「ゲロッパ」
この人を食ったようなタイトルが、この秋に公開が予定されている井筒監督の新作映画の題名です。ストーリーがおもしろい。
まもなく収監されるやくざの親分(西田敏行)は、これまでにやり残したことが二つだけあった。ひとつは25年前に生き別れとなった娘(常盤貴子)と会うこと、そして、もうひとつはジェームス・ブラウンの名古屋でのライヴをみること。死ぬまでに一度でいいからブラウンのライヴを見るのが親分の夢。その夢をかなえさせようと舎弟たちが、ブラウンを誘拐して、親分の前でライヴをやらせよう、と計画する。
ところが、舎弟たち、あんまりよくジェームス・ブラウンのことを知らず、間違ってJBそっくりさんを拉致してしまう。それを知った一番弟子(岸田一徳)は激怒、その偽JBを殺そうと考えるが・・・。
いってみれば、コメディー系のどたばたものですが、ジェームス・ブラウンを誘拐するなんていう発想がいいですねえ。
で、その撮影現場をちょっと見る機会がありまして。一度見てみたかったんです、映画の撮影現場。横浜磯子の先の公園。そこに、岸部一派とJBそっくりさん。殺されると思ったJBそっくりさん、「お願いだから助けてくれ、なんでもするから」と懇願。「じゃあ、歌って、踊ってみろ」とすごまれると、ラジカセから音楽が流れる。それがジェームス・ブラウンの「マザー・ポップコーン」! この曲が始まると、JBそっくりさん、最初はびびりながらも、徐々に歌と踊りに激しさがまし、連中を納得させるのだが・・・。
そっくりさんのウィリーは、監督自身がロスで行ったオーディションに合格しこの役を射止めた。撮影の合間彼と話をしてみた。ウィリーによれば、「(オーディションには)10人くらい来てたかなあ。でも中には、ジャッキー・ウィルソンやサム・クックのそっくりのほうがあうんじゃないか、って奴もきてたよ(笑)」という。
ウィリーはノースキャロライナ出身。もともとダンサーから始めた。ニューヨークのアポロ劇場で、プロのダンサーとしての仕事をもらい、きっかけを作った。歌を始めたのは19年ほど前だという。年齢を聞いても答えてくれなかったが、40代後半から50代前半と思われる。普段は、LAでジェームス・ブラウンのそっくりさんのショウをやっている、という。
「なぜまた、ブラウンの真似を?」 「いや、最初はそんなつもりはなかった。たまたまあるとき、ジェームス・ブラウンの曲を歌ったら、よく似ている、といわれるようになって、それ以来意識するようになった。今ではブラウンのショウを真似てパフォーマンスをしているんだ」
いったいウィリーのようなJBのそっくりさんっていうのは、アメリカにどれくらいいるのだろうか。 「さあ、全米ではわからないけど、ロスでは2-3人じゃないかなあ」
「で、あなたがその中でベストというわけですね」
「いやあ、僕はそうは言わない。(笑) でも、みんなはそう言うね。今はマネージャーもいないし、事務所もない。マネージャーが欲しいと思ってるんだ」
「ミスター・ブラウンに会ったことは?」「いやあ、まだないんだよ」
「ブラウンの曲は、何曲くらい歌えるの?」 「全部だ!」との堂々たる答え。
そして、「マザー・ポップコーン」で見せた踊りは、相当ジェームス・ブラウンを研究しているとみた。まあ、それはそうですね。20年以上、そっくりさんでやってるんだもんね。この映画、ジェームス・ブラウン・ファンなら、絶対楽しめると思う。果たして偽のジェームス・ブラウンの運命やいかに? ウィリーの靴、青地に赤白の星。「リヴィング・イン・アメリカ」ばりの派手な靴だった。この靴は映るのかな。