鹿。
真鍋太郎さんの個展を見てきました。雑誌「L&G」連載時の拙文にイラストを描いていただきました。それ以前から他の雑誌などでよくイラストは拝見させていただいていましたが、自分の文章にちゃんとカラーのイラストが掲載されるというのはほんとに楽しいものだな、とその時つくづく思ったものです。
代官山で行われている個展は鹿を描いた作品が18点プラス大きな作品で4点。真鍋さんは、かつて子どものころアメリカの西部劇を見て、馬やインディアンなどにすごく惹かれ、たくさんの馬を描いてきましたが、今回は馬ではなく鹿を描きました。
なんでまた鹿を? 映画『ディア・ハンター』でもお好きなんですか。「ええ、あれも好きなんですが…(笑) 鹿にはやさしいところもあれば、野性的なところもあるでしょう。二面性というか。そういうところをちょっと描いてみたかったんですよ。マイケル・ジャクソンだって、やさしそうなところもあれば、すごく普通の人からみると変わっているところもあるでしょう。みんなどこかしら、そういう二面性みたいなものがあると思うんですよ」と彼は語ります。
ちょうど、耳のところに安全ピンが刺さった鹿がいたので、「これはなんで、ピンが刺さってるんですか」と尋ねると、「これは、ちょっとワルの鹿です・・・」とのお答え。ワルの鹿とグッドな鹿、なるほど。ピアスをしているような感じです。たしかに可愛い鹿、こわもての鹿、いろいろいます。
今回の作品は、実際さまざまな紙などの素材に絵を描いたものをデジタルデータ化し、それをデジタルプリントしたものだということです。で、そのデジタルプリントをクロース(布)などに施しています。それぞれの作品は限定で10作品ずつ、1から10までナンバリングされています。
真鍋さんは、ジャズ、カントリー、そして、ソウル、R&Bなどを聴いてきました。彼はどんな素材のもの上にも絵を描きます。雑誌の紙の上を白く塗ったりして、そこに書きます。ここはこっちから、そこは別のところから素材をとってきたりもします。ただ「コラージュとはちょっと違う」と彼は言います。しいて音楽の世界の言葉で言えば「素材をリミックス」したり、あるいは、「サンプリング」したりして絵を描いている、あるいは、作品を作っているというニュアンスでしょうか。
例えばこのホームページのトップに掲載している鹿の絵は黒ですが、デジタル処理でやろうと思えばどのような色にもできます。それこそ、アンディー・ウォーホールが同じデザインの絵を色違いで数十点も並べたようなことが、今ではいとも簡単にできるわけです。そして、鹿の絵自体は同じものの、下地が違っています。これなど、基本的な絵は同じですが、まさにちょっとしたリミックス違い、といった感じです。
その鹿の頭上にはバナナが描かれています。ウォーホールっぽいですよねえ。「このバナナは、ここにバナナがあったらどうなるかな、と思って描いてみたんですよ。そしたら、きっとウォーフォールもそんな感じでいろんなものを描いていたんじゃないかな、って思って」 ウォーホールとピカソが、真鍋さんのアイドルだそうです。なるほど。「もし、ウォーホールやピカソが生きていたら、絶対こういうデジタル技術を使って作品を作っていたと思うんですよ」
真鍋さんも、ヒップホップ系イラストレーターということになるのでしょうか。少なくとも充分にオルタナティヴです。あ、西部劇が大好きだから、会社名が「ボナンザ」なんですね! 今、気付きました。
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picaro taro真鍋太郎、鹿を描く。
ディア フレンドDear Friend, @ HUSK in 代官山
2003.11.2(sun)~11.24(mon)毎日OPEN◆11:00→→19:00
HUSK ギャラリースペース
渋谷区恵比寿西 2-12-14 TEL◆03-5459-1539
EXHIBITION>TARO, MANABE