女王。
風格。5年ぶり。61歳。堂々。意気込み。圧倒。
歌い続けて何十年、そして、録音し続けたアルバムが何十枚となると、作品ごとの意気込みの違いというものは一体どれほどのものになるのだろうか。もちろん、毎回新作を作るときには、それなりの意気込みが絶対にあるはずだ。とはいうものの、そこは人間。相当な力が入るときもあれば、そうでもないときもあるだろう。だが、この新作には相当な意気込みがあった。
ソウルの女王アレサ・フランクリンの新作『ソー・ダム・ハッピー』を聴いての印象だ。前作『ローズ・イズ・スティル・ローゼス』は、そのバックの今風の音とアレサの声のマッチングに僕は若干違和感を感じていたが、この新作の堂々たることや、なんたるもの。バックの音が少々新しくたって、古くたって、そんなものは関係ない、私は私。という感じで、徹底的に声で圧倒してきた。アレサの声のシャワーがこの『ソー・ダム・ハッピー』に降り注ぐ。
『ソー・ダム・ハッピー』とは、「くそ、なんて幸せ!」といったニュアンスか。あるいは「超しあわせ!」とか。
1曲目「ジ・オンリー・シング・ミッシン」はアコースティックギターのイントロから始まるいかにも今風のミディアム調のサウンドだが、6秒のところから始まるアレサのその叫び声だけで持っていかれる。メアリーJブライジがらみの2曲(「ホールディング・オン」と「ノー・マター・ホワット」)も、いいマッチングだ。
アレサのセルフプロデュースによる「ソー・ダム・ハッピー」と「ユー・アー・マイ・ジョイ」は、70年代風のアレサを思わせる。ゆったりしたウォーキングテンポの作品とスローバラードは、クイーンが60年代から21世紀になってもいまだにクイーンであることを証明しているかのようだ。
アレサのルーツ、ゴスペルを思わせるのが、メンフィスのソウル・グループ、ソウル・チルドレンのメンバー、ノーマン・ウェストがプロデュースした「グッド・ニュース」。そして、もう一曲、ポップに迫るのがバート・バカラックの作・プロデュース「フォーリング・アウト・オブ・ラヴ」。
アレサのアルバムの歴史を振り返ると、これだけたくさんのアルバムをだしていながら、ポップ・アルバム・チャートでのナンバーワンがない。ゴールド、プラチナム・ディスクは多数。グラミーも多数。しかし、アルバムチャートの最高位は2位。唯一取れていないタイトルとも言える。初ヒットアルバムがでたのが1962年。それから41年の歳月が流れている。ルーサーが初の1位、アイズレー・ブラザースも初の1位を獲得している昨今、アレサ・フランクリンのポップ・アルバム・チャート初のナンバー・ワン・アルバムがこの新作によって記録されるのではないか。
彼女がこのアルバムにかけた意気込みとは一体なんだったんだろう。ものすごく興味がわいている。ツアーとの関連もあるのか。少なくとも前作にはなかった何かがここにはある。
Queen Is Still A Queen. クイーンは依然クイーンである。
『アレサンフランクリン/ソー・ダム・ハッピー
So Damn Happy』
2003年9月25日発売
BMGジャパン BVCA-21149
2548円(税込)