How to write linernotes

巡りあわせ。

依然ダブル・エクスポージャーのライナーにかかりっきりです。う~む、近年まれにみる手がかかるライナーになっています。で、ふと思いました。僕が一枚のライナーを書き上げるまでを「メイキング・オブ・ライナーノーツ」として、また、書くということを。しかし、誰が読むかね。同業者しか読まなかったりして。(笑) と書いたところで、僕も他のライターさんたちがどうやってライナー書いてるのかな、なんてちょっと思ってみました。みんな、どうやって書くのだろう。

僕個人としては、このライナーノーツというものが、昔からものすごく好きですねえ。特にアメリカ、イギリスのライナーには感心するものが多い。なんと言っても、雑誌なんかと比べると制約がきわめて少ないのが最大のポイント。自分で書きたいように、かなり、フリーフォームで書ける。自分で、そのアーティストのどこにフォーカスを当てるか、何について書くかなど、構成もできるし。

で、その苦労しているダブル・エクスポージャーの場合は、いろいろ書かなければならない事柄がたくさんあるから、ちょっと大変です。どこに的を絞ればいいのか。どうエディットすればいいのか。

まず、このグループがでてきたサルソウル・レーベルのことを書かなければなりません。どのようにして誕生して、いかに発展し、そして、その後の音楽シーンにどのような影響を与えたか。これだけでも真剣に書いたら、大変な量になってしまいます。

2番目に、このダブル・エクスポージャーというグループについて書きましょう。いわゆるプロフィールですね。基本中の基本です。

76年7月にアメリカで発売されたダブル・エクスポージャーのデビュー・アルバムは日本で76年11月にフォノグラムから発売されます。そして、そのライナーを76年9月21日に僕自身が書いています。

そこでは、サルソウルレーベルのこと、サルソウル所属のアーテイストについて、そして、ダブルたちについて書き、最後に曲目紹介をしています。

76年の執筆時点ではわからなかったことも、今ではいくつかのことが判明しています。グループについては今回かなり詳しく書きました。

第3に、ダブル・エクスポージャーの「10%(テン・パーセント)」という曲は、アメリカのレコード業界初の一般発売された12インチシングルという事実があります。12インチのでてきた背景、この「10%」の12インチの当時のインパクトについても触れたいところです。当然、リミキサーであるウォルター・ギボンズのことも書かなければなりません。12インチ、リミックス、リミキサー。これだけでも大変なテーマです。

第4に、彼らのプロデューサー、フィラデルフィア出身のベイカー・ハリス・ヤングについて。それまでに一大勢力だったフィラデルフィア・サウンドそのものであるということも見逃せません。彼らがいかに台頭しきたか。

第5に、フィラデルフィア・サウンド、ディスコ・サウンド、80年代に入ってのハウス・サウンドへの影響など、一連のダンス・ミュージックの流れの中におけるダブル・エクスポージャーあるいはサルソウル・サウンドについても触れたいところです。

また、このダブル・エクスポージャーというグループは結局アルバム3枚で消えてしまうわけですが、しいて言えば、フィラデルフィアのハロルド・メルヴィン&ブルーノーツやオージェイズをお手本にしたグループということもいえます。そのあたりの関連性も余裕があれば、紹介したいわけです。

といったことを考え、リサーチを続けていくと、実にきりがないのです。そして、いろいろ調べていくと、まったく知らないことにも出会います。

そういえば、きいたことがあったな、とか、自分がおぼろげに覚えていたこともはっきりしてきます。

たとえば、ノーマン・ハリス、ロン・ベイカーはすでに不帰の人になっています。リミックスをしたウォルター・ギボンズも死亡しています。アール・ヤングはまだ健在ですが、南部の方でほぼ引退しているようです。ダブル・エクスポージャーのリード・シンガー、ジェームス・ウィリアムスは、なんと、フィラデルフィアの仲間とも言えるグループ、トランプスのリード・シンガーになっていました。そして、その新生トランプスは、ダブル・エクスポージャーの以前のヒット「10%」と「マイ・ラヴ・イズ・フリー」をレコーディングしていました。歴史が巡り、回転していたのです。

「10%」のレコードはどのような順番ででたのか。つまり、7インチ、12インチ、どっちが先か。アルバムはいつでたのか。あるいは、なぜ、2枚目以降のアルバムは、1枚目ほどヒットしなかったのか。話題は尽きません。

なにしろ27年も前のレコードです。Everything Must Changeです。そして、何よりも僕自身が、76年に書いたアーティストのライナーを2003年に再び書くという巡りあわせに驚いているわけです。僕自身どんなライナーになるのか楽しみです。そして、恐ろしいことに締切りは今日なんですが・・・。(こんな日記を書くくらいなら本編を書け、と。おっしゃる通りで)

カテゴリー: Uncategorized パーマリンク