☆ピーボ、いろいろ秘密を語る

Peabo Talks About His Secrets Of…
【ピーボ、いろいろ秘密を語る】
秘密。
ライヴ後、ピーボ・ブライソンと話す機会があった。12回のセットをやったということで、かなり解放感でもあったのだろう。ピーボは雄弁だった。
松尾さんが「かつては音楽ライターで、DJであなたにインタヴューしたこともありましたが、今は音楽プロデューサーでK君をプロデュースしています」と自己紹介すると、ピーボが「おおおっ、彼は歌がじつにうまいね。とても才能がある」といきなり賞賛。「彼は自分で曲も書くのかな」「書きますよ」
「それにしても、1週間、おつかれさま。声、強いですねえ。でも、初日も見たんですが、初日と比べると、声が弱くなってるような気がしました」 「ああ、6日間、1日2ショーは大変なんだよ。だいぶ、声も(初日より)弱くなったよ(笑)」 「あなたはタバコを吸いますね。喉に悪くないんですか」 「いや、僕のはこれなんだ。ナチュラル・タバコ。成分がみんな自然のものを吸ってるんだ」と言ってそのタバコの箱を見せてくれた。「これが喉をよく保つ秘密さ(笑)」

【「これで、喉を鍛えてます」(冗談) 左から松尾氏、そのナチュラル・タバコ、ピーボ、吉岡】
松尾さん、以前インタヴューしたときの話をして、合間を見て、どちらからともなく、またまた「何で『フィール・ザ・ファイアー』やらないんですか」としつこく尋ねる。(笑) 「いやあ、それって(日本で)人気あるのかい?」 「ありますよ」と2人で声を揃える。松尾さん。「初期の頃のヒット曲をメドレーでもいいからやったらどうですか」 「ああ、そういえばメドレーでやってたことあるよ。『レット・ザ・フィーリング・ショウ』『アイム・ソー・イントゥ・ユー』『リーチン・フォー・ザ・スカイ』『アイ・アム・ラヴ』なんかをやって、そして『フィール・ザ・ファイアー』にもってくんだ」 「それやってくださいよ」と2人でハモる。僕。「スティングの2曲は、多すぎませんか」「そうか、確かにな。1曲でもいいかもしれないな。スティングの曲は個人的にすごく気に入ってるんだ。」 「『エヴリ・ブレス・・・』なんかは将来、自分でレコーディングしますか?」 「うん、したいね」 松尾さん。「あの頃の曲だと、ボビー・コールドウェルの『ホワット・ユー・ウント・ドゥー・フォー・ラヴ』なんてどうですか」 「おおっ、大好きだよ!」と言って、なんと、いきなりピーボ、その曲をうたい始める!! 松尾氏やんやの喝采をいれ、歌を終わらせないようにたくましい努力。途中、「ぱっ、ぱっ」っとトランペットの音まで入れ込んで。ピーボのりのり。1分くらいは歌ってくれたかなあ。これはラッキーだった。(笑) 「1曲目(のスティング)を落として、『フィール・ザ・ファイアー』かこの『ホワット・ユー・・・』あたりに差し替えようかな。次に来日するときには、そうするよ」
「ところで、あなたは本当によく日本語しゃべりますね。誰か先生でもいるんですか。それともブルーノートのスタッフにでも教わるんですか」「いや、僕は自分で勉強してるんだよ。その秘密はこの本だよ」と言って奥から一冊の本を持ってくる。『ジャパニーズ・フォー・ダミーズ(サルでもわかる日本語)』。「これで、勉強してるんだ。これ、文法的なこと、日本語の構造とか、わかりやすく解説されてる。もっとも、僕が最初に手に入れた日本語の本は、『ジャパニーズ・フォー・セヴンデイズ(7日でしゃべれる日本語)』。でも、7日でぜんぜんしゃべれなかった。(笑) この『ダミーズ』の本は、いろいろあるんだよ。『文法・フォー・ダミーズ』とか、『ファイナンス・フォー・ダミーズ』とか。言葉では、僕は『イタリア語』と『ラテン語』『フランス語』のダミーズを持ってるよ。CDついてるから、日本語の発音もこれで覚えるんだ」 これが、ピーボの日本語の秘密だ!

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【「ワタシハコレデ日本語、オボエマシタ」】

ほ~~~っ、これは恐れ入った。海外からのアーティストは、周囲のスタッフや通訳に自分が言いたいことを聞き、それをローマ字で書いて覚えたりする。もちろん、ピーボもそれもするだろうが、この本があれば、自分で作文できるだろう。「グラミーをカクトクしました」もでてくるわけだ。
「ほら、日本であちこちに1人で行くとき、まわりの人とコミュニケーション、取れたほうが楽しいだろう。それに地下鉄なんて乗っても、日本語がわからないと迷ってしまう」 「ええっ、地下鉄、乗るの? ピーボさん」 「あ~~、乗る、乗る」 「1人で?」 「オー・イエス」 思わず、「スイカ持ってますか」と尋ねそうになったが、「スイカ」の説明を英語でするのが、ちょっと大変そうだったので、急遽やめた。だが、これだけ語学に熱心であれば、電子辞書をお勧めしたい。「電子辞書は持ってますか?」「いやあ、持ってないなあ」「次は電子辞書ですね。これは、とっても便利ですよ」
「ところで、あなたが今日も歌ったアル・ジャロウの『ノット・ライク・ディス』、素晴らしいですね。なんでまた、この曲を?」 「あの曲はものすごく難しいんだよ。コード、バックのバンドとのハーモニー、テンポ。シンガーとしてものすごくチャレンジなんだ。それほど多くのシンガーはあの歌はできない。僕はあれが歌えるということで、他の普通のシンガーとは違うんだ、ということが示せると思うんだよね」 他のシンガーが歌えない曲を歌えて個性あるシンガーということだ。なるほど、あれは、シンガーとしてのプライドが凝縮されているのだ。それは歌うときに力も入るというもの。
そして、「ミッシング・ユー」。「これは、あなたにとってもスペシャルな曲ですが、初日、あなたが歌ったとき、目が赤くなっていましたね。今日はどうでした?」 「初日は、我を失った。(I lost it) 今日は、(歌っていたとき)姉や母の顔が浮かんできた。でも、今日は大丈夫だったよ。そうそう、(作者の)レデシーには会ったことあるよ」 ピーボは姉、自分、弟、妹の4人兄弟。2歳年上の姉をしばらく前に失った。「姉はまだ若かったんだよ。僕より2歳年上なだけでね、母親は85歳くらいだったかな。2人とも素晴らしい女性だった。姉の子供、2人は僕がけっこう面倒を見てるんだ。僕はアンクル・ピーボだな(笑)」 「ミッシング・ユー」を歌うとき、ピーボは今は亡き母と姉を思い浮かべる。これから何十回、何百回と歌っていく作品だ。将来もときには感極まることもあるだろう。これが、「ミッシング・ユー」を歌うときのピーボの涙の秘密だ。
楽屋に行ったのが1時前。出てきたら、1時半近かった。20分以上いたのかな。この間、われわれはずっと立ち話である。ほんとにみんな立ち話が好きである。

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