⊿「エイス・オブ・スペーズ」の真実~O.V.ライトとメルヴィン・カーター

⊿The Truth Of “Ace Of Spades”

【「エイス・オブ・スペーズ」の真実~O.V.ライトとメルヴィン・カーター】
狢(むじな)。
昨日(2008年7月20日日曜)、東京FM系列で全国ネットされている山下達郎さんのオールディーズ専門番組『サンデイ・ソング・ブック』(略して『サンソン』=毎週日曜日午後2時~)を聴いていると、なんとR&Bシンガー、メルヴィン・カーターの「エイス・オブ・スペーズ」が解説付きでかかった。
達郎さんの解説を聞いていて、その昔、ソウル・ミュージック評論家の大御所、鈴木啓志(すずき・ひろし)さんがその話を書いていたことを思い出した。
このところ、『サンソン』はリクエストを中心に選曲されているが、この曲が選ばれたのもリスナーのリクエストから。これには複雑な経緯がある。
昨年12月、やはりおなじくディープ・ソウル・シンガー、O.V.ライトのボックスセット(5枚組み=Pヴァインから13000円)が発売され、そこにこのメルヴィン・カーター・ヴァージョンの「エイス…」が収録されている。O.V.のボックスが発売されるのは2度目なのだが、どうやらリスナーの方は、前回リリースのボックスはお持ちだが、今回のボックスは持っていないらしい。このメルヴィンのヴァージョンは、前回のボックスに収録されていなかった。そこで、これ1曲のために、13000円を払い買いなおすのはちょっと厳しいので、番組にリクエストを送ってきたのだ。
では、なぜ、O.V.ライトのアルバム集にこのメルヴィン・カーターなるシンガーの「エイス・オブ・スペーズ」が入っているのか。これがおもしろい。その経緯は2000年3月に発売された鈴木啓志著『ソウル・シティー・USA~無冠のソウル・スター列伝』(リトル・モア社から発売)、さらに今回の詳細なライナーノーツに書かれている。
「エイス・オブ・スペーズ」は、O.V.ライトの有名なヒット曲。1970年にヒットし、ソウル・チャートで11位を記録。これを収録したアルバム『ニックル・アンド・ア・ネイル・アンド・エイス・オブ・スペーズ(A Nickel & a Nail & Ace of Spades)』が翌年アメリカ・バックビート・レコードから発売された。そして、その日本盤がコロンビアからリリースされたが、そこに入っている「エイス・オブ・スペーズ」(LPではA面3曲目)が、なぜかO.V.のヴァージョンではなかったのだ。(ちなみに僕はそのバックビート盤を持っているが、日本盤は持っていなかった) それが、この曲のもともとの作者であるメルヴィン・カーターのヴァージョンだった。全体的なサウンドはよく似ている。日本用にマスター・テープをコピーするときに、なんらかの理由で間違えてしまったのかもしれない。もちろん、どうしてそれが紛れ込んだのか、本当の理由はわからない。
いずれにせよ、そんな経緯があり、今回のO.V.ライトのボックスには、最初日本盤がでたときに間違って収録されたメルヴィン・カーターのヴァージョンが丁寧にも収録された。詳しい経緯は、鈴木氏のライナーノーツに詳しいが、達郎さんはオンエアーで、「このライナーは力はいってます。久々にライナーを読むために(CDを)買ってもいいと思ったくらいの力作です」と絶賛した。
しかし、なんらかの理由でマスターを間違えてしまったレコード会社もレコード会社だが、その似たような作品の違いに気づき、それをちゃんとリサーチして記事にする鈴木さんもすごい。鈴木さんは1979年にO.V.が来日したときにこの件を尋ね、いろいろな事実を掘り起こした。O.V.は翌1980年11月16日41歳の若さで急死しているので、そのときのインタヴューは結果的には真実へのラストチャンスだったことになる。
ま、そんなことを調べる鈴木さんも、鈴木さん、それを知って達郎さんの番組にリクエストする人もする人、それを受けて解説をつけてかける達郎さんも達郎さん、おまけにそのことをブログに書く僕も、僕。みな同じ穴の狢(むじな)、ですかねえ。楽しいっ。(笑) (狢っていう字はむずかしいなあ)
■ボックスセットの内容(ただし売り切れ)
http://diskunion.net/black/ct/detail/54C070930701
ENT>ARTIST>Wright, O.V.
ENT>ARTIST>Carter, Melvin
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