▲マイケル研究家・郷太観

▲Talk About MJ With Nishidera Gota, MJ-Spirit

【マイケル研究家・郷太観】
研究。
先日ライヴ・パフォーマンスを見たMJ-Spiritのブルートゥリーさんがマイケル・ジャクソン研究家の西寺郷太さん(ポップ・グループ、ノーナ・リーヴスのヴォーカル担当)をぜひ紹介したいというので、一席もうけていただいた。かなりマイケルについては研究しているとはうわさに聞いていたが、実際に会って話してみると、大変なものであった。
5時間近くあっという間にしゃべり倒された。(笑) テーマも多岐にわたったのだが、それらは郷太さんの仮説がひじょうにおもしろく、興味津々だった。そのうちのいくつかは彼が宇多丸さんのラジオ番組に出たときに話したというものだという。
彼は音楽と政治と歴史に興味がある。そこでマイケルの歴史と日本の政治家小沢一郎とを関連付けての仮説は最高におもしろかった。小沢一郎が衆院議員に初当選するのは1969年、奇しくもマイケルがジャクソン5としてモータウンからデビューするのと同年だ。そんなことを発見する郷太さんは、すごい。以降、それぞれの年表を作り、共通点をあぶりだしていく。2人の最大の共通点は周囲に周到な根回しができない点だと彼は指摘する。その結果、周りにいる優秀な人たちがみな徐々に離れていってしまう、という。な~るほど。
またマイケルとクイーンとの関係、マイケルとプロデューサー、クインシー・ジョーンズとの関係、『オフ・ザ・ウォール』、『スリラー』、『バッド』とアルバムを制作していく過程でのマイケルとクインシーとの関係の推察なども妙に説得力がある。クイーンの「アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト」はもともとマイケルに提供されたものだった。それが没になってのクイーンとの関係がどうなったか。あるいは、「ウィ・アー・ザ・ワールド」におけるマイケルの位置、そこから発展し、「ウィ・アー・ザ・ワールド」に参加したアーティストたちが、その後、一発程度大ヒットを飛ばすものの、ほとんどみな人気が下降していく、という指摘。おもしろい。
マイケルのアルバム『バッド』のジャケットとクインシーのアルバム『バック・オン・ザ・ブロック』のジャケットは、横に並べるとデザインがシンメトリーだ、という発見。これも気づかなかった。
さまざまな事実、ひとつひとつはささやかな事実を、徹底して俯瞰(ふかん)して見つめることによって浮かび上がる壮大な真実。僕もライナーノーツや記事を書くときに、徹底して主観を排し事実を積み重ねていくが、彼も同様のことをここ20年近くやってきた。
彼がマイケル好きになったきっかけが、ジャクソンズのアルバム『ヴィクトリー』(1984年)の僕が書いたライナーノーツだという。その後、僕が翻訳したマイケルの年表ブック『マイケル・ジャクソン観察日誌』(小学館)は、それこそ穴があくほど読んだそうだ。マイケルをここまで研究するようになったきっかけが僕のライナーノーツだと言われて、驚いた。
しかし、あの事実だけの資料ブック『マイケル・ジャクソン観察日誌』やさまざまな資料から、ここまでの仮説をイマジネーションたくましく広げられるというのは本当にすごい。いちいち説得力がある。そこに感銘を受けた。
彼は言う。「司馬遼太郎は、坂本龍馬には会ってないんですよ。でも、彼が書く坂本龍馬は、司馬の視点で書かれていて、それはまさに『司馬観』でできている。だから、僕も『郷太観』でマイケルを見つめています」
これらの仮説はまとめて、将来一冊の本にしたいという。これはまちがいなくおもしろい読み物になる。
ENT>ARTIST>Jackson, Michael
ENT>ARTIST>Nishidera Gota
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