空っ風。
その街は風がよく吹くので、ウィンディー・シティー(空っ風の街)と呼ばれます。イリノイ州シカゴのニックネーム。
シカゴにチェスレコードという、ソウル、R&Bの名門レーベルがありました。50年代からジャズ、ソウル、ブルーズ、R&Bなどのさまざまなタイプのブラックミュージックを世に送り出してきたソウルの名門宙の名門レーベルのひとつです。
そこにはさまざまなミュージシャンやプロデューサー、アレンジャーなどが出入りしていましたが、そんなアレンジャーのひとりにチャールズ・ステップニーという男がいました。彼はチェスでレコーディングされる多くの作品でアレンジを担当したり、プロデュースを担当したりしていました。
チャールズは、後にアース・ウィンド&ファイアーを結成するモーリス・ホワイトとも親しく、結局アースの作品のアレンジをするようになります。
チャールズのアレンジは、デルズの作品や、ミニー・リパートンがいたロータリー・コネクションなどでも聞かれます。ストリングスの使い方が上手で、たとえば、デルズの「ラヴ・ウィ・ハド」なんかのアレンジは背筋がぞっとするくらいスリリングです。確か、同じくデルズの「ラヴ・イズ・ブルー」あたりもそうだったと思います。そして、テリー・カリアーの作品も彼でした。
モーリスは、チャールズに全幅の信頼を置いていました。チャールズ(1931年生まれ)は76年5月17日に病気で死去します。40代半ばですよ。若すぎる。『スピリット』(76年9月発売)が彼のてがけた最後の作品になってしまいました。
僕はこの中の「サタデイ・ナイト」や、楽曲のほうの「アース・ウィンド&ファイアー」などが大好きです。アルバムのあちこちにシカゴ臭がします。なんなんでしょうねえ。これって。アースの次のアルバム『オール・ン・オール(邦題、太陽神)』は、アレンジがトム・トム・84という人に代わりますが、若干シカゴらしさは残るものの、この『スピリット』ほどではありません。
アースは、この『スピリット』までがもっともシカゴっぽいといえるのでしょう。いったい、シカゴっぽさってなんなんでしょう。ここでは、やっぱり、チャールズのアレンジなんじゃないでしょうか。
そして、その『スピリット』のトップを飾るのが、昨日ちらっとふれた「ゲットアウェイ」というわけです。トヨタのバリアーという車種のCM曲になっています。モーリスとチャールズが作る音楽がシカゴを思わせるわけです。