長尺。
テンプテーションズのアルバムはすでに約50枚。シングルヒットは約90枚。文句なく現役R&Bヴォーカルグループのナンバーワンです。昨日『ソウル・ブレンズ』でご紹介したアルバム『オール・ディレクションズ』は72年の作品ですが、当時のソウル・アルバムとしてはかなり斬新なものでした。
なんといっても、「パパ・ウォズ・ア・ローリング・ストーン」がここでは11分45秒もありますからねえ。イントロだけで3分53秒。イントロだけで、普通の曲なら終わります。当時はやっていた頃、ライヴではどうしていたんだろう。最近はさくっと短くして歌ってますけど。まさかロング・ヴァージョン、イントロ3分、バンドにあわせて振付けてたわけじゃないでしょうねえ。(笑) シングル・ヴァージョンでさえも6分58秒もあるんです。こちらでもイントロは1分54秒。よくこんな長い曲、7インチにいれましたよね。ほんと長尺ソウルです。
この曲は、結局グラミー賞を3部門獲得します。しかし、おもしろいのが、「R&Bインストゥルメンタル」部門を受賞しているところ。テンプテーションズと、アレンジャーのポール・ライザーが受賞者なんですが、テンプスは別になんにもやってません。このトラックを作ったのは、実際はプロデューサーのノーマン・ホイットフィールドであり、ミュージシャンたちですからねえ。(笑)
いくら70年代になって、ロックの世界で長い曲が流行り始めたと言っても、ソウルの世界でこんなに長い曲は聞いたことがありません。(ライヴ・ヴァージョンは別です) テンプスのメンバーは、ノーマンが作り出すいわゆる「サイケデリック・ソウル」のサウンドがあまり好きではなかったようで、けっこうスタジオではぶつかったようですが、当時はヒットが続いていたこともあって、なんとかなったわけですね。まあ、勝てば官軍です。
このアルバムには、エドウィン・スターのヒット「ファンキー・ミュージック」、アイザック・へイズの「ドゥ・ユア・シング」に加え、ロバータ・フラックの「ファースト・タイム・アイ・エヴァー・アイ・ソウ・ユア・フェイス」などのカヴァーが収録されています。
この中ではやはり、ロバータの曲のカヴァーが、ヴォーカル・グループらしさを存分にだしていて聴き応えがあります。このファルセットはデイモン・ハリスかな。
そして、現在ではこのアルバムとやはり70年の傑作アルバム『サイケデリック・シャック』の2枚が「2イン1」になって1枚のCDとして発売されています。輸入盤ですが。30年後にもひっぱりだされてじっくり聴かれるアルバムなんだから、たいしたものです。
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