【スティーヴィー記者会見・全訳・パート2(全3回)】
会見。
(スティーヴィー・ワンダーが11月2日に行った記者会見の全容の第二部です)
質問4 とっても美しい女性が側にいるので、「さすが、スティーヴィー」と思ったら、アイーシャさんだったんですね。アイーシャさんとの共演はとても嬉しいことだったと思いますが、どんないきさつでデュエットで歌うことになり、また歌った結果どんな思いでいるか教えてください。(質問者・小学館・週刊ポスト)
SW (彼女と一緒に歌うことになったのは)フォース(想像を越える力=映画『スターウォーズ』でよく使われる言葉)ゆえだ! (笑) 冗談だよ。(声色で)(アイーシャは)歌う以外に他に何ができるんだ? (彼女と一緒に歌ってると)僕が若くいられるからね。(笑) アイーシャは、家で赤ちゃんの時からいつもバスタブの中で歌ったりしていたんだ。「イズント・シー・ラヴリー(可愛いアイーシャ)」で聴こえる赤ちゃんの泣き声みたいにね。その頃は彼女が将来、素晴らしいシンガーになるなんて夢にも思ってなかった。彼女が9歳か10歳くらいから、僕がよく(家で)歌っていた曲にあわせて彼女も歌うようになっていたんです。僕や、彼女の母であるヨランダは「素晴らしい声ね」、「彼女は歌手になればいいのに」とずっと思っていました。
この「ハウ・ウィル・アイ・ノウ」はおそらく10年くらい前に書いた曲です。その頃、ある女性とつきあっていて、その彼女の気持ちを「どうやったらわかることができるだろうか(how will I know)」と思って書いたのです。あれは、ニューヨークでのとある朝のことだった。火曜の朝に起きたときだったと思う。その前、素晴らしい夜をすごしてね、熱烈なメイクラヴをしたんだ。(横に座っているアイーシャが、「そうなの?」という風に微笑む) 真実を語らないとね。(笑) 彼女が僕のことを愛しているか、どうやったらわかるだろう、って思ってこの曲を書いた。そして、この曲を何度も何度も家で歌っていた。するといつのまにかアイーシャもこの曲を覚えて、よく歌うようになったんだ。で、その歌声を聴いていたら、僕よりもうまいじゃないか、と思って、それで僕のアルバムにいれようということにしたのです。
こうして娘と共演できたことはとても光栄で、幸せです。確か2年前の僕の誕生日にスタジオに入って1日かけてレコーディングしました。楽しかった。あと、「ポジティヴィティー」という曲でも彼女はとても誠実な歌声を披露しています。彼女ができるだけ早いうちにレコード契約ができるといいなと思っています。そうすれば、もうお小遣いをあげなくてすむからね(笑)
司会者 お隣にいらっしゃるアイーシャさんご自身は、「イズント・シー・ラヴリー(可愛いアイシャ)」と歌われた存在ですが、こんなに素敵な大人の女性になられてお父様と共演なさる、そのお気持ちはいかがですか?
アイーシャ 毎日ありがたく光栄なことだな、と感謝しています。私が父と共演できたということを表す言葉もないくらい、とても幸せです。父と会う機会がある人はそんなにいないのに、父は私にとって親友でもあるし、もちろん父でもあるし、一緒に父と娘としてふざけあったりとか、友達としてふざけたりとか、そしてまた音楽でも共演できるわけですから。こんな機会は、まさに生涯に一度の経験だったと思います。そして、毎日感謝しています。毎日ね。
司会者 お父さまから何かありますか?
SW (声色を変えてコメディー風に)アイーシャの父として、一言言っておこう。父親なので、娘の旦那さんになる人の事は心配なんだ。娘が付き合う相手についてもとても心配しています。(アドヴァイスとしては)『盲目の男に拳銃を持たせるなよ』(笑)。どうなるかわからないぞ! まだ娘は結婚してないので大丈夫ですよ。でも、彼氏がいるんだ。熱烈な恋愛をしているみたいだよ。で、彼には「娘をちゃんと扱えよ。泣かせるなよ」と言っています。(アイーシャは終始、微笑んでいる)
質問5 愛娘アイーシャさんとの共演もそうですが、あなたの作品には他にもポール・マッカートニー、プリンスなどが参加しています。また、アルバム以外でも、例えば先週来日していたラウル・ミドンなどとも一緒に仕事をされています。一緒に仕事をしたりコラボレートする基準、また仕事をする上において大切にしていることは何かありますか? (FM横浜・藤田琢己氏)
SW 今回の『ア・タイム・トゥ・ラヴ』のアルバムでは、実に多くの素晴らしい人たちとコラボレーションができました。例えば、インディア・アリーはアルバムのタイトル曲「ア・タイム・トゥ・ラヴ」を一緒に書いてくれました。また、アフリカのガーナ出身の素晴らしい作家で女優のアクーシア・ブシアという人も歌詞を書いてくれました。彼女は、(映画)『カラー・パープル』に出ている女優でもあります。(訳注、「ムーン・ブルー」の作詞を担当) 他にもプリンス、アン・ヴォーグ、ヒューバート・ロウズ、ポール・マッカートニー、ボニー・レイット、キム・バレル、カーク・フランクリン、そしてアイーシャと、実にいろいろな人たちがこのアルバムに参加してくれました。
どういう人たちと共演するか、その判断基準は(コラボレーションをオファーしてくる)アーティストたちが、本当にその曲に僕を必要としているか、その楽曲に僕がフィットするか、ということです。彼らが望むことを、もし僕が出来るなら、つまり、彼らが望むサウンドを僕が提供できるなら、喜んでスタジオに行きます。スタジオにひとたび入って彼らの曲に何か協力する場合、僕がハーモニカを吹くにせよ、何をするにしても「私はスティーヴィー・ワンダーだぞ。俺は俺がやりたいようにやるんだ」というような偉そうな態度では臨まない。僕は、キーボード奏者としてでも、ピアニストとしてでも、ヴォーカリストとしてでも、なんでも、一ミュージシャンとしてベストを尽くして彼らが望むことをやります。
これまでにも多くの素晴らしいミュージシャンたちと、一緒に共演してきました。例えば、ハービー・ハンコックとは2枚でコラボレーションしてますが、こういった素晴らしい人たちと共演をできて本当に光栄に思ってます。一緒に何かをやる時、僕自身の姿勢は相手がヴェテランでも新人でも変わりません。
司会者 ありがとうございます。質疑応答をこれにて終了とさせていただきます。最後にスティーヴィーご本人からメッセージを一言お願いします。
SW あと質問、3問受け付けますよ(笑)」(会場には笑いと拍手)
(スティーヴィー・ワンダー記者会見・パート3へ続く)
(2005年11月2日水曜、恵比寿ウェスティン・ホテル、スティーヴィー・ワンダー記者会見)
ENT>MUSIC>ARTIST>Wonder, Stevie