カラフル。
実に多彩な、そして、完璧なエンタテインメントのショウ。オーディエンスを一瞬たりとも飽きさせないショウアップされたステージ。一曲一曲がまるで、プロモーション・ビデオのように演出された舞台。マライアのライヴは、そういったすべての楽しさが凝縮されていた。
既に今回で5度目の来日。毎回楽しい演出で見せてくれるが、彼女のライヴを見ていて、マイケル・ジャクソン、ジャネット・ジャクソンなどの超一流エンタテインメント・ショウのいいとこどりをしているということを強く感じた。別に悪い意味ではなく、むしろ、ひとつのステージでいかにオーディエンスを楽しませるかを徹底して考えた結果ということだろう。
一体何度衣装替えをしたか、わからなくなった。7-8回までは数えていたのだが。思わずショウアップされたステージに見とれてしまい、途中で数えるのを忘れた。(笑)
基本的には、最近の大掛かりなステージがほとんどそうであるようにビデオ映像をうまく使ったステージ構成になっている。次々といろいろな仕掛けが登場して小さなサプライズが続く。
オープニングから、彼女は武道館東側の観客席のほうから登場し、観衆を沸かせた。11人のダンサーに、9人のバックバンドという大所帯でのステージは、徹底的な物量作戦で、これでもかとオーディエンスを圧倒する。そして、ときおり、あの甲高い声を発し、喝采を集める。
気に入った曲は、「アイ・ノウ・ホワット・ユー・ウォント」の演出。マライアやセクシーに腰をくねらせるところが、なんとも言えずによかった。マライアって女を武器にすることを躊躇しないところが、いい。でも、マライア少し太った?
それにしても、一体小道具いくつくらいあるのだろう。これを運ぶと2トン車が何台いるのだろうか。すごい。特に「サブタル・インヴィテーション」の冒頭で、武道館のステージ天井から吊り下げられて降りてきたのには、度肝を抜かれた。怖くないのだろうか。シートベルトはなさそうだし。
一方、それに続く「マイ・セイヴィング・ライフ」はピアノの周りにバックコーラスの4人と集まり、シンプルにピアノ伴奏だけで歌う演出。ちょっとゴスペル風の歌を聞かせる。これもなかなかよかった。モニターに映すカメラワークもうまいものだ。
マライアって、マイケル同様、けっこうバッシングを受けやすい体質だが、このステージを見ていると、「そんなバッシング、私は気にしないわ。このステージを見てごらんなさいよ」と堂々と主張しているように思えた。そして、単純にこのステージなら、文句はないと思った。おそらく、バッシングをされても、相当数のファンは彼女についていくように思える。その点にマイケル・ジャクソンと同じ匂いを感じとった。つまり、マイケルもメディアからはさんざんに叩かれても、ファンは必ずライヴにやってきて、熱狂的にそのアーティストを支持する。だから、マライアにもがんばれ、と言いたくなった。
アンコールも含めて1時間43分。ビデオを使った大掛かりな演出のライヴとしては、ポール・マッカートニー以来の楽しいものだった。最後には、スクリーンに昔のハリウッド映画よろしくThe Endの文字が現れた。最後の最後までびしっとやってくれる。直近の新作の出来は、僕は不満だったが、このステージングは気に入った。
【2003年7月6日日曜・日本武道館】
ENT>MUSIC>LIVE>CAREY, MARIAH