●Peabo Bryson Sung “Missing You” For His Mother And His Sister
【ピーボ、母と姉のために捧げる】
鏡。
このところ毎年のようにやってくるソウル界の貴公子、ピーボ・ブライソン。タイミングよく8年ぶりの最新作『ミッシング・ユー』をひっさげての約1年ぶりの来日。新作がなかなかいい出来だったので、そこからの曲も期待して会場に足を運んだ。
バンドは、キーボード3(うち1人はベース兼任)、ドラムス、ギター、パーカッション(サックスも)、コーラス2の計8人。客層は比較的年齢層高しという感じだが、20代から30代の若い女性の姿も。
オープニング、いつもの通り、観客全員(この日は200人弱か)と握手してからステージにあがる。本当にピーボの「お客様は神様です」的姿勢には頭が下がる。そして、歌のうまさは折り紙付き。100万の言葉を持ってしても、彼の歌のうまさは表現しきれない。
この日まず驚いたのは、3曲目に最初の新曲「カウント・オン・ミー」を歌ったところ。もちろん僕も生では初めて聴くが、その前に、日本でもレグノのタイヤのCMで使われおなじみの「愛のセレブレーション」を歌ってから、これにつないだ。
おそらく100万回は歌ってきたであろう「愛のセレブレーション」とまだせいぜい100回程度しか歌ってきていないであろう「カウント・オン・ミー」の歌唱クオリティーがまったく変わらないのだ。どんな新曲でも人前で歌うときには、完璧に完成させている。時に歌いこんだ曲とそうでない曲の差がわかってしまうシンガーもいる。僕はこの新曲とスタンダードの完成度の違いのなさに感銘した。リアル・プロだ。「カウント・オン・ミー」は彼がタイトル曲に選ぶだけあって、実にすばらしい楽曲。ピーボの代表曲のひとつにもなりそうな気配がする。
おもしろい選曲だと思ったのが、6曲目で歌われた「ノット・ライク・ディス」。ほとんどア・カペラ状態で、客席に下りて、近くの女性の肩を抱きながら歌い上げた。浪々と歌うこれも胸に響く曲だった。最初わからなかったが、タイトルから調べたら、アル・ジャロウの1983年のアルバム『ジャロウ』に収録されている1曲だった。
そして、もっとも感動的な瞬間が訪れたのは、ピーボが最新作のアルバム・タイトル曲「ミッシング・ユー」を歌ったとき。彼はイントロにのせて、こんなことを言った。
「これはあらゆる意味で、スペシャルな歌。誰もが誰かや何かを懐かしむ、恋しいと思う(ミッシングする)ものです。あなたも僕のことを恋しいと思って欲しい、そして僕もあなたたちを恋しいと思う。東京のみなさん、愛してます!(ここは日本語) 僕はこの曲を、母と姉に捧げます(for my mother, and my sister)」
「暖かい日々も寒い冬も過ぎ去っていった。君を最後に抱きしめたのはそんな寒い季節だった。今でも君が恋しい。君が恋しい。僕の思い出の中で、君は神聖なるもの。君の微笑が、君の笑い声が、いまだに僕の胸を締め付ける。今でも君を思い出す。君が恋しいんだ」(「ミッシング・ユー」一部)
後半、涙の粒こそ頬を伝わらなかったが、ピーボの目は赤くなっていた。きっと、天国の母と姉を思い浮かべてしまったのだろう。曲調とピーボの歌とその赤くなった目に胸が熱くなった。
母マーティー・ブライソンは4人の子供をもうけ、子育てのためにすべてをなげうった。2歳年上の姉アグネス・ブライソン・ウィリアムスは2004年に55歳で亡くなった。アルバム『ミッシング・ユー』はこの2人に捧げられている。
だが、もっと感銘を受けたのが、きっと心では号泣しているにもかかわらず、歌、歌唱そのものはまったくぶれることなく、完全にしっかりと歌っていたことだ。普通、ここまで感情移入したら、声が震えたり、音程をはずしたり、最悪歌えなくなってしまうだろう。日本のアイドルが泣きながら、歌えなくなってしまうのが思い出される。しかし、ピーボは決してぶれない。目をつぶって彼を見ずに聴いていたら、ちゃんとしっかり歌っていると思うにちがいない。ここでもプロフェッショナルを感じた。
次の曲「ホール・ニュー・ワールド」でデュエットの相手をするキム・ケイジも、ステージに上がったとき、もらい泣きをしたのか顔がくしゃくしゃになっていたように見えた。この曲も、ピーボの代表曲になるに違いない。
ピーボは、曲の後半になって、ロードマネージャーから手渡された12本のバラを観客(女性のみ)に配り始める。もらった幸運な12人は大喜びだ。MCのあちこちで日本語をはさみ、90度のお辞儀を深々とし、バラを配り、そして、最高級にうまい歌を聴かせ感動させるピーボ・ブライソン。シンガーの鏡である。
(ピーボの項、続くかも)
■ ライヴは1月30日(水曜)まで毎日。午後7時と9時半。日曜は6時半と9時。ブルーノート東京。
http://www.bluenote.co.jp/jp/index.html
■ 過去関連記事
February 11, 2006
Norman Brown & Peabo Bryson Live
http://blog.soulsearchin.com/archives/000823.html
2年前のギタリスト、ノーマン・ブラウンとのショウ。
September 14, 2005
Peabo Threw Roses For Ladies Only
http://blog.soulsearchin.com/archives/000516.html
3年ぶりのライヴ。バラを配るピーボ。
2003/10/01 (Wed)
“I’m Your Servant” Peabo Bryson Shook Hands With Every Audiences
https://www.soulsearchin.com/entertainment/music/live/diary20031001.html
私はあなたの僕(しもべ)です、とピーボは言う。
January 21, 2008
Peabo Bryson Will Be Coming To Japan With New Album
http://blog.soulsearchin.com/archives/002270.html
■ 最新盤 『ミッシング・ユー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000XAMCXA/soulsearchiho-22/ref=nosim/
■ アル・ジャロウ 『ジャロウ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000564JF/soulsearchiho-22/ref=nosim/
■ メンバー
Peabo Bryson (vo) ピーボ・ブライソン(ヴォーカル)
Diana Dentino(key) ダイアナ・デンティーノ(キーボード)
Dave Iwataki(key) デイヴ・イワタキ(キーボード)
Michael Hoskin(sax,per) マイケル・ホスキン(サックス、パーカッション)
Derek Scott(g) デレク・スコット(ギター)
Dwight Watkins (music director, b, vo) ドゥワイト・ワトキンス(ミュージック・ディレクター、ベース、ヴォーカル)
Kemmerin Blalark(ds) ケメリン・ブララーク(ドラムス)
Kristie White(back vo) クリスティ・ホワイト(バック・ヴォーカル)
Kim Cage Riley(back vo) キム・ケイジ・ライリー(バック・ヴォーカル)
■Setlist : Peabo Bryson Live At Blue Note Tokyo, January 25, 2008
セットリスト ピーボ・ブライソン
[transcribed by the soul searcher]
Show started 21:42
01. Intro ~ If You Love Somebody Set Them Free (1985-Sting)
02. Tonight I Celebrate My Love (1983-Peabo Bryson & Roberta Flack)
03. Count On Me (2008 – “Missing You”- Peabo Bryson)
04. Every Breath You Take (1983 – Police)
05. King Of Sorrow (2000 – Sade)
06. Not Like This (1983 – Al Jarreau)
07. Can You Stop The Rain (1991 – “Can You Stop The Rain” – Peabo Bryson)
08. Show & Tell (1973-Al Wilson, 1989-Peabo Bryson)
09. Missing You (2008 -“Missing You”)
10. Whole New World (1992-Peabo Bryson & Regina Belle)
Enc. Ain’t Nobody (1983-Rufus, 1999-Peabo Bryson)
show ended 23:02
(2008年1月25日金曜、ブルーノート東京=ピーボ・ブライソン・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Bryson, Peabo
2008-8
鏡。
このところ毎年のようにやってくるソウル界の貴公子、ピーボ・ブライソン。タイミングよく8年ぶりの最新作『ミッシング・ユー』をひっさげての約1年ぶりの来日。新作がなかなかいい出来だったので、そこからの曲も期待して会場に足を運んだ。
バンドは、キーボード3(うち1人はベース兼任)、ドラムス、ギター、パーカッション(サックスも)、コーラス2の計8人。客層は比較的年齢層高しという感じだが、20代から30代の若い女性の姿も。
オープニング、いつもの通り、観客全員(この日は200人弱か)と握手してからステージにあがる。本当にピーボの「お客様は神様です」的姿勢には頭が下がる。そして、歌のうまさは折り紙付き。100万の言葉を持ってしても、彼の歌のうまさは表現しきれない。
この日まず驚いたのは、3曲目に最初の新曲「カウント・オン・ミー」を歌ったところ。もちろん僕も生では初めて聴くが、その前に、日本でもレグノのタイヤのCMで使われおなじみの「愛のセレブレーション」を歌ってから、これにつないだ。
おそらく100万回は歌ってきたであろう「愛のセレブレーション」とまだせいぜい100回程度しか歌ってきていないであろう「カウント・オン・ミー」の歌唱クオリティーがまったく変わらないのだ。どんな新曲でも人前で歌うときには、完璧に完成させている。時に歌いこんだ曲とそうでない曲の差がわかってしまうシンガーもいる。僕はこの新曲とスタンダードの完成度の違いのなさに感銘した。リアル・プロだ。「カウント・オン・ミー」は彼がタイトル曲に選ぶだけあって、実にすばらしい楽曲。ピーボの代表曲のひとつにもなりそうな気配がする。
おもしろい選曲だと思ったのが、6曲目で歌われた「ノット・ライク・ディス」。ほとんどア・カペラ状態で、客席に下りて、近くの女性の肩を抱きながら歌い上げた。浪々と歌うこれも胸に響く曲だった。最初わからなかったが、タイトルから調べたら、アル・ジャロウの1983年のアルバム『ジャロウ』に収録されている1曲だった。
そして、もっとも感動的な瞬間が訪れたのは、ピーボが最新作のアルバム・タイトル曲「ミッシング・ユー」を歌ったとき。彼はイントロにのせて、こんなことを言った。
「これはあらゆる意味で、スペシャルな歌。誰もが誰かや何かを懐かしむ、恋しいと思う(ミッシングする)ものです。あなたも僕のことを恋しいと思って欲しい、そして僕もあなたたちを恋しいと思う。東京のみなさん、愛してます!(ここは日本語) 僕はこの曲を、母と姉に捧げます(for my mother, and my sister)」
「暖かい日々も寒い冬も過ぎ去っていった。君を最後に抱きしめたのはそんな寒い季節だった。今でも君が恋しい。君が恋しい。僕の思い出の中で、君は神聖なるもの。君の微笑が、君の笑い声が、いまだに僕の胸を締め付ける。今でも君を思い出す。君が恋しいんだ」(「ミッシング・ユー」一部)
後半、涙の粒こそ頬を伝わらなかったが、ピーボの目は赤くなっていた。きっと、天国の母と姉を思い浮かべてしまったのだろう。曲調とピーボの歌とその赤くなった目に胸が熱くなった。
母マーティー・ブライソンは4人の子供をもうけ、子育てのためにすべてをなげうった。2歳年上の姉アグネス・ブライソン・ウィリアムスは2004年に55歳で亡くなった。アルバム『ミッシング・ユー』はこの2人に捧げられている。
だが、もっと感銘を受けたのが、きっと心では号泣しているにもかかわらず、歌、歌唱そのものはまったくぶれることなく、完全にしっかりと歌っていたことだ。普通、ここまで感情移入したら、声が震えたり、音程をはずしたり、最悪歌えなくなってしまうだろう。日本のアイドルが泣きながら、歌えなくなってしまうのが思い出される。しかし、ピーボは決してぶれない。目をつぶって彼を見ずに聴いていたら、ちゃんとしっかり歌っていると思うにちがいない。ここでもプロフェッショナルを感じた。
次の曲「ホール・ニュー・ワールド」でデュエットの相手をするキム・ケイジも、ステージに上がったとき、もらい泣きをしたのか顔がくしゃくしゃになっていたように見えた。この曲も、ピーボの代表曲になるに違いない。
ピーボは、曲の後半になって、ロードマネージャーから手渡された12本のバラを観客(女性のみ)に配り始める。もらった幸運な12人は大喜びだ。MCのあちこちで日本語をはさみ、90度のお辞儀を深々とし、バラを配り、そして、最高級にうまい歌を聴かせ感動させるピーボ・ブライソン。シンガーの鏡である。
(ピーボの項、続くかも)
■ ライヴは1月30日(水曜)まで毎日。午後7時と9時半。日曜は6時半と9時。ブルーノート東京。
http://www.bluenote.co.jp/jp/index.html
■ 過去関連記事
February 11, 2006
Norman Brown & Peabo Bryson Live
http://blog.soulsearchin.com/archives/000823.html
2年前のギタリスト、ノーマン・ブラウンとのショウ。
September 14, 2005
Peabo Threw Roses For Ladies Only
http://blog.soulsearchin.com/archives/000516.html
3年ぶりのライヴ。バラを配るピーボ。
2003/10/01 (Wed)
“I’m Your Servant” Peabo Bryson Shook Hands With Every Audiences
https://www.soulsearchin.com/entertainment/music/live/diary20031001.html
私はあなたの僕(しもべ)です、とピーボは言う。
January 21, 2008
Peabo Bryson Will Be Coming To Japan With New Album
http://blog.soulsearchin.com/archives/002270.html
■ 最新盤 『ミッシング・ユー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000XAMCXA/soulsearchiho-22/ref=nosim/
■ アル・ジャロウ 『ジャロウ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000564JF/soulsearchiho-22/ref=nosim/
■ メンバー
Peabo Bryson (vo) ピーボ・ブライソン(ヴォーカル)
Diana Dentino(key) ダイアナ・デンティーノ(キーボード)
Dave Iwataki(key) デイヴ・イワタキ(キーボード)
Michael Hoskin(sax,per) マイケル・ホスキン(サックス、パーカッション)
Derek Scott(g) デレク・スコット(ギター)
Dwight Watkins (music director, b, vo) ドゥワイト・ワトキンス(ミュージック・ディレクター、ベース、ヴォーカル)
Kemmerin Blalark(ds) ケメリン・ブララーク(ドラムス)
Kristie White(back vo) クリスティ・ホワイト(バック・ヴォーカル)
Kim Cage Riley(back vo) キム・ケイジ・ライリー(バック・ヴォーカル)
■Setlist : Peabo Bryson Live At Blue Note Tokyo, January 25, 2008
セットリスト ピーボ・ブライソン
[transcribed by the soul searcher]
Show started 21:42
01. Intro ~ If You Love Somebody Set Them Free (1985-Sting)
02. Tonight I Celebrate My Love (1983-Peabo Bryson & Roberta Flack)
03. Count On Me (2008 – “Missing You”- Peabo Bryson)
04. Every Breath You Take (1983 – Police)
05. King Of Sorrow (2000 – Sade)
06. Not Like This (1983 – Al Jarreau)
07. Can You Stop The Rain (1991 – “Can You Stop The Rain” – Peabo Bryson)
08. Show & Tell (1973-Al Wilson, 1989-Peabo Bryson)
09. Missing You (2008 -“Missing You”)
10. Whole New World (1992-Peabo Bryson & Regina Belle)
Enc. Ain’t Nobody (1983-Rufus, 1999-Peabo Bryson)
show ended 23:02
(2008年1月25日金曜、ブルーノート東京=ピーボ・ブライソン・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Bryson, Peabo
2008-8