モータウン。
なぜか、モータウンのカヴァーアルバムがほぼ時を同じくして2枚発売される。一枚が、既に7月9日に日本発売された元ドゥービー・ブラザースのマイケル・マクドナルドのその名も『モータウン』(ユニヴァーサル)。もう一枚が、なんとギタリスト、リー・リトナーの『ア・トゥイスト・オブ・モータウン』(ヴァーヴ)で、これは9月3日日本発売。
マイケル・マクドナルドのほうは、実によく練られて制作された感がある。まあ、ブルーアイドソウル・シンガーとして、マクドナルドは以前から定評があったので、彼がモータウンのヒットをカヴァーしても、非常に納得がいくところだ。選曲もなじみの深い曲を中心に、いいアレンジでまとめた。マーヴィン・ゲイの「アイ・ウォント・ユー」、「ディスタント・ラヴァー」など、マクドナルド風でもあり、マーヴィンの面影も感じられ、なかなかいいヴァージョン。また、テンプスの「シンス・アイ・ロスト・マイ・ベイビー」も彼の声にあっていて、かなりいい。全体的に、いい雰囲気のポップアルバムにしあがっている。
20年前だったら、僕は彼がこのようなアルバムを出しても、そんなに耳を傾けなかったと思う。これを今何度も何度もプレイヤーに乗せて、へヴィーローテーションで聴いてしまうというのは、僕のソウルに対する許容度が広くなっていることと、やはり時代的に、歌物が恋しいという背景があるのだろう。この程度のソウル度でも、十分ソウルっぽく感じてしまう周りとの比較級の問題だと思う。つまり、昔はもっともっと濃いソウルがあったから、そっちに行っていたが、今はほとんどそういうのがないから、マクドナルドのソウル度に感じてしまうというわけだ。彼自身のソウル・ミュージックに対するスタンス、距離感はまったく変わっていない。別に否定的に言ってるわけではない。
さて、一方のリー・リトナーのアルバムは、う~~む、なんというか、はっきり言うとマイケルのアルバムと比較するとかなり、やっつけ仕事の感がする。これは彼の『ツイスト・オブ・ジョビン』、『ツイスト・オブ・マーリー』に続くカヴァーシリーズの第3弾ということになる。「インナー・シティー・ブルース」「パパ・ウォズ・ア・ローリング・ストーン」など全11曲選曲はいいが、演奏は軽くまとめた、という感じ。なにかの番組のBGMには使えるが、一曲しっかり正座して耳を傾けましょう、というところまではいかない。
おそらくみんなワンテイクかツーテイクで録音したような感じの出来だ。もちろん、ゲストの名前はすばらしい。ジョージ・ベンソン、ウィル・ダウニング、リサ・フィッシャー(「パパ」を歌う)、ブレンダ・ラッセル(「トラックス・オブ・マイ・ティアーズ」)、ジェラルド・オルブライトなどなど。アイデアでこれはと思ったのは、エドウィン・スターの「ウォー」とマーヴィンの「ホワッツ・ゴーイング・オン」をメドレーにしてで録音したところ。メッセージ的にもつなげられる2曲だ。
そうは言ってもモータウン・ファンは、やっぱり買うだろう。モータウン企画は、永遠に不滅だ。