【『ストンプ』、あらゆる物を叩いて世界的ヒットへ】
ヒット。
<a href=”http://blog.soulsearchin.com/archives/gifs/2005-0816-2108.jpg”><img alt=”2005-0816-2108.jpg” src=”http://blog.soulsearchin.com/archives/gifs/2005-0816-2108-thumb.jpg” width=”200″ height=”244″ border=”0″ / align=left></a>ストーリーなし、ダイアログ(セリフ)なし、そして、もちろん、メッセージなし。なんと素晴らしいことか。舞台で行われているのは、人間がただひたすら物を叩いている行為だけ。8人のパーカッション奏者が、日常生活で我々が使うような普通の物を打楽器に変身させ、そこから、生き生きとしたリズムを生み出す。
物を叩く行為は、音楽の最も原点だ。それに近いところにタップダンスがある。一応、ミュージカルというジャンルで紹介されているが、なんと言ったらいいのか、パーカッション・パフォーマンスとでもいうべきか、そんな作品がこの『ストンプ』だ。『ストンプ』にもタップダンスの要素が多々ある。タップに様々な道具をクロスオーヴァーさせてできたのがこの『ストンプ』と言っていいかもしれない。
既に何度も来日している『ストンプ』、今年は品川プリンスホテル内にできたステラ・ボールというホールでの公演になった。僕も初めて来たが、キャパは約1000人。日本にきているのは、ロンドン・キャスト、ニューヨーク・キャストなどの混合組。
箒(ほうき)、棒、ゴミ箱、ドラム缶、巻尺、椅子など、日常生活で使う様様な物をひたすら叩く。音を出す。それも、数人であわせて叩く。ただの打楽器の音が、リズムとなり、リズムに命が吹き込まれ、そこにソウルが注入される。音階が基本的にはないので、パーカッションによるノン・コーズのサウンドだ。ドラム、パーカッション好きの僕にはたまらない。
それにしても、パフォーマーたちの生き生きとした動き、そして、斬新なアイデアが見事だ。ただ物を叩くだけで、1時間40分、息をもつかせぬ展開で見る者を圧倒した。しかも、パフォーマーと観客の間に、ちゃんとコール&レスポンスまである。大道具から小道具まで、ヴァリエーションたっぷり。
全19演目で圧巻だったのは、8人がポール(棒)を使ったパフォーマンス。まるで、これは日本の殺陣のように思えた。かなりのリハーサルをした後がうかがえる見事なパフォーマンスだ。なんと、これを見たビートたけしが映画『座頭市』で、同じようなパフォーマンスをやったという。
壁に吊るされた様々なフライパンなどを、同じく上から吊るされたパフォーマーたちが叩くシーン(下記で14番目)も、見ごたえがあった。バスケット・ボールから始まり、竹馬のようにドラム缶に乗った連中が音を出しながら歩くシーン、18番目のゴミ箱の蓋とゴミ箱を激しく叩くシーンは、和太鼓のライヴを思わせた。後でプログラムを読むと、これの原案者たちは、和太鼓のパフォーマンスを見て、影響を受けたというから、納得した。
それにしても、ただ物を叩いて音を出すだけで、興奮してくるのはなぜか。人間の動物的本能が呼び起こされるからか。『ストンプ』は、これまでの一連のドラム系パーフォマンス(映画『ドラムライン』、ミュージカル『ノイズ&ファンク』、シーラEライヴ、和太鼓タオのライヴ、オマー・エドワーズのタップ)の中でしっかりとした位置に記憶された。これらのパフォーマンスは、それぞれは点だが、すべて線でつながる。もちろん、その線の先にはソウル・ミュージックが、そしてリズム&ブルースが見えてくる。
最後ひとつだけリクエストが。一番最後アンコールのパフォーマンスが終った後、ロック曲がエンディングテーマとして流れるが、ここはこのロック曲でなく、ブラザース・ジョンソンの「ストンプ」をかけてもらいたい。どんぴしゃだと確信する。『ストンプ』はあらゆる物を叩いて(ヒットして)、世界的なヒットになった。
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■これまでのドラム系パフォーマンス、関連の日記
2004/04/21 (Wed)
The Tugaru Live: Can Shamisen Make Groove?
津軽三味線はグルーヴを作れるか
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200404/diary20040421.html
2004/05/02 (Sun)
Movie “Drumline”: Another Field Of Dreams
映画『ドラムライン』~もうひとつの『フィールド・オブ・ドリームス』
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200405/diary20040502-1.html
2004/03/22
Bring In ‘Da Noise, Bring In ‘Da Funk: Soul explosion!
『ノイズ&ファンク』ライヴ評
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200303/diary20030322.html
2004/04/10 (Sat)
Sheila E Live @ Duo: Heartbeat From Ancient Times
シーラEライヴ評~太古からの鼓動
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200404/diary20040410.html
2004/04/11 (Sun)
Sheila E Live: “River God” Makes Her Tears
シーラEライヴ評
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200404/diary20040411.html
2004/08/21 (Sat)
Samurai Soul Is Here To Stay: Tao Live At Kokusai Forum
和太鼓集団タオ・ライヴ評~サムライ・ソウルここにあり
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200408/diary20040821.html
July 29, 2005
Harlem Nights: Omar Edwards, Barefoot Tap Dancer
ハーレム・ナイツ~裸足のタップダンサー、オマー・エドワーズ
http://blog.soulsearchin.com/archives/2005_07_29.html
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■Setlist According To My Observation
(Incomplete=There’s no official setlist released. Following titles are my original idea to individual performance. 公式にはセットリストはありません。下記に示したタイトルは、パフォーマーたちによってタイトルがつけられているもの、また、筆者がそのパフォーマンスを見て感じて勝手につけたタイトルです。ショウをご覧になった方は、このタイトルで、なんとなくその時のパフォーマンスを思い出されることでしょう。私の観察によるセットリストということでご了承ください)
show started 19:07
1. Brooms (ほうき)
2. Matchboxes (マッチ箱)
3. Hands & Feet (ボディー・ヒット)
4. Brooms & Dustpan & Bins (ほうき、塵取り、ゴミ箱)
5. Water Pipes (水道管)
6. Bucket, Sink & Water (バケツ、シンクと水)
7. Sucker (吸盤)
8. Large Brooms (大きなモップ)
9. 8 Poles & Swordplay (8本の棒と殺陣)
10. A Tape Measure, Knife, & Saw (巻尺、ナイフ、のこぎり)
11. Large Water Bottle (大きなミネラルウォーターのボトル)
12. Zippos (Cigarette Lighters) (ライター)
13. 5 Chairs (5脚の椅子)
14. Suspension (Off The Wall) (壁に吊るされたたくさんのパン)
15. Newspaper (新聞紙)
16. Basketball (バスケットボール)
17. Tea Box & Walkers With A Drum (紅茶の箱とドラム缶の竹馬)
18. In The Black Vinyl Bag (黒いヴィニール袋の中から)
19. Lids & Bins (ゴミ箱の蓋とゴミ箱)
Enc. Stomp & Everything (すべてをストンプ)
show ended 20:49
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■ミュージカル『ストンプ』
2005年8月2日から8月21日まで。品川プリンスホテル・ステラボール
www.stomp-japan.com
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(2005年8月16日、品川プリンスホテル・ステラボール=ストンプ・ジャパン・ツアー2005)
ENT>MUSICAL>Stomp