●ソウル・ジャイアンツ、ブラック・モーゼ、アイザック・ヘイズ(パート3

●Isaac Hayes (Part 3) : Ike’s Music; To Be Continued

【ソウル・ジャイアンツ、ブラック・モーゼ、アイザック・ヘイズ(パート3)】
ジャイアンツ。
まさに彼は「ソウル・ジャイアンツ」だ。自らもヒットを出したが、ソングライターとして「ソウル・マン」「ホールド・オン・アイム・カミン」などの大ヒットも生み出した。アイザック・ヘイズを初めて知ったのは、僕も「シャフト」だと思う。1971年の暮れからの大ヒットだからその頃だろう。そのかっこよさは初めて聴いたときから印象に残っていた。それは映画『黒いジャガーのテーマ(Theme From Shaft)』のテーマだったが、その映画自体を見るのは、ずっと後だったと思う。当時ブラック・ムーヴィーなど今ほど日本ではすぐには公開されなかった。
「シャフト」はアップテンポで、いかにも刑事物映画のテーマにふさわしい楽曲だったが、彼のアルバムは一風変わっていた。なによりも驚かされたのが、リリースは「シャフト」以前だったが、後から買った『ホット・バタード・ソウル』だ。なにしろ、アルバムに4曲しかはいってないのだ。「ウォーク・オン・バイ」は12分、「恋はフェニックス」は18分を超える。しかも、「シャフト」のかっこよさとは違って、静かにムード音楽が漂っていた。当時の僕は全然気に入らなかった。かったるいのだ。同じスタックスのオーティスやサム&デイヴ、ジョニー・テイラーのほうが断然いいと思った。
さて、『シャフト』のアルバムは、けっこう気に入った。この中に入っている「ドゥ・ユア・シング」という曲があるのだが、ゆったりしたダウン・トゥ・アースなソウルフルな曲で、実に渋かった。ちょうど僕が出入りし始めた六本木のディスコ「エンバシー」の店長をしていたドン勝本氏がこの曲をものすごく気に入っていて、彼がDJブースに入ると、必ずこれをかけていた。僕の中では「ドゥ・ユア・シング」イコール勝本氏なのだ。たしか、一時期FENの何かの番組の後テーマになっていたような記憶がおぼろげにしている。なんだったか。
そして、一番度肝を抜かれたのが、映画『ワッツタックス』でのアイザックの登場である。この『ワッツタックス』自体がすごいのだが、ここに出てくるアイザック・ヘイズにはやられた。その存在感たるや。恐れ入った。
それからしばらくして、バリー・ホワイトというシンガーが登場した。アイザック・ヘイズ同様低音の魅力で売り出し始めたシンガーである。バリーが登場したとき、まさに第二のアイザック・ヘイズと思ったものだ。バリーは、よりポップな路線に進み、一世を風靡する大スターとなる。アイザックのほうは、所属していたスタックス・レコードが倒産したり、若干不遇の時代をすごすが、自身のレーベルを経て、ポリドールへ移籍、これまた方向性をディスコにしたアルバムなどを出し、ヒットを生む。ポリドール時代の作品のアルバム・ライナーを何枚か書いたが、日本ではぜんぜん売れなかった。
アイザック・ヘイズを次に見るのは映画『エスケープ・フロム・ニューヨーク』だ。これで、俳優アイザック・ヘイズにまたまた驚かされた。実にいい雰囲気、味をだしていた。
アイザックの死去に伴い、音楽業界からすでに多くのお悔やみのコメントが寄せられている。ディオンヌ・ワーウィック、アレサ・フランクリン、リオン・ウエア、オージェイズ、ブルー・マジック、サイーダ・ギャレットなどなど。
ところで30年前にそれほど気に入らなかったアイザック・ヘイズのアルバムだが、20年くらい前だったか、いわゆる「クワイエット・ストーム」のフォーマットが出て、それにともないアイザック・ヘイズのレコードがかかるようになり、けっこういいではないかと思い始めるようになった。聴く側、僕の好みも変わったということだろう。今、ちょうどこの原稿を書きながら聴いているのはアルバム『トゥ・ビー・コンティニュード』(1971年)だ。ここにも、「ルック・オブ・ラヴ」11分12秒、「アイクス・ムード~ユーヴ・ロスト・ザット・ラヴィン・フィーリン」15分30秒などの長尺ムード・ソウルが入っている。しかし、なんでここまで長い曲をレコーディングしたのだろう。しかもリッチなオーケストラがついている。
今回の死去に伴いいろいろと記事を読んだが、彼がガーナに学校を建設するために尽力したとか、昔からそうした慈善事業的なことに興味を持っていたということがわかった。
アイザック・ヘイズの音楽は、『To Be Continued』。ご冥福をお祈りしたい。
■ トゥ・ビー・コンティニュード
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005F295/soulsearchiho-22/ref=nosim/
■デイヴィッド・ネイサンのソウルミュージック・ホームページ
アイザック・ヘイズ・トリビュート・ページ
http://www.soulmusic.com/isaachayes.html
ENT>OBITUARY>Hayes, Isaac (August 20, 1942 – August 10, 2008, 65)
カテゴリー: ブログ パーマリンク