邦題値千金。
ナット・キング・コールの89年に東芝からでていた2枚組40曲入りのベストCDを入手しました。そうしたら、ここに先日ウッチーさんがBBSで話題にあげてくれた「月光値千金」(5文字・11音)がはいっていました。キャッチーでいい曲ですねえ。
「モナ・リザ」「トゥ・ヤング」「枯葉」などなどスタンダードばかり。で、何を書くかと言えば、この頃の邦題についてです。1940年代から60年代にかけての作品群の邦題は一ひねりしつつも、その曲のエッセンスをついています。
みんな邦題がいいんですよねえ。たとえば、Red Sails In The Sunset 夕陽に輝く赤いセール=「夕陽に赤い帆」(6文字)。イメージがすぐにわきあがります。あるいは、これは映画のタイトルをそのまま使っていますが、Love Is A Many Splendored Thing 愛とはたくさんのすばらしいもの=「慕情」(2文字)。慕情とは、慕わしく思う気持ちです。昔の人はセンスありましたねえ。っていうか、ヴォキャブラリーがあったんでしょうね。
An Affair To Remember 最近だったら「思い出のラヴアフェア」といった程度の邦題か。これが「過ぎし日の恋」(6文字)。
これもいいですよ。Oh, How I Miss You Tonight 「オ~、どれほど今宵(こよい)君のことを思うか」が直訳。これが「君しのぶ宵」(5文字)だ!
次のもうまい。Those Lazy-Hazy-Crazy-Days Of Summer。まあ直訳すれば、「けだるく、どんよりした、クレイジーな夏の日々」といったところでしょうね。これを「暑い夏をぶっとばせ」(9文字)とするわけだ。
月曜日にNHKの番組に字幕翻訳家の戸田奈津子さんがでていて、字幕の話をいろいろしていましたが、セリフ1秒につき3-4文字しかはいらない。だから、日本語がものすごくむずかしい、ということを力説されておりました。
最近、こいつはうまい、という曲の邦題があんまりありませんが、やはり、ずばっとくる邦題は覚えますよね。
そして、ナット・キング・コール全40曲中、ナンバーワン邦題賞は、文句なく「月光値千金」です。原題は、Get Out And Get Under The Moon。日本人のDJは、誰もこんなタイトル読みません。(笑) せいぜい直訳だと、「飛び出せ、月光の元に」といったところかな。それも悪くないか。でも、たった5文字のほうが勝ちですねえ。
値千金の邦題です。