◆The Movie “Rachmaninoff” or “Lilacs”
【映画『ラフマニノフ~ある愛の調べ』】
激動。
ロシアの天才ピアニスト兼作曲家セルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943)の数奇な生涯を描いたロシア映画『ラフマニノフ~ある愛の調べ』(2008年4月19日から東急文化村などで公開)の試写を見た。
1873年にロシアの裕福な家庭に生まれたラフマニノフは、幼い頃から天才ピアニストとして騒がれた。彼の類まれな才能を見てとったズヴェレフ教授は、3つの約束をできるなら、ピアノを教えるとラフマニノフに言う。「一、自慢をするな、一、嘘をつくな、一、裏切るな」 幼いラフマニノフはその約束を結ぶ。しかし、彼はただ楽譜に書かれた作品を演奏するだけではものたりなくなり、まもなく、自らの作品を作曲し始める。だが、先生は、「作曲なんかするな、とにかくピアノを弾くことに専念しろ」と教える。
いくつかの恋も経験し、それが彼の作品作りにも影響を与えるが、予期せぬ出来事が彼の人生のレールを狂わせる。1917年に起こったロシア革命だ。それまでの自由主義の国が突然、社会主義の国になってしまったのだ。彼は、ピアノの才能を認められて、特別に出国許可証を手に入れるが、出国の混乱の中で…。
映画自体は、時制が若干行ったり来たりするので、頭の整理が必要になる。映画を見るときには、彼の年表をざっと頭にいれてから見るとわかりやすいと思うが、全部の年表を覚えるのは大変なので、この年号だけは覚えておこう。「レーニン、革命成功で得意な(とく・い・な=19・1・7)顔」 1917年のロシア革命。試験に出ます。(ワタクシ、元祖年表男とも呼ばれます)
映画は概ねラフマニノフの恋、演奏家、作曲家としての苦悩、あの有名曲はどのように誕生したかなどを激動の時代とともに描いている。僕は個人的には、ズヴェレフ先生とラフマニノフの確執部分が大変興味深く感銘を受けた。どちらが正しくて、どちらが間違っている、ということが言えないテーマはやはりおもしろい。
ピアノが好きな人にはお勧めの映画だ。これを見終わった後、ピアニストたちはどう感じるのだろうか、その感想が聴きたいと思った。そこで深町純さんと妹尾武さんに本作のことを少し話してみた。すると、お2人ともラフマニノフはお好きのようで、映画はぜひ見たい、とのこと。そして、お2人とも奇しくもラフマニノフは「ピアニストとしてより、作曲家として大変興味がある」と言明された。
それを受けて、僕も思わず、「ネタばれになりますが、師匠から作曲なんかにうつつをぬかさないで、ピアノを弾くことに専念しろ、と言われるシーンがあるんですよ」と伝えると、妹尾さんは思わず「おおっ、それは早く見たい」と興奮気味に興味津々。そんな言葉を師匠から言われた生徒の心模様を、作曲もするピアニストたちはどう思うのか、どう感じるのか、ぜひ知りたい。
映画を見終えた後、一緒に見た仲間と「あ~だ、こ~だ」といろいろ話をしたくなるような映画だ。なお、映画の原題「Lilacs」は白い花の名前。ラフマニノフのコンサートに必ず、誰かから送られてくる花を指している。
そして、今日3月28日は、彼の命日(1943年)である。ひょっとして彼の墓前には今日もたくさんのライラックの花がたむけられているかもしれない。
■映画オフィシャル・ウェッブ
http://rachmaninoff.gyao.jp/
2008年4月19日(土)から東急文化村、銀座テアトルシネマなどでロードショー公開。
+++++
(以下の文は、若干ネタばれになります。映画をごらんになった後にお読みください)
出生、天才の誕生、師匠との出会い、成長、師匠との衝突、いくつかの恋、ロシア国内でのコンサートの成功、ロシア役人との対立、ロシア革命、からくも出国、アメリカへの亡命、アメリカ・西側での成功、作曲ができないことへの苦悩、それを支える家族、故郷への望郷の念、天才であるが故の苦悩、カーネギー・ホールでの拍手喝采。シンプルにこれらを順番に描くだけで感動できるはずだ。クリント・イーストウッドが監督したら、おそらく時系列に沿ったものにしたような気がしてならない。そこには語られるべきすばらしい物語がある。
妻となる人物、政府の女将校、最初に好きになる女性、スタインウェイ、ズヴェレフなど登場人物も適材適所。「芸術家」と付き合う女性たちの人生も見所だ。ピアニストの視点とは違った女性からの視点で見ても興味深いかもしれない。
ENT>MOVIE>Lilacs
激動。
ロシアの天才ピアニスト兼作曲家セルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943)の数奇な生涯を描いたロシア映画『ラフマニノフ~ある愛の調べ』(2008年4月19日から東急文化村などで公開)の試写を見た。
1873年にロシアの裕福な家庭に生まれたラフマニノフは、幼い頃から天才ピアニストとして騒がれた。彼の類まれな才能を見てとったズヴェレフ教授は、3つの約束をできるなら、ピアノを教えるとラフマニノフに言う。「一、自慢をするな、一、嘘をつくな、一、裏切るな」 幼いラフマニノフはその約束を結ぶ。しかし、彼はただ楽譜に書かれた作品を演奏するだけではものたりなくなり、まもなく、自らの作品を作曲し始める。だが、先生は、「作曲なんかするな、とにかくピアノを弾くことに専念しろ」と教える。
いくつかの恋も経験し、それが彼の作品作りにも影響を与えるが、予期せぬ出来事が彼の人生のレールを狂わせる。1917年に起こったロシア革命だ。それまでの自由主義の国が突然、社会主義の国になってしまったのだ。彼は、ピアノの才能を認められて、特別に出国許可証を手に入れるが、出国の混乱の中で…。
映画自体は、時制が若干行ったり来たりするので、頭の整理が必要になる。映画を見るときには、彼の年表をざっと頭にいれてから見るとわかりやすいと思うが、全部の年表を覚えるのは大変なので、この年号だけは覚えておこう。「レーニン、革命成功で得意な(とく・い・な=19・1・7)顔」 1917年のロシア革命。試験に出ます。(ワタクシ、元祖年表男とも呼ばれます)
映画は概ねラフマニノフの恋、演奏家、作曲家としての苦悩、あの有名曲はどのように誕生したかなどを激動の時代とともに描いている。僕は個人的には、ズヴェレフ先生とラフマニノフの確執部分が大変興味深く感銘を受けた。どちらが正しくて、どちらが間違っている、ということが言えないテーマはやはりおもしろい。
ピアノが好きな人にはお勧めの映画だ。これを見終わった後、ピアニストたちはどう感じるのだろうか、その感想が聴きたいと思った。そこで深町純さんと妹尾武さんに本作のことを少し話してみた。すると、お2人ともラフマニノフはお好きのようで、映画はぜひ見たい、とのこと。そして、お2人とも奇しくもラフマニノフは「ピアニストとしてより、作曲家として大変興味がある」と言明された。
それを受けて、僕も思わず、「ネタばれになりますが、師匠から作曲なんかにうつつをぬかさないで、ピアノを弾くことに専念しろ、と言われるシーンがあるんですよ」と伝えると、妹尾さんは思わず「おおっ、それは早く見たい」と興奮気味に興味津々。そんな言葉を師匠から言われた生徒の心模様を、作曲もするピアニストたちはどう思うのか、どう感じるのか、ぜひ知りたい。
映画を見終えた後、一緒に見た仲間と「あ~だ、こ~だ」といろいろ話をしたくなるような映画だ。なお、映画の原題「Lilacs」は白い花の名前。ラフマニノフのコンサートに必ず、誰かから送られてくる花を指している。
そして、今日3月28日は、彼の命日(1943年)である。ひょっとして彼の墓前には今日もたくさんのライラックの花がたむけられているかもしれない。
■映画オフィシャル・ウェッブ
http://rachmaninoff.gyao.jp/
2008年4月19日(土)から東急文化村、銀座テアトルシネマなどでロードショー公開。
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(以下の文は、若干ネタばれになります。映画をごらんになった後にお読みください)
出生、天才の誕生、師匠との出会い、成長、師匠との衝突、いくつかの恋、ロシア国内でのコンサートの成功、ロシア役人との対立、ロシア革命、からくも出国、アメリカへの亡命、アメリカ・西側での成功、作曲ができないことへの苦悩、それを支える家族、故郷への望郷の念、天才であるが故の苦悩、カーネギー・ホールでの拍手喝采。シンプルにこれらを順番に描くだけで感動できるはずだ。クリント・イーストウッドが監督したら、おそらく時系列に沿ったものにしたような気がしてならない。そこには語られるべきすばらしい物語がある。
妻となる人物、政府の女将校、最初に好きになる女性、スタインウェイ、ズヴェレフなど登場人物も適材適所。「芸術家」と付き合う女性たちの人生も見所だ。ピアニストの視点とは違った女性からの視点で見ても興味深いかもしれない。
ENT>MOVIE>Lilacs