マイム。
昨年一度来日しライヴをやったものの、広く一般に知らされたライヴではなかったために、今回の来日公演が実質的な初来日コンサートとなるアシャンティ。国際フォーラムAを2日、ほぼ9割方埋めた。日本でも2枚のアルバムが好調で、新しい時代の新しいスターになりつつある。露出的には、ビヨンセ/デスティニー・チャイルドに勝るとも劣らぬほどだが、さてライヴは・・・。
全23曲、次々と曲がテンポよく歌われていく。観客の大半は20代の女性。ざっと見たところ7-3くらいで女性の方が多いような感じがした。しかも典型的なBガール風でもなく、みんなおしゃれでいい感じだ。普通に見ている分には、曲が次々歌われるので、飽きない。風船や銀色の帯状の紙が天井から落ちてきたり、演出もある。観客は立ったままでアシャンティに答える。みな楽しんでいるようだ。
さて、バックバンドはドラムス、ギター、ベース、キーボード2台、コーラス3人、ダンサー2-3人。彼らの大半は六本木のライヴハウスの箱バンドのメンバーだという。つまり、バンドメンバーをアメリカから連れてきていない。となると、果たして実際に演奏しているのか、歌っているのかという疑問が生じる。そこで、じっくり目をこらすことになる。彼らは本当に演奏しているのか、アシャンティは歌っているのか。
例えばドラムだけ事前打ち込みで、ギターあるいはベースだけがそこで生演奏された場合、なかなか区別はつかない。テープあるいはキーボードから事前に打ち込まれたサウンドを出されたものと、いくつかの楽器を生で演奏したものをミックスした場合、どれが実際の生演奏で、どれが打ち込みかはさすがに区別つかない。それを前提にさてどこまでが生演奏かを判断するのは、様々なところを総合的に判断する以外ない。全体的なサウンドは妙にとても各楽器のバランスがきれいに整っている。
しかし全23曲でこれは絶対に生演奏でやっていると確信できたところが一箇所あった。バンドメンバーの紹介のところだ。「フィール・ソー・グッド」が演奏され、ギタリスト、ドラマー、ベース奏者のそれぞれのソロとDJプレイが披露された。これは本当にやっていた。それまでのリズム隊の音と微妙にバランスが違い、かなりワイルドな感じになっていたのだ。
また、新曲でちょっとバラード調の「レイン・オン・ミー」は実際に歌っているように思えた。「ブレイク・アップ・トゥ・メイクアップ」も歌っていると思う。また、最後のアンコール曲「ドリームス」もアカペラで歌われただけに、これは実際に歌っていただろう。
前半10曲くらいまでは、演奏、歌ともCDのように聞こえた。曲間のトークはマイクをオンにするが、それ以外のところはオフにするのだろうか。その切り替えがあるとするなら、それは極めてうまい。普通にコンビニの弁当しか食べない子が聴いていれば、本当に歌っているかいないかは、まずわからないだろう。
「フーリッシュ」のあたりで彼女は話した。「今日はここに来てくれてありがとう。私は過去にジャイヴ・レコード、エピック・レコードと契約したけれども、その9年間何も起こらなかった。でも、私はずっと自分の夢を信じていた。だから、みなさんも、自分の夢をあきらめずに追い続けてほしい」 いいメッセージだ。
確かに実際に歌おうが歌うまいが、バンドが演奏しようがしまいが、アシャンティという一人の人間がそのステージに上がって、腰を振り、踊っていて、適度に観客に話しかければ、それはそれでひとつ仕事が完結しているのかもしれない。ファンが歓声をあげ、踊り、満足すれば、それはそれで存在意義もあるということになる。もしこれが自分のバンドで、すべて実際にやっていたなら、まあいいでしょう。しかし、「マイム」と「ライヴ」というものは、どうしても「出し物」としての質が違うということをまず前提としてはっきりさせておかなければならない。「マイム」のパフォーマンスとしては90点なのかもしれない。だが、「ライヴ」の評価基準は違うのだ。
デスチャがどこまでリアルに歌っているかは今判断できないが、しかし、全体的な演出力、プレゼンテーションという点では、アシャンティはまだまだデスチャたちの一段階下という感じがした。もっとも今回ライヴかマイムかをチェックしようとしたのは、最初からそういうつもりで見ていたからだ。一般の人はそんなことをする必要はない。
全曲ミュージシャン全員が演奏し、本人がすべての曲を歌ったいたということが証明されるのなら、この日記は潔く撤回します。(笑) アシャンティは2枚ともCDはグッドだし、かわいいから好きです。
(2003年10月26日・日曜・東京国際フォーラム・ホールA=アシャンティ・ライヴ)
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(タイトル・ライヴとマイムの間に)