ゲロッパ。
ついに完成です。井筒和幸監督の新作映画『ゲロッパ』、見ました。(1月23日付け日記・参照) 思った通り、楽しかった。
収監を数日後に控えた組長、羽原大介(西田敏行)にはやり残したことがふたつある。ひとつは25年前に生き別れてしまった娘かおり(常盤貴子)と再会すること、そしてもうひとつは、大好きなジェームス・ブラウンの名古屋公演を見ること。組を解散すると意を決した羽原組長。その一番舎弟、金山(岸部一徳)はある決意を固め、子分(山本太郎)たちに命令を下す。それは「いますぐジェームス・ブラウンをさらいに行ってこい!」という命令だった。
だいたいジェームス・ブラウンをさらってこい、という命令が奇想天外で面白い。全編ダンスとファンクが炸裂する112分。ジェームス・ブラウンの「セックス・マシン」、「マザー・ポップコーン」や、エモーションズの「ベスト・オブ・マイ・ラヴ」、シェリル・リンの「ガット・トゥ・ビー・リアル」などがかかり、ソウルファンにとってはたまらない選曲です。
ストーリー展開も起承転結あり、思わぬどんでん返しありで楽しい。また、細かいネタで次々と笑わせるところはさすが。よくできてます。組長が、紆余曲折あってステージで「セックス・マシン」を歌いだすシーンには、ちょっと胸がいっぱいになりました。娘との再会とジェームス・ブラウンと会うことが、それぞれの運命の糸が徐々に引き寄せ合っていくように、重なります。組長(西田)と舎弟(岸部)がともにジェームス・ブラウン好きという設定が、そこだけでもおもしろい。
本当は、本編上映前に舞台挨拶をする予定だったという井筒監督は、ちょっと緊張していたためか、それを上映後にしました。普段は他人の作品をめった切りにしている監督が、いささか緊張気味に、そして、あがっていたところがなかなか印象的でした。「これから8月までは、営業に徹しますわ。どんどん口コミで広げていってほしいです」 と、告知、宣伝に徹していく気配です。
しいて言えば、組長がなんでこれほどジェームス・ブラウンが好きなのか、その好きになった理由、あるいはエピソードなどがはさまれていたら、もっとストーリーに幅と説得力が出たのではないかと思いました。あとは、もう少しテンポを早くして、尺を10分くらい短くしてもよかったのではないかと感じました。かなりいいテンポの映画ですが、JB並みのファンキーなリズムで映画のストーリーが流れるともっともっと密度が濃くなります。つまり使っている音楽はソウルなんですが、映画のリズムは超ドメスティックなのです。でも、十分楽しめるエンタテインメント作品です。これは、笑えます。
井筒監督は言います。「エンタテインメントのエッセンスが、つまるところ『ゲロッパ』だと思うんですよ。つまり、ゲットアップ、起きろ、奮い立て、と見る者すべてを励ますようなもの。それがエンタテインメント、と」
いやあ、それにしてもトータス松本のカメオ出演には驚いたなあ。そして子役の琴音ちゃん、かわいく、うまかった。将来楽しみ。
さて、これをジェームス・ブラウンさまにお見せしたい。そして、どのような感想をもたれるか、御大のお言葉を拝聴したい。
(2003年8月から公開。配給・シネカノン)
(ジェームス・ブラウン、10月に来日決定。10月2日・日本武道館ほか計5回公演。問い合わせ、JECインターナショナル=03-5474-5944)
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