【ジョー・サンプル・インタヴュー(パート1)】
2枚目。
ワン・アンド・オンリーなピアニスト、ジョー・サンプルが新作アルバム『ノー・リグレッツ』のプロモーションのために、来日中だ。去る10月1日にインタヴューした。
■ ジョー・サンプル&ランディ・クロフォード 『ノー・リグレッツ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001D08OXQ/soulsearchiho-22/ref=nosim/
実は、このアルバムのライナーノーツを書いたのだが、ライナー用に一足先に電話インタヴューをした。その模様は、ライナーにふんだんに書いたが、今回のインタヴューは、来る10月5日(日)のFM番組『ソウル・ブレンズ』(インターFM76.1mhz毎週日曜午後3時~5時)内「山野ミュージック・ジャム」(午後4時半から)でオン・エアするためのもの。
ちょっと話がだぶるかと思ったら、ほとんど違う話になり、思う存分インタヴューを楽しめた。ジョーは本当に話がおもしろい。もちろん、「今回のアルバムのコンセプトは」とか「聴き所は」といった質問は答えが重なるだろうが、それでも違った話をしてくれたりする。今回プロモーションで来日しているが、プロモーション来日という行為が、50年近いキャリアの中で初めてのこと。連日5-6本のインタヴューを受け、4日で20本以上受けるらしい。
ジョーの新作『ノー・リグレッツ』は、シンガー、ランディ・クロフォードを全曲に迎えてのいわばデュエット・アルバム。しかも、前作に引き続き、全曲ランディとの録音だ。なぜ、ランディと2枚もアルバムを作ったのか。ジョー雄弁に語る。
「4年ほど前に、ロンドンでクルセイダーズのライヴに彼女がゲストででたことがあった。(ロンドン郊外の)アスコット競馬公園でライヴをやることになったのだが、サウンドチェックを待つまでに3時間ほど時間があいた。そこで僕たちは近くで時間をつぶすことにしたんだ。その日は本当にいい天気で、環境も素晴らしかった。木が茂っていて、ランディはここで、歌を歌い始めた。その時、彼女はまさに『音楽のエンサイクロペディア(百科事典)』だということを悟った。次から次へと、歌っていた。それはまるで、ブロードウェイのダンサーのように、くるくる回ったり、まるで(映画)『サウンド・オブ・ミュージック』の主人公のようだった。しかも、彼女はメロディーだけじゃなくて、歌詞をみんな知ってたんだよ。僕が忘れていたようなものまでね。ずっと歌い続けた。ランディの音楽へのパッション(情熱)のようなものを、思い出したんだ。それは、1976年に彼女と初めて会って以来感じていたものなんだが、それを思い出したんだよ。その後、ランディとカリフォルニアで再会したとき、彼女がその頃出たアルバムを聴いてくれと言って、聴いたんだ。すると、それはどこかヨーロッパのレコード会社から出たものだと思うが、あからさまにヒットを出さねばという作りのアルバムで、ひどいものだった。5人のプロデューサーがいて、それぞれがヒット曲を(シンガーに)書いてやる、という感じでね。そこで僕はマネージャーに言った。『彼女は、シンプルにピアノにベース、ドラムスといった編成で歌うべきだ。ただ彼女の声を(作品の中で)聴ければ、それこそがヒットなんだ。だから、ヒット曲を作ろうとして、レコーディングするのは止めなさい』とね。そうして(我々の)最初のアルバム(『フィーリング・グッド』=2006年)が出来上がった。で、(笑いながら)、最初の1枚のポテトチップスがおいしかったら、君は2枚目のポテトチップスを食べるだろ。(笑) これは2枚目のポテトチップスだな」
電話で話を聴いた時は、ジョーは2年前のモスクワのコンサート・ホールでランディが歌ったブルーズ・ソングの話をしてくれた。その話も、この話も、ジョーのストーリーはまるでちょっとした映画を見ているように、情景描写が実にうまい。ほとんど同じような質問をしても、まったく違ったストーリーを語ってくれる。ストーリー・テラー、ジョー・サンプルの面目躍如だ。
というわけで、この『ノー・リグレッツ』は、「2枚目のポテトチップス」とのこと。(笑) そして、話はどんどん続いたのだが、ジョー本人にこの新作アルバムから、オン・エアー用に2曲を選んでもらった。
彼はジャケットをじっくりと見ながら、「難しいなあ」と言いつつ、「リスペクト・ユアセルフ」と「リード・ミー・オン」をピックアップ。これを「山野ミュージック・ジャム」でかける。そして、その曲紹介をDJのようにやってください、と頼んだ。もちろん、その場で軽くやってくれたので、これら2曲の曲紹介をぜひ、日曜日、お聴きください。
インタヴューの中身は他に、彼がメジャー・レコード在籍時に経験した苦労、自分の音楽がカテゴリーに入らないことへの悩み、1984年頃、自分が自信を失ったときの話、彼のピアノのタッチ、などなど。追々ご紹介していきたい。
ところで、このインタヴューの翌日、「明日は何してるんだ?」みたいな話になり、「中野で1本ライヴを見る」というと、ジョーは、リー・リトナー&デイヴ・グルーシン、新日本フィルを墨田トリフォニー・ホールで見た後、ブルーノートにデイヴ・コズを見に行くという。「あなたは、プレイするんですか、飛び入りで?」と聞くと、「いや、しないと思う。ただ見るだけだ。一緒に見ないか」と言われ、二つ返事でOKし、翌日ブルーノートに出向くことになった。
(ジョー・サンプルの項・続く)
ENT>MUSIC>ARITIST>Sample, Joe
2枚目。
ワン・アンド・オンリーなピアニスト、ジョー・サンプルが新作アルバム『ノー・リグレッツ』のプロモーションのために、来日中だ。去る10月1日にインタヴューした。
■ ジョー・サンプル&ランディ・クロフォード 『ノー・リグレッツ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001D08OXQ/soulsearchiho-22/ref=nosim/
実は、このアルバムのライナーノーツを書いたのだが、ライナー用に一足先に電話インタヴューをした。その模様は、ライナーにふんだんに書いたが、今回のインタヴューは、来る10月5日(日)のFM番組『ソウル・ブレンズ』(インターFM76.1mhz毎週日曜午後3時~5時)内「山野ミュージック・ジャム」(午後4時半から)でオン・エアするためのもの。
ちょっと話がだぶるかと思ったら、ほとんど違う話になり、思う存分インタヴューを楽しめた。ジョーは本当に話がおもしろい。もちろん、「今回のアルバムのコンセプトは」とか「聴き所は」といった質問は答えが重なるだろうが、それでも違った話をしてくれたりする。今回プロモーションで来日しているが、プロモーション来日という行為が、50年近いキャリアの中で初めてのこと。連日5-6本のインタヴューを受け、4日で20本以上受けるらしい。
ジョーの新作『ノー・リグレッツ』は、シンガー、ランディ・クロフォードを全曲に迎えてのいわばデュエット・アルバム。しかも、前作に引き続き、全曲ランディとの録音だ。なぜ、ランディと2枚もアルバムを作ったのか。ジョー雄弁に語る。
「4年ほど前に、ロンドンでクルセイダーズのライヴに彼女がゲストででたことがあった。(ロンドン郊外の)アスコット競馬公園でライヴをやることになったのだが、サウンドチェックを待つまでに3時間ほど時間があいた。そこで僕たちは近くで時間をつぶすことにしたんだ。その日は本当にいい天気で、環境も素晴らしかった。木が茂っていて、ランディはここで、歌を歌い始めた。その時、彼女はまさに『音楽のエンサイクロペディア(百科事典)』だということを悟った。次から次へと、歌っていた。それはまるで、ブロードウェイのダンサーのように、くるくる回ったり、まるで(映画)『サウンド・オブ・ミュージック』の主人公のようだった。しかも、彼女はメロディーだけじゃなくて、歌詞をみんな知ってたんだよ。僕が忘れていたようなものまでね。ずっと歌い続けた。ランディの音楽へのパッション(情熱)のようなものを、思い出したんだ。それは、1976年に彼女と初めて会って以来感じていたものなんだが、それを思い出したんだよ。その後、ランディとカリフォルニアで再会したとき、彼女がその頃出たアルバムを聴いてくれと言って、聴いたんだ。すると、それはどこかヨーロッパのレコード会社から出たものだと思うが、あからさまにヒットを出さねばという作りのアルバムで、ひどいものだった。5人のプロデューサーがいて、それぞれがヒット曲を(シンガーに)書いてやる、という感じでね。そこで僕はマネージャーに言った。『彼女は、シンプルにピアノにベース、ドラムスといった編成で歌うべきだ。ただ彼女の声を(作品の中で)聴ければ、それこそがヒットなんだ。だから、ヒット曲を作ろうとして、レコーディングするのは止めなさい』とね。そうして(我々の)最初のアルバム(『フィーリング・グッド』=2006年)が出来上がった。で、(笑いながら)、最初の1枚のポテトチップスがおいしかったら、君は2枚目のポテトチップスを食べるだろ。(笑) これは2枚目のポテトチップスだな」
電話で話を聴いた時は、ジョーは2年前のモスクワのコンサート・ホールでランディが歌ったブルーズ・ソングの話をしてくれた。その話も、この話も、ジョーのストーリーはまるでちょっとした映画を見ているように、情景描写が実にうまい。ほとんど同じような質問をしても、まったく違ったストーリーを語ってくれる。ストーリー・テラー、ジョー・サンプルの面目躍如だ。
というわけで、この『ノー・リグレッツ』は、「2枚目のポテトチップス」とのこと。(笑) そして、話はどんどん続いたのだが、ジョー本人にこの新作アルバムから、オン・エアー用に2曲を選んでもらった。
彼はジャケットをじっくりと見ながら、「難しいなあ」と言いつつ、「リスペクト・ユアセルフ」と「リード・ミー・オン」をピックアップ。これを「山野ミュージック・ジャム」でかける。そして、その曲紹介をDJのようにやってください、と頼んだ。もちろん、その場で軽くやってくれたので、これら2曲の曲紹介をぜひ、日曜日、お聴きください。
インタヴューの中身は他に、彼がメジャー・レコード在籍時に経験した苦労、自分の音楽がカテゴリーに入らないことへの悩み、1984年頃、自分が自信を失ったときの話、彼のピアノのタッチ、などなど。追々ご紹介していきたい。
ところで、このインタヴューの翌日、「明日は何してるんだ?」みたいな話になり、「中野で1本ライヴを見る」というと、ジョーは、リー・リトナー&デイヴ・グルーシン、新日本フィルを墨田トリフォニー・ホールで見た後、ブルーノートにデイヴ・コズを見に行くという。「あなたは、プレイするんですか、飛び入りで?」と聞くと、「いや、しないと思う。ただ見るだけだ。一緒に見ないか」と言われ、二つ返事でOKし、翌日ブルーノートに出向くことになった。
(ジョー・サンプルの項・続く)
ENT>MUSIC>ARITIST>Sample, Joe