Femi Kuti & The Positive Force: Diamonds Are Made Of His Music

ダイアモンド。

いやあめちゃくちゃよかった。始まって5分もしないうちに、これはすごいと思った。驚いた。今年見た数あるライヴの中で、個人的に今のところ1位かもしれない。西アフリカ、ナイジェリアのフェミ・クティと彼のバンド、ポジティヴ・フォースのライヴだ。フェミはやはりアフリカ音楽の巨匠とも言えるフェラ・クティーの息子。

ドラマーがいい、ベースがいい、ギターがいい。ホーンセクションがいい。セクシーなダンサーが、これまたいい。パーカッションがいい。このリズムにやられた。祭りであり、エンタテインメントであり、もちろん、リアル・ミュージック・バイ・リアル・ミュージシャン。こんなに楽しく、しかも、演奏がしっかりしているバンドなんてなかなかお目にかかれない。

バンド演奏が始まり、パープルの上下のアフリカ風衣装に身を包んだフェミがステージに上がると、彼は丁寧に両手をあわせ、ゆっくり深々とお辞儀をした。何か神聖な儀式が始まるかのようだ。床に置かれていた3本のペットボトルの横に、まだほとんど汗をぬぐっていないタオルをきっちりと置いた。彼の几帳面さを垣間見て、血液型がA型じゃないかと思った。(笑)

バックバンド、ダンサー、フェミ本人を加えオンステージには総勢15名。所狭しと踊り、演奏し、歌う。強烈なカーニヴァルがそこで繰り広げられた。

その中におそらく7-8歳と思われる子どもが、これまたかわいらしい小さなパーカッション(太鼓は2つだけ)を懸命に叩いていた。一曲目を終えたところで、フェミが紹介した。「僕の息子です。彼は3歳半の時に、トランペットで遊んでいて『ブアーン』という音を鳴らしたんです。それ以来、祖母は彼にドラムスを叩かせなさいと言い続けるようになりました。そして、(腕と指で彼を紹介する仕草)。父親であることと、こうして仕事として一緒にステージに立つことを両立するのはちょっとむずかしいですが・・・」

一曲目を演奏している時にはちょっとばかり険しい表情だったフェミが、「僕の息子です」と紹介した時、その顔は瞬時に父親の顔になっていた。その息子はいつも、父親の方を見ながらスティックを叩く。フェミ・クティー自身はまだ始めて2年というトランペットや、やはり始めて3年というキーボードなども使い、バンド演奏をリードする。彼はサックスと歌がもっとも得意だ。

それにしても、目の前で徹底して腰を振るこの女性ダンサーたちのハッピーでセクシーなことよ。なんであんなに腰を早く動かせるのか。アフリカ風の化粧とその激しいダンスは、それだけで観客を興奮のるつぼに陥れる。Shake Your Booty: 彼女らはThe Greatest Booty Shakers In The World.

強烈なリズム隊にホーンセクション。アフリカのファンクは、もはやアフリカだけにとどまらない。彼らの音楽性の中にアフリカの要素はあるものの、アメリカのソウル、R&Bのファンクと、根っこで同じだということが感じられる。フェミの音楽のルーツを求めて地球を下に掘って掘っていくと、ジェームス・ブラウンのルーツを掘ってたどり着くところと同じ地点にたどりつく。こういうライヴを見ると、一日も早くアフリカの地を訪れたいと痛感する。

後半、上半身裸になったフェミの背中や頭から汗が滴り落ちるようになった。時間の経過とともに二の腕あたりの血管が浮き出てくる。頭をちょっと左右に動かすだけで、汗が飛び散る。客席に背中を見せるとそこは全身汗できらきらと光る。褐色の肌に光るこの美しき汗はいい音楽を作り出すときに生まれた光り輝くダイアモンドだ。

1時間40分の情熱の爆発と野性の躍動。最後の曲が終わった後、観客席からはアンコールを求める拍手が5分以上続いた。珍しい。あまりに多くの見るべきもの、聞くべきものがあり、まだあと2-3回味わいたいが、昨日のショウで帰国してしまう。来年、またぜひ。

(2003年7月31日水曜・東京ブルーノート・セカンド=フェミ・クティ&ザ・ポジティヴ・フォース)

ブルーノートの紹介ページ
http://www.bluenote.co.jp/art/20030727.html

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