まれ。昭和56年生まれはトリ年です。