Lyrics Belongs To Whom It Needs, Not To Whom Wrote It

著作権。

歌、とくに流行歌というものは、まず第一にはレコード、現在はCDが売れてなんぼのものです。そして、次にはあちこちでかかって、たくさんの人に聴かれ、あるいは、歌われて、その価値がでます。ある人にとって、そのヒット曲は特別の歌になるかもしれませんし、別の人にとっては同じ曲が悲しい思い出になるかもしれません。

では、その歌は一体だれのものなのでしょう。しばらく前にBBSで、歌詞の引用についてちょっと触れました。以前から考えていたことをもう少し詳しくお話しようかと思います。著作権の問題ともからんできます。

これだけデジタルの技術が発展してくると、あらゆるデジタル情報は簡単にコピーができるようになります。CDであれ、DVDであれ、数分もあれば、同じものが同じクオリティーでコピーできてしまいます。インターネット創世記からの識者であるエスター・ダイソン氏は、今から6年前の97年の著作『未来地球からのメール』の中で「デジタル情報の価値は、無限に安くなる」と言っています。

現実に、そうなっています。ではその場合、その著作者、なにか新しいものを作った人はどのように経済的な利益を得ればいいのでしょうか。ダイソン氏はさまざまなモデルが考えられるが、そのひとつの方法として単なる情報以上の付加価値をつけて売ればいい、といいます。音楽家の場合で言えば、いいCDを作って、それがヒットしたら、いいライヴをたくさんすればいいのです。いいライヴをすれば、お客さんがお客さんを呼び、たくさんの人々が集まるようになります。ライヴには、CDにはない付加価値が存分にあります。ライヴは、コピーできないのです。もちろんライヴCDやライヴDVDを発売することはできますが、それはライヴそのものではありません。

こういう言い方もできます。CDやレコードは、版画やポスターのようなもの。一方、ライヴは一点ものの絵画。その場合どちらが価値があるかというのは自明です。では、CDをたくさん売って儲けるというビジネスモデルがもはや破綻しつつあるのか、と言われれば、徐々にそうなるかもしれないが、絶対になくなることもない、といったところでしょう。コピーコントロールをつけたところで、何の問題の解決にもなりません。デジタル情報は結局は、簡単にコピーできるのですから。

そして、歌詞ですが、歌詞というものは、もうすでにパブリック・ドメイン(公共物)になっていると言っていいでしょう。もちろん、歌詞を書いた人には著作権者がいるので、その歌詞を複製して販売するには著作者の許可がいります。そして販売したときにはその利益の一部を配分しなければなりません。それはカラオケで歌ったときも、誰か別の歌手がそのソングライターの作品を大勢の前で歌ったときも、同じです。

数年前一本の映画を見ていて、これだ、と思ったセリフがありました。映画は『イル・ポスティーノ』(95年・イタリア)というもの。地中海の美しい小島を舞台にした20世紀を代表する偉大な詩人ネルーダとそこに毎日郵便を配達する青年マリオの交流の話です。詩人は、文字も書けないようなその青年に詩のイロハから教えていくのですが、あるときちょっとした討論になり、その青年が詩人に向かってこういうのです。

「詩は書いた人間のものではない。それを必要とする人間のものだ」

思わずテレビ画面に向かって拍手してしまいました。流行歌などというものは、ひとたびヒットしてしまったら、作者の元から一人歩きを始めるのです。そして、「歌は、その時点ではもはや書いた人間のものではない。歌を必要とする人間のものだ」ということになっていくのです。これは、もう自然の流れなんですね。

では著作権なんてものはなくなるのか。いや、当分はなくなりません。当然既得権を確保しようとする動きが強いですから。でも、歌詞をウエッブに載せる程度のことなど、上記の言葉があれば、なんら問題にもならないということです。デジタル技術の発展はありとあらゆる点で、著作権という概念の土台を揺らし始めているのです。著作権者は、自分の著作物に何らかの付加価値をつけて売らなければならない時代がやってきたわけです。

CDをコピーしていい、と言っているのではありません。だめだと言って禁止したところで、結局はコピーされてしまいます。それだったらコピーされた後、どうしたらいいかを前向きに考えなければなりません。

結論は、その歌を必要とする人間をたくさん作らなければならないのです。その歌を必要とする人間がたくさん増えれば、結局はその歌を作った人、歌った人に最終的に経済的利益はもたらされるはずです。そして、歌はやはりそれを必要とする人々のものになっていきます。

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タイトル・歌詞は誰のものか?

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