【ムーンウォークと芸名】
芸名。
新人を売るための、アイデアを二つ授けましょう。
クライアントは、カナダ出身のカナダ人ギタリスト、カイル・リアブコという新人。彼がデビュー・アルバムの宣伝のために来日、7日(木)、都内のカナダ大使館でショーケース・ライヴを行った。リアブコ? 覚えにくいなあ。(笑) カイルはよろしい。
パーカッション1人とカイルの2人だけのステージ。カイルがギターを弾き歌う。僕は初めてライヴを見たが、なかなかルーツに黒い音楽あることを感じさせた。例えば、ブルースをやろうと言ってブルースをやったり、ジミ・ヘンドリックスの「フォクシー・レディー」をカヴァーしたり。何より、そのリズム感の良さ、ステージ上で上下に勢いよく跳ねる様は元気一杯でこちらも高揚してくる。しかも、これがまだ弾ける17歳。若きことはそれだけで素晴らしい。
パーカッションとギター、歌だけで、かなりのグルーヴ感がでる。彼が足で床を叩くので、ちょっとタップダンス的にリズム感がでていた。とても二人だけでやっているとは思えないほど迫力がある音だ。
当初イケメンのジャズアーティストのショーケースということで、ハリー・コニック的な雰囲気ものを予想していたら、まったく違っていて、ある意味予想を裏切られておもしろかった。
一番驚いたのは、ギターを弾きながら、~It’s close to midnight and something evil’s lurking in the dark~と歌いだした瞬間。おや、どこかで聞いたことがあるメロディーと詞。そう、マイケル・ジャクソンの「スリラー」ではないか。ほ~~、この曲をこうやる。そのアイデアだけで脱帽だ。これほど、マイケルのイメージが強い曲を、いとも簡単に自分風にしてしまうというのはなかなかのものだ。これで、ステージでムーンウォークでもやられたら、観客は腰を抜かすだろう。ギター弾きながらムーンウォークやったら、世界初のオリジナルだと思うが・・・。(笑) これが、ナイスなアイデアのその1、お勧めです。
カイルが生まれたのは1987年9月29日。現在17歳で、先月ハイスクールを卒業したばかり。夏休みではなくツアーが始まる。「スリラー」は、82年暮れの作品でシングルとしては83年暮れからのヒットだから、もちろん、カイルの生まれる前の作品ということになる。10歳からギターを始めたということだが、それでもまだ弾き始めてたかだか7年だ。7年でここまで来るかあ・・・。若者が才能を伸ばすというのは、こういうことなのだろう。若きことはそれだけで素晴らしい。
途中のリズムの取り方に、JBズ風のところも感じられて、ブルース、ジミヘン、JB、そして、マイケルとかなりブラック・ミュージックが好きなんだろうな、と思った。もちろん、他にも何でも聴いているのだろうが。
ライヴが終って少しだけ話す機会があった。「ブルースが好きなの?」 「イエー、大好きだ。自分がよく行っていたカナダのライヴハウスで、たくさんのブルース音楽を聴いて育ったんだ。マディー・ウォーターズ、ロバート・ジョンソン、あらゆるブルース・アーティストを聴いた」 「ジェームス・ブラウンは好き?」 「もちろん、彼は素晴らしい。この前の夏だったか、彼の前座をやった。すごいよね、彼」 他にはと尋ねると、「スライ・ストーン、パーラメント/ファンカデリック・・・」ときた。スライの曲などをライヴでやるのだろうか。「やるよ、『イフ・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ステイ』とかね」 「お~、イエー。R&Bの曲ばかりのカヴァーアルバムを作る気は?」 「将来ね、いつか」 この日はパーカッションと二人だけだったが、通常は4-5人編成のバンドでツアーするという。
とてもファンキーなイケメン君が踊りながらグルーヴ感を出して弾いているその様を見て、同じくかなりのテクニックを見せるチャーリー・ハンターとはまた違った生々しいストリート感を感じた。
ステージでロック・アーティストのように跳ねるところを見て、とてもバブリーだと思った。つまり、彼はシャンペーンのアワのように跳ねている。よって、彼にニックネームを授けよう。カイル・シャンペーン・リアブコだ。そしてリアブコは、ちょっとメジャー感がないので、もう思い切ってカットして、カイル・シャンペーンっていうのはいかが? これは、スターの名前だ! (笑) ナイスなアイデアその2、お勧めです。会って話してた時には、そこまでのアイデアを思いつかなかったんだよなあ。今度会ったら、絶対に言おう。
「スリラー」弾きながらムーンウォークをし、名前をカイル・シャンペーンに変えれば、ルックス抜群、音楽性もしっかりしているし、女性ファンがすぐにつくことマチガイな~い。これでミリオンヒットになったら、年間コンサルタントにしてね。(笑)
デビュー・アルバムは『ビフォー・アイ・スピーク』(ソニー)。
ENT>ARTIST>Riabko, Kyle