【深町色に染まる新着ピアノ】
色。
この日は深町純ピアノ即興コンサートの第59回。来月12月で60回、つまり、丸5年が終了することになる。2001年1月から始まって、本人さえも驚く5年もの間続いている。
また、この59回目は今までと大きく変わったことがあった。ピアノが新しく入れ替えられたのだ。昭和45年に製造されたヤマハのピアノがついおとといこのアートカフェにやってきた。
深町さんはその時、「ためしに弾いてみますか」と言われ、「嫌だ」と答えたという。もし、そこでそのピアノがあまり良くなかったら、この日のコンサートをやりたくなるかもしれないからだ。さて、初めてこの35歳のピアノを弾いた感想は? 「ノット・バッ~ド(悪くない)」。
「1曲目であらゆる鍵盤を叩いてみて、このピアノはどんなピアノか、どんなことが得意なのか、得意でないのか、というようなことを調べてみた。やさしい、というか、あ、これ、あんまり弾かれてなかったよね、きっと。新しいピアノが来たら、まあ、ある程度のレベルのピアノですが、それは最初にいいピアニストに弾いてもらわないとだめになります。ピアノはピアニストによって、どんどん変わっていきますから。最初に下手な人に弾かれると、そのピアノはだめなピアノになってしまいます。それから、こういう店とかにあって、いろんな人が弾くようなピアノもだめになりますねえ。荒れちゃうというか。ひとりがずっと弾いていくピアノがその人のピアノになって、よいんです」
最初の文字通り1曲目を聴いていると、ちょっときんきんした感じがあって、僕はあまり好きになれなかった。それまでのピアノの音に慣れ親しんでいたせいか。一言で言えば、「違和感がある」ピアノの音色だった。だが、セカンドセット、後半になって、ふと気づくと、最初に感じられたきんきん感がなくなって、丸みを帯びてきたような気がした。ピアノの音が変わったように思えた。たった1-2時間でピアノの音って変わるのだろうか。
帰り際、深町さんに尋ねると、「変わる変わる、1時間でも変わるよ。(今日の場合は)どんどん僕の音になっていったんだろう」という。調律なんかも、途中でやることもある。今までのピアノは音がだいたい固まってきていたから、最初も最後もそれほど違いはなかったのかもしれない。だが、これはまだあんまり人に触られていないで、その固有の音がまだ定まっていなくて、それが徐々に変化していくところだったのだろう。この短時間でのピアノの音の変化は、めったに遭遇できるものでもなく、なかなかおもしろい経験だった。
ところで、この日のハイライトは第二部で登場したテルミン奏者、やの雪(やの・ゆき)さんだ。テルミンという楽器については、以前から噂は聞いていたが、本物を間近で見るのも初めてなら、その音を生で聴くのも初めてだ。
最初のシンセサイザー、つまり電子楽器だという。二つの棒があって、1本のほうに手を近づけたり遠ざけたりして、音の高低を調整、もう1本のほうに同様に手を近づけたり、遠ざけたりして、音量(音の大きさ)を微調整する。それで、5オクターヴくらい出るという。これが、手は楽器に触れないのに、音がいろいろ出てくるので、手品のようだ。
しっかり深町ピアノとあわせて、その演奏がなされた。個人的に印象に残ったのは、二人で演奏した「アメイジング・グレイス」。これはいいヴァージョンになった。深町さんによれば、この楽器はとにかく弾くのが難しい、という。彼もこの楽器が日本に来た時に練習しようと思ったが、あまりの難しさにあきらめた、と言っていた。気温、湿度や、近くに人がいるかいないかなどでも音が変化してしまう、という。要は人間が電気を通すので、その電流の変化を音にするそうだ。
テルミンの演奏はおもしろかったが、やはり、ピアノと音を合わせる時には、テルミンのピッチの調整が難しそうだ。しかし、ピアノやギターのように、押さえるところがはっきり目に見えるならともかく、空気しか見えないところで、よく音をあわせられるものだ。やはり、これもマジック(手品)か。
あまり弾かれてこなかったピアノが、いきなり、激しく弾かれて、きっとびっくりしているのだろう。そしてこれから、このピアノの音がどんどん磨かれていくにちがいない。言ってみれば、「深町純の色」に染まっていくのだ。これはこれで、ひとつ楽しみだ。
+++深町純・定例会、次回は12月24日土曜日です。場所はいつも通り恵比寿アートカフェ。
Setlist
1st set
show started 19:38
1. 2005年11月26日午後7時38分の作品(11.04)
2.2005年11月26日午後8時05分の作品(トーマス君のために「水」)(07.57)
3. 2005年11月26日午後8時26分の作品(舞踏家・石井さんと)(4.32)
4.2005年11月26日御題拝借作品1(1.10)
5. 2005年11月26日御題拝借作品2(「何かしら」)(1.09)
show ended 20.40
(approximately performing time: 25:52 of 62 minutes show)
2nd set
show started 20.59
1. 白鳥の湖(サンサース)(テルミン奏者、やの雪さんとともに)(4.24)
2. やの雪・オリジナル(やの雪さん・ソロ)(2.07)
3. ヴォカリーズ(ラフマニエフ)(やの雪さんとともに)(7.05)
4. アメージング・グレイス(やの雪さんとともに)(4.58)
5. 2005年11月26日午後9時42分の作品(9.03)
6. 2005年11月26日午後9時57分の作品(8.09)
show ended 22:08
(approximately performing time: 35:46 of 69 minutes show)
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August 29, 2005
Fukamachi Jun Live: 8th Wonder Of The World
http://blog.soulsearchin.com/archives/2005_08_29.html
July 31, 2005
Fukamachi Jun Live: Here’s A Setlist
http://blog.soulsearchin.com/archives/2005_07_31.html
2003/04/27 (Sun)
About good at piano
ピアノが上手ということは
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200304/diary20030427.html
2003/06/29 (Sun)
Genuine Improvisation Made By Jun
即興の妙
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200306/diary20030629.html
2003/07/24 (Thu)
Sound of Footsteps in Empty Valley
他のミュージシャンとのコラボ・ライヴのライヴ評
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200307/diary20030724.html
2003/11/30 (Sun)
Album Between Elbert & Errison
ゲストでやってきた円道一世
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200311/diary20031130.html
(お勧め↓)n2004/02/01 (Sun)
The Soul Of The Piano Man (Woman): Fukamachi Jun Live At Art Cafe
ピアノ3デイズを聴き終えて。ピアノマンのソウル。
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200402/diary20040201.html
2004/05/22 (Sat)
Kawaguchi Kyogo Sings “Sakura” At Fukamachi Jun’s Live
河口恭吾がゲストで参加
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200405/diary20040522.html
2004/06/27 (Sun)
Doesn’t Really Matter What The Genre Is
中国人歌手のゲスト
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200406/diary20040627.html
2004/12/25 (Sat)
Merry Christmas, Happy Holiday: No Babies Allowed To Attend Live Performance
赤ん坊禁止令
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200412/diary20041225.html
May 02, 2005
East Meets West At East: Kin Agun Plays China Yang Quin
【揚琴(ようきん)・悠久の調べ~金亜軍さん】
http://blog.soulsearchin.com/archives/000232.html
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(2005年11月27日土曜日、恵比寿アートカフェ=深町純・ライヴ、ゲスト・やの雪)
ENT>MUSIC>LIVE>Fukamachi, Jun