◆ベイビーフェイス(パート2): グレイト・ソング・ストーリー:「ファイアー&レイン」

◆グレイト・ソング・ストーリー:「ファイアー&レイン」
火雨。
今週、六本木「ビルボード・ライヴ」でライヴを行っているベイビーフェイスがアルバム『プレイリスト』でカヴァーした白人シンガー・ソングライター、ジェームス・テイラー作の「ファイアー&レイン」。ジェームスの1970年2月発売の2枚目アルバム『スイート・ベイビー・ジェームス』に収録されシングルとしてもヒットした。この作品の誕生秘話。(ベイビーフェイスのライヴ評、セットリストなどは、昨日付けブログで)
ベイビーフェイスのライヴで、キーボード奏者のグレッグ・フィリンゲーンズがシンガーから聞いた話としてこんなことを言った。「ジェームスのガール・フレンドがジェームスに会いに行くとき、その飛行機が墜落してしまった。そのことを描いた曲だ」といったことを言うと、ベイビーフェイスが「それは違うんだ」と受けた。へえ~と思い調べてみた。すると~~いろいろわかった。
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『ファイアー&レイン』(訳詞・ソウル・サーチャー)
ほんの昨日の朝、友達が教えてくれた。君が死んだことを
スザンヌ、彼らの計画が君の人生を終わらせた(みたいだね)
今朝、散歩に出て、この曲を書いた
誰に向けて書いたのかまだ思い出せない
燃え盛る火、降り注ぐ雨、
決して曇ることない晴れた日々、
たった一人の友達さえいない孤独の日々
そんな明暗の日々があっても、ずっとまた君と会えると思っていた (冒頭のみ)
(註、ジェームスのヴァージョンは、スザンヌとなっているが、ベイビーフェイスのヴァージョンはここをlooks like=みたいだね=に変えている)
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解釈。
ジェームス・テイラーはこの曲について、いくつかのヴァージョンの話をしている。イギリスのBBC(放送)に語ったインタヴューでは、この作品は彼自身の精神的鬱(うつ)と友人の自殺について書いたものだという。別のVH1のインタヴューでは彼の友人スザンヌ・シュナーについて書いたものだという。スザンヌはジェームスがロードで出ていたときに、突然他界した。ほぼ同じ時期ジェームスは当時自分がいたバンド「ザ・フライング・マシーン」が成功しなかったことに、大きく落ち込んでいた。「甘い夢とフライング・マシンは、地上で粉々になっている」
彼自身どうしていいかわからない混迷の時期に、彼はスザンヌの死を知らされる。そこで人生、命のはかなさを知り、古い友人の元へ戻る。またこの時期、ジェームスはドラッグ問題も抱えていた。
さらに、2005年のNPRへのインタヴューで、ジェームス・テイラーは楽曲は3つのパートに分かれていると説明する。
1番は、ジェームスがロンドンのアップル・レコード(ビートルズのレコード会社)と契約し、レコーディングをしているときに、スザンヌが死んだことを描いている。友人たちはせっかくのいいチャンスを台無しにしてはいけないということで、ジェームスにショックを与えないために、スザンヌの死をしばらく隠していた。また、スザンヌは友人で、ガール・フレンドではないという。
2番はジェームスのドラッグとの戦い。
3番は、彼が有名になり富を得るまでの下積みの時代。そして、彼のリハビリ時期のこと。
そして、それまでに言われてきたこの曲にまつわる噂が次のようなものだ。「ジェームスは自分の誕生日にどこかの地方都市でライヴの予定があった。仲間がガール・フレンドのスザンヌをその地へサプライズで行かせようと航空券をプレゼントした。ところが不幸にもその飛行機が激しい雨のために離陸直後墜落、スザンヌが死亡。それを知ったジェームス・テイラーはそのことを『ファイアー・アンド・レイン』として書いた。火と雨は、飛行機が燃えてる火、雨はその日の激しい雨を指す」 だが、ジェームス・テイラー本人はこの噂を否定している。
グレッグが話したのは、この噂話の部分だ。実際は、NPRへのインタヴュー内容が近いようだ。ローリング・ストーン誌でのインタヴューもほぼこれに沿った感じになっている。そこで、これがジェームスが否定しているのを知っているのか、ベイビーフェイスもこの話を否定した。
「火と雨」、そして、「太陽=晴れた日」の対比が実にうまい。つらい時も、厳しい時も、楽しい時もあった。でも、いつでも、君に会いたい、メインのメッセージはここにある。そして、その付随説明をする部分にジェームス・テイラーの詳細な自伝的エピソードが散りばめられている。いくつもの説や解釈があるにせよ、この曲がジェームス・テイラーの自伝的作品のひとつであることは間違いない。
それにしても、この曲を左利きのベイビーフェイスがギターを弾きながら歌うところがユニークだ。そして、この曲に興味を持たせてくれたベイビーフェイスとグレッグ・フィリンゲーンズに改めて感謝。
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Fire & Rain (written by James Taylor)
(1番)
Just yesterday morning they let me know you were gone
Susanne[looks like] the plans they made put an end to you
I walked out this morning and I wrote down this song
I just can’t remember who to send it to
I’ve seen fire and I’ve seen rain
I’ve seen sunny days that I thought would never end
I’ve seen lonely times when I could not find a friend
But I always thought that I’d see you again
(2番)
Won’t you look down upon me, Jesus
You’ve got to help me make a stand
You’ve just got to see me through another day
My body’s aching and my time is at hand
And I won’t make it any other way
Oh, I’ve seen fire and I’ve seen rain
I’ve seen sunny days that I thought would never end
I’ve seen lonely times when I could not find a friend
But I always thought that I’d see you again
(3番)
Been walking my mind to an easy time my back turned towards the sun
Lord knows when the cold wind blows it’ll turn your head around
Well, there’s hours of time on the telephone line to talk about things to come
Sweet dreams and flying machines in pieces on the ground
Oh, I’ve seen fire and I’ve seen rain
I’ve seen sunny days that I thought would never end
I’ve seen lonely times when I could not find a friend
But I always thought that I’d see you, baby, one more time again, now
(4番)
Thought I’d see you one more time again
There’s just a few things coming my way this time around, now
Thought I’d see you, thought I’d see you fire and rain, now
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■過去グレイト・ソング・ストーリー (楽曲にスポットをあてた記事)
2004/03/22 (Mon)
"New York State Of Mind"
https://www.soulsearchin.com/entertainment/music/song/diary20040322-1.html
「ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド」(ビリー・ジョエル)
2004/03/18 (Thu)
"Golden Lady"
https://www.soulsearchin.com/entertainment/music/song/diary20040318-1.html
「ゴールデン・レイディー」(スティーヴィー・ワンダー)
2003/06/21 (Sat)
Dance With My Father:
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200306/diary20030621.html
「ダンス・ウィズ・マイ・ファーザー」(ルーサー・ヴァンドロス)
2004/05/03 (Mon)
American Pie
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200405/diary20040503.html
「アメリカン・パイ」(ドン・マクリーン)
2003/08/16 (Sat)
Sunny: Bobby Hebb
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200308/diary20030816.html
「サニー」(ボビー・ヘブ)
August 03, 2007
Ron Miller: Great Poet (Part 2) – The Meaning Of "I’ve Never Been To Me"
http://blog.soulsearchin.com/archives/2007_08_03.html
「アイヴ・ネヴァー・ビーン・トゥ・ミー(愛はかげろうのように)」(シャーリーン)
August 02, 2007
Ron Miller: Great Poet (Part 1)
http://blog.soulsearchin.com/archives/2007_08_02.html
「ヘヴン・ヘルプ・アス・オール」(スティーヴィー・ワンダー)
July 20, 2007
"Fortunate Son" Story (Part 1): "Die Hard 4.0" Saga Continues 
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200707/2007_07_20.html
「フォーチュネイト・サン」(CCR)
July 21, 2007
"Fortunate Son" Story (Part 2): "Die Hard 4.0" Saga Continues 
http://blog.soulsearchin.com/archives/2007_07_21.html
「フォーチュネイト・サン」(CCR)
November 10, 2006
The World Of Linda Creed: Portrays The Blackness
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200611/2006_11_10.html
リンダ・クリード作品 「チルドレン・オブ・ザ・ナイト」(スタイリスティックス)、「ゲットー・チャイルド」(スピナーズ)
September 29, 2006
"Guess Who I Saw Today" Is Nancy Wilson’s Signature Song
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200609/2006_09_29.html
「ゲス・フー・アイ・ソウ・トゥデイ」(ナンシー・ウィルソン、シャンテ・ムーア&ケニー・ラティモア)
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