■サム・ムーア・ライヴの秘密

■More Sam Moore (Part 3) : Sam And Ivan Talks About Gig

【サム・ムーア・ライヴの秘密】
予測不能。
「ユー・アー・ソー・ビューティフル」の感動的なエンディング。その最後のコーラスの繰り返しの中、サムはステージを降りて観客席を通り、楽屋に戻る。万雷の拍手の中、通路の人々は我こそはとサムに握手を求める。汗だくになっているサムも満面の笑顔を湛え握手に答える。
ライヴ後、ブレンダの計らいでサムとバンドメンバーと話すことができた。サムのもとにはゴスペラーズ、村上さん、酒井さん、また、この日飛び入りしたトータス松本さんらが表敬訪問。また、ブルーノートのスタッフからひっきりなしに、観客から預かったサインを求められ、書いている。
サムのサイン(All my love to you   Sam)
サムは今回のライヴについて、「アイザック・ヘイズを始め、多くの人へのトリビュートをやろうと考えたんだ」という。確かにセットリストを見ると物故者が多い。「アイザック・ヘイズ、レイ・チャールズ、オーティス、ビリー・プレストン、ジャコ、バディー・マイルス…。素晴らしいソウル・レジェンドへのトリビュートだ」 よく考えれば、サム&デイヴのデイヴも亡くなっている。
以前、自分が好きな曲ばかりを歌ったアルバムを作ろうと思ったそうだが、それは現在は宙に浮いている。たとえばレイ・チャールズの曲をカヴァーしようという企画もあるが、レイの事務所に打診中で色よい返事が来ていないという。
「また、来年来てくれますか」と聞くと、「今回の来日も、じつは(前回からすると)まだ早すぎると思っていたんだ。でも、一本はジャズフェスで、ここ(ブルーノートは)二日だけということで、いいかな、と思った。そうだな、次は来年ではなく、2年後かな(笑)」
ブレンダとサム
そうこうしているうちに、背の高い音楽監督でベース奏者のアイヴァン・ボドリーが近くにやってきた。アイヴァンはよく見ると、唇にピアスをしていた。彼はサムのバンドにここ12年くらい、はいったりでたり、在籍している、という。はいったきっかけはこうだ。「アップタウン・ホーンズは知ってるかい? ニューヨークをベースにするホーン・セクションだ。彼らはすでに何百枚ものアルバムにクレジットされていて、それこそ、イギー・ポップ、ローリング・ストーンズ、Jガイルズ・バンド、レイ・チャールズ、ジェームス・ブラウンの『リヴィング・イン・アメリカ』のホーンもそうだ、キャメオの『ワードアップ』も、BBキング、とにかく多くのアーティストにホーン・セクションとして、レコーディング、ツアー問わず参加している。で、そのアップタウン・ホーンズが自分たちの楽しみのためにバンド演奏をすることがある。そのとき、リズム・セクションを加えて、アップタウン・バンドとなる。僕が最初にニューヨークで得た仕事のひとつが、シュレルスのバンドで、そこにクラッシャー・グリーンというドラマーがいた。その彼がアップタウンのメンバーを兼ねていて僕をアップタウンに紹介してくれた。それで、僕はこのアップタウン・バンドのベースに入ったんだ。そして、このバンドをサムが、バンドごと、サムのツアーバンドにした。それで、最初はクラッシャーが音楽監督だったんだが、彼が辞めたんで、僕がその役を引き受けるようになった」
アイヴァン・ボドリー
サム・ムーアのライヴは自然な感じで、ぽんぽんとアドリブがでてくる。よってバンドは、サムのそうしたちょっとした気まぐれについていかなくてはならない。昨日も書いたが、僕は「アイ・サンキュー」から、「ソウル・マン」の流れが最高に気に入っている。「アイ・サンキューッ!!」と観客に何度か歌わせ、それが絶好調になったところで、おもむろに「ソウル・マン」のギターリフが始まるあの瞬間だ。
「あそこはキューがあるんだ。サムは何度観客とコール&レスポンスをやるかわからない。だが、『ソウル・マン』に行くときには、そこで「1-2-3」と指でカウントし、(ギタリストに)指示を出すんだよ」 な~るほど。「サムは本当に、コール&レスポンスを大事にするシンガーだからね」 確かに、彼はよく観客とやりとりをする。そして、それがけっこうおもしろい。
「そういえば、あの『ページをめくれ』のところは、あれはいつもやるギャグなんですか」 「いや、違うんだ。(笑) (ブルーノートの)初日で突然、ステージで出たんだよ。僕は譜面台に、歌う曲順にきっちりと歌詞カードをそろえている。サムのためにね。でもね、いいかい、サムは本当は歌詞カードなんてひとつも必要ないんだよ。(笑) 全部どの曲も覚えてるんだから。でも、歌詞を置いてる、そして、1曲終わるとページをめくる。ところがそれをやり忘れたりして、どこにいるかわからなくなる。それでステージで僕に聞いてくる。そこで、僕はシンプルに『ターン・ザ・ページ(ただページをめくればいいんだ)』と言ったんだ」
ショウの流れは、サムが常にコントロールする。観客とのやりとり、歌いまわしは日によって違ったりする。「僕は過去10年以上やってきて、サムのことをよく知っている。だがそれでも、サムの次の行動を予測するのは難しい。(笑)」
そう、確かにサム・ムーアの次のアクションを予測するのは難しい。だからおもしろい。
バックシンガーのキャロウェイは今回東京ジャズと、ブルーノート2日目に「ドント・プレイ・ザット・ソング」を歌ったが、2年前にはナールズ・バークレイの「クレイジー」を歌っていた。サムとキャロウェイの年齢差は50以上だ。
また、ドラムスのトニーも3年連続参加だが、彼はあのシンガー、タイ・スティーヴンスの友人。日本に来るまでタイと一緒に、モンテカルロでギグをやっていた、という。たしかタイにトニーのことを紹介された。
スライ・ストーンとサム・ムーア、まさに今週は「伝説の週(week of the legend)」であった。
それにしても2時間弱のソウル・ショウ、たっぷりいっぱい楽しめた。I Thank You, Mr. Sam Moore!
■サム・ムーア関連記事
September 05, 2008
More Sam Moore (Part 2): This Is “The Soul Show”
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September 04, 2008
Sam Moore @ Blue Note : Stronger Than Ever
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(ここに過去記事一覧)

■ サム・ムーア 『オーヴァーナイト・センセーショナル』
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