【ピアノの壁の薄い傷】
傷。
セカンドセットが始まる前に、調律師がピアノを調律している。手前にエヴィアンの小さなボトルが2本とタオルが置かれている。
恐るべきトリオというべきか。ピアノのマッコイ・タイナーを支える二人は、ベースにチャーネット・モフェットとドラムスにジェフ・ワッツという強力な実力者。2004年5月以来のタイナーのライヴ。
アップテンポは激しく、スローバラードはやさしく。ステージに歩んでいくその歩速はかなりゆったりとしているが、ひとたび鍵盤の前に座ると、その指先の、腕の動きはマッハのごとく。
それにしても、前回も帯同したベースのモフェットの素晴らしさといったらない。ベースの音像がまったくぶれず、しっかりと、くっきりと聴こえる。しかも、その早弾きと強力なチョッパー奏法は、アコースティック・ベースにもかかわらず、エレキベースを弾いてるのを見ているかのような錯覚にさえ陥る。ここまで、アグレシヴで、オルタナティヴなベース奏者はなかなかいない。前回も度肝を抜かれたが、今回のパフォーマンスを見て、現在の僕のフェヴァリット・アコースティック・ベース奏者ナンバーワンになった。
ちょうど、タイナーの真後ろあたりで観戦することができたが、この位置で見ていると、ベースとドラムスがこちらを見るので、以前のジョー・サンプルの時と同様に、彼らと擬似的に演奏しているかのような錯覚に陥る。つまり、ただ見ているというのではなく、なんとなく一緒にやっているような気になるのだ。
タイナーのパフォーマンスは、熱く、魂が炸裂する。それは、モフェットもワッツも同じだ。三者が作り出すミュージシャンシップの正三角形は血から強く、美しい。
この日のピアノは、スタインウェイ。鍵盤の上にあるその文字をじっと見つめていると、正面の板のところにうっすらと縦に何本もの傷がついているのに気づいた。ピアニストたちの指がそこに当たるのだろう。そうかあ、あんなに当たるのか。
今日のタイナーのパフォーマンスでも、新たな傷が何本かついたにちがいない。
Setlist (2nd)(imcomplete)
show started 21:31
01. I’ll Take A Romance
02. St. Louis Blues
03.
04.
05.
06. Happy Days
07. Fly With The Wind
show ended 22:47
■メンバー
マッコイ・タイナー(ピアノ)、McCoy Tyner(p),
チャーネット・モフェット(ベース)、Charnett Moffett(b),
ジェフ・ワッツ(ドラムス)、Jeff Watts(ds)
■マッコイ・タイナー・ライヴ評
2003/07/08 (Tue)
Cuban Cigar & McCoy Tyner Trio
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200307/diary20030708.html
2004/05/28 (Fri)
Flaming Performance That I Wanted To Frame It: McCoy Tyner Live
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200405/diary20040528.html
ブルーノートウエッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20051214.html
(2005年12月15日木曜、東京ブルーノート=マッコイ・タイナー・トリオ)
ENT>MUSIC>LIVE>Tyner, McCoy Trio