影。
華やかなスターの裏には、彼らを支える何倍もの影の人々がいます。影の人々、裏方さん、あるいは、時に「アンサング・ヒーロー(歌わぬヒーロー)」などとも呼ばれます。
デトロイトで始まったモータウン・レコード。そこからは、たくさんのアーティストがスターに育っていきました。マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダー、ダイアナ・ロス、スモーキー・ロビンソン、マイケル・ジャクソン・・・。その数は枚挙にいとまがありません。
そうしたモータウン・レコードからでてきたヒット曲の数々を「モータウン・サウンド」と総称します。そして、モータウン・サウンドを支えた人々、つまり裏方のバック・ミュージシャンにスポットライトを当てた映画、その名も「スタンディング・イン・ザ・シャドウ・オブ・モータン」が近頃全米で公開されました。
これは、同名の本をもとにしたモータウンの裏方ミュージシャンたちを追ったドキュメンタリー映画で、メジャーではなくインディ映画として公開されています。本のほうは、日本でも『ジェームス・ジェマーソン物語』として、リットーミュージックから発売されています。
映画はまだ僕も見ていないので、なんともいえませんが、きっとモータウン・ファンだったら、とりあえず、押さえておきたい映画のはずです。
かつては、レコードで演奏しているミュージシャンはその名前をクレジットされることはほとんどありませんでした。それがクレジットされるようになったのは、ロックの世界で60年代後期から、ブラックミュージックの世界では70年代にはいってからです。
モータウンで初めてバックミュージシャンが詳しくクレジットされたアルバムをご存知ですか。マーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』なんです。ここにはほとんどあらゆる楽器を演奏したミュージシャンの名前が書かれています。
しかし、モータウンのバックをつけていたミュージシャンの名前が一般的に知られるようになったのは、80年代にはいってからです。特に60年代、数々のダイアナ・ロス&スプリームスやテンプテーションズ、フォートップスなどのバックをつけていた人たちの名前は、まったくわかりませんでした。
ベース奏者がジェームス・ジェマーソンという人物であったり、ドラムスがベニー・ベンジャミンという男であったり、ギターがロバート・ホワイトであったり、ピアノがアール・ヴァン・ダイクであったりということは、あとから知るのです。
そうした男達はモータウンの影(シャドウ)に立っていた連中でした。このタイトルは、もちろん、フォー・トップスの大ヒット曲「スタンディング・イン・ザ・シャドウズ・オブ・ラヴ」をもじったものです。影に立っていた男達にスポットを当てた映画というわけです。
まず、日本では公開されないでしょうから、ビデオでも入手して見ることができたら、また何か書きましょう。