★ユーミン、スティーヴィーについて語る

★【ユーミン、スティーヴィーについて語る】
打ち合わせ。
先日の『スイート・ディスカヴァリー』の収録で、最後にスティーヴィー・ワンダーの「オーヴァージョイド」がかかった。打ち合わせの初期段階では、スティーヴィーの曲を何かかけましょうか、みたいな話しになっていた。これからのモータウンというテーマで何か話すときに、60年代初期のモータウンから現在まで所属しているのは、スティーヴィーしかいないということ、また、スティーヴィーはモータウンにしか所属してこなかった「生涯1レーベルアーティスト」であることから、モータウン=スティーヴィーという図式があり、これを21世紀のモータウンへの期待とともにかけましょう、ということになった。
スティーヴィー曲は、それこそ星の数ほどあるが、そこからユーミンが「オーヴァージョイド」がすごいと思いますということで、これがかかることになった。僕ももちろん大好きな曲なのでまったく異論はなし。「これは曲として神がかっているというか、本当にすごいですよねえ。構成なんかも」と言う。稀代のシンガー・ソングライターがそれだけ褒めるのだから、よほどすごいのだろうと改めて思った。
そして、ちょっとしたスティーヴィー・ネタが。「で、これは自慢なんですけど(笑)、スティーヴィーの『心の愛』という曲、あれ、最初(友人の)ブレッド&バターにくれた曲なんですよ。ブレバタに頼まれて歌詞を書いて、けっこういいのができたんですけど、随分たってから、スティーヴィーが自分で使うので、ブレバタのは一度発売できなくなったんです。それで、その歌詞のところ、サビのところ『特別な気持ちで、愛してると言いたくて』というフレーズを書いたんですけど、はっきりはわかりませんけど、そこがI just called to say I love youになってたんですよ。そうしたら、あれ、映画の曲になって大ヒットしたでしょう。びっくりです」(曲のタイトルは、「特別な気持ちで」)
で、家に戻っていろいろ調べてみると、この話はけっこうブレバタ・ファン、ユーミン・ファンには有名な話なようで、なるほどと思った。ポイントは、『特別な気持ちで、愛してると言いたくて』というサビの日本語を、あるいは曲全体の詞の意味を誰かがスティーヴィーに英語に訳して、そこからちょっとしたインスピレーションを得て、スティーヴィーはあの曲のタイトルを「I Just Called To Say I Love You」としたかもしれない、というところだ。少なくとも「愛してると言いたくて」は、英語タイトルになっている。これは十分にあり得る話だ。
別件だが、スティーヴィーの「パート・タイム・ラヴァー」は、寺尾聡の「ルビーの指環」(1981年)に良く似ている。よく来日しているスティーヴィーが、日本の音楽から影響を受けることは十分考えられる。
ユーミンの日本語詞がスティーヴィーの英語詞より先にできていた、というところがおもしろい。つまり、ひょっとすると、ユーミンはあのアカデミー賞を獲得した楽曲の成功の一部に寄与しているということになる。ソングライター・クレジットがつけばよかったのにと思う。
ユーミンは79年か80年ごろ、ブレバタがスティーヴィーからこの曲をもらい、これに呉田軽穂名義で作詞。ところが84年にスティーヴィーが英語にして発表。大ヒット。その後、これのカヴァーということだったら出してもよいという許可がでて1986年にブレバタのヴァージョンがリリースされた。正確な時系列だとこうなのだが、一般的には84年の大ヒット「心の愛」を86年にブレッド&バターがカヴァーしたように見える。
ところで、番組でかけた曲は「オーヴァージョイド」だったが、その曲を彼女がとても褒めていたので、僕が「こういう曲が書けると、やはりうらやましいと思いますか?」と尋ねると、瞬時に「いいえ、思いません(笑)」ときっぱり言われた。思わず、「おおっ、さすが、すごい」と、感銘を受けた。キラリ、ソングライターのプライドを見た感じがした。すばらしい。
■ 番組ホームページ『スイート・ディスカヴァリー』
2009年1月11日オンエア分
http://www.tfm.co.jp/yuming/digest/digest.html
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